潘ちゃん×潘さん交換日記:特別編 永井一郎さんを思う 潘めぐみ

故・永井一郎さんが声を担当したネテロ
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故・永井一郎さんが声を担当したネテロ

 「HUNTER×HUNTER」のゴン役などで人気上昇中の声優・潘めぐみさんと、「機動戦士ガンダム」のララァ役などの声優としても知られる母親の潘恵子さんが、さまざまな思いや出来事を交換日記形式でつづります。今回は、“特別編”として、めぐみさんが、「HUNTER×HUNTER」で共演し、先日亡くなった永井一郎さんとの思い出を振り返ります。

ウナギノボリ

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 みなさん、おはようございます!こんにちは、こんばんは、はじめまして! 潘めぐみです!

 先日、第116話「フクシュウ×ト×シュウフク」が、放送されました。ゴンとキルアが、カイトのあだであるピトーと再会し、ゴンが……。このキメラアント編の要の一つともいえる物語であり、ゴンにとっても、私にとっても、とても大切な話。

 こんなにも怒りをあらわにして、こんなにも泣きじゃくって、こんなにも、こんなにも……感情のコントロールも利かない、非常に不安定な精神状態。身近にあったカイトの死が、こんなにも彼を変えてしまった。それでも、その感情は、精神は、言葉に表せないけれど、決してわからぬものではなかったし、現実から離れてはいなかった。ゴンなのか、自分なのか、セリフなのか、本心なのか、それすらも危うく。けれど、手元には台本を持っていて、ページをめくっていって……。狂気と正気、本能と理性の共存。初めての感覚でした。

 でも、このとき、私は考えていませんでした。声量の強弱、マイクとの距離、合わせるべきセリフの間尺。収録後、しばらくして我に返ったとき、ミキサーさんにこっそり「ごめんなさい」と謝りにいったのですが「記憶に残る仕事だった」という言葉をかけてくれました。あの瞬間に生まれた目標。見てくださる方はもちろん、共演者の方や作り手の皆さんにとっても「記憶に残る仕事をしたい」と。

 この第116話は、もう二度と再現できません。それは、どんな回にも言えることで、そのときのものは、そのときにしかできない、かけがえのないもの。収録であっても、“なまもの”なのであると、そう教えてくださった方がいらっしゃいます。

 「HUNTER×HUNTER」で、ネテロ会長として共に戦ってくださった永井一郎さんです。永井さんと初めてお会いしたのは「機動戦士ガンダムUC」の現場でした。その収録後に皆さんと食事に行った際に、そのお話をしてくださったのです。

 「HUNTER×HUNTER」でご一緒させていただいたときも、いろんなお話をしてくださいました。ネテロ会長が初めて登場したとき、永井さんをお迎えして、監督をはじめ、皆さんと食事に行ったときのこと。

 「あなたは、あなた。たとえ何があっても、続けていくように」と、“熱く”握手を交わし、“厚く”約束を交わしたこと、今でも鮮明に覚えています。

 そして、現場でのチャーミングな一面も。あれは確かハンター試験の最中、飛行船でボールを取り合ったシーンの収録時。スタジオの中で、「ネテロさん」と役名で呼ばれたときに「ネテロ? あ、私のことか。ネテロは、寝てろ……、なんちゃって」とおっしゃった瞬間に、現場に笑みがこぼれたこともありました。

 またネテロさんとボール取りしたいな。最後にボール取りをしたのは、この間の劇場版(The LAST MISSION)だっけ。今もまだ映画館で上映しているところがあるんじゃないかな。そうだ、もう一度ネテロさんに、永井さんに会いに行こう。そして私は約束を果たそう。ずっと、ずっと、続けていくように。その先で、いつかまた会えますように。

 永井一郎さんのご冥福をお祈りいたします。

 ◇プロフィル

 潘めぐみ(はん・めぐみ)=1989年、東京都生まれ。2008年に映画「櫻の園」の一般公募オーディションに合格し女優デビュー。ドラマ「オトメン−乙男−」のほか舞台などにも出演。11年に、100人を超えるオーディションをへて、アニメ「HUNTER×HUNTER」の主人公・ゴン役に抜てきされた。アニメ「ハピネスチャージプリキュア!」の白雪ひめ役、ゲーム「The Last of Us」のエリー役などを好演し注目を集めている。

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