はじめの1巻:「わたしの宇宙」 メタフィクションの中の中学生の物語 新人作家の意欲作

野田彩子さんのマンガ「わたしの宇宙」(小学館)の表紙
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野田彩子さんのマンガ「わたしの宇宙」(小学館)の表紙

 1巻が発売されたコミックスの中から、編集部と書店員のお薦めマンガを紹介する「はじめの1巻」。今回は月刊IKKI(小学館)で連載、登場人物の中学生たちが“マンガの中にいることに気づく”というメタフィクションの手法で描いた野田彩子さんの意欲作「わたしの宇宙」です。

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 中学2年の新学期、津乃峰アリスは星野宇宙(うちゅう)、真理(しんり)という双子の男子と親しくなる。あまり話さない宇宙に代わって、よくしゃべる真理が宇宙のことをいろいろと教えてくれるが、アリスは、真理が宇宙になにかを口止めされているような雰囲気を感じていた。ある日、クラスメートの祖谷が興奮した様子で“誰か”に「何を見ている!?」と叫んで教室を飛び出し、屋上から飛び降りた。そして宇宙もそれを追って屋上から飛び降りてしまう……。

 ◇編集部からのメッセージ 小学館 IKKI編集部 豊田 夢太郎さん 「新人離れした意欲作」

 月刊IKKI新人賞「イキマン」出身の新鋭・野田彩子氏。「わたしの宇宙」は、野田氏の初連載作品です。

 自分たちの生活している世界が「マンガの中」だと気付いてしまった双子の男子中学生・宇宙と真理。ヒロイン・津乃峰アリスは、その事実を彼らから知らされ激しく困惑するも……? 「わたしの宇宙」は、いわゆる「メタフィクション」ですが、作品の魅力はなんといっても個性的なキャラクターたちにあります。

 そもそも野田氏は、これとはまったく違うネタで連載することが決まっていました。しかし、ある日突然「これを描きたいです!」というキッパリとした言葉とともにもたらされたのが本作のアイデア。驚きつつ、それでも企画を方向転換することにしたのは、メタフィクション的アイデアよりも、ネーム上で動いているキャラクターたちの生き生きとした様子、その個々の魅力によってでした。

 対照的な双子の宇宙と真理、どこまでも生真面目で真っすぐなアリス、何もかもおかまいなしに恋心を貫き通す同級生の千代子……。彼らがただ生活している描写を読むだけでも「次に何が起こるのか」というドキドキとワクワクがあふれています。

 そんな彼らに、予測不能の事態が次々襲いかかります。はたして、この「予想外の物語」を動かしているのは登場人物たち自身なのか。それとも……? 

 この新人離れした意欲作、ぜひ読んでみてください!

 ◇書店員の推薦文 恵文社バンビオ店 宮川元良さん 「キャラクターがストーリーをコントロール」

 この世界はマンガで、主役はマンガの主人公ってことを理解しているって、よくある設定です。が、メタフィクションを前面に押し出した作品で、読者は傍観者であって、ストーリーをコントロールする存在(著者)ではないマンガというのはあるようでなかったような気がします。このマンガの登場人物は読者を意識しますが、それは読者としてであってコントロールはマンガの登場人物が行っているというのが新しい。読んでいると登場人物がこちらを意識していて若干読んでいて居心地の悪いような不思議な気持ちに(笑い)。この先、主人公は変わっちゃうかもしれないしタイトルも変わっちゃうかもしれないという、未体験の方にはぜひ読んでいただきたい今後が楽しみな1冊です。

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