メリル・ストリープさんとジュリア・ロバーツさんという初共演の2人が母娘を演じ、大激突した映画「8月の家族たち」が公開中だ、今年の米アカデミー賞で、それぞれ主演女優賞と助演女優賞にノミネートされた。ピュリツァー賞とトニー賞をダブル受賞したトレイシー・レッツさんが自身の戯曲を脚本化、「カンパニー・メン」(2011年)のジョン・ウェルズ監督が映画化した。崩れゆく米国の家族を、ハリウッドスターたちが圧倒的な芝居で見せていく。
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8月、米オクラホマ州の片田舎で一家の主ベバリー(サム・シェパードさん)はネーティブアメリカンを使用人として雇うことにする。ふらつきながら登場し、悪態をつく妻バイオレット(ストリープさん)のことを「よろしく頼む」と言い残したまま、ベバリーは行方不明になってしまう。米コロラド州に住むバーバラ(ロバーツさん)の元に、次女のアイビー(ジュリアン・ニコルソンさん)から連絡が入る。別居中の夫ビル(ユアン・マクレガーさん)と反抗期の娘ジーン(アビゲイル・ブレスリンさん)とともに実家に急いで駆け付けた。翌日、三女カレン(ジュリエット・ルイスさん)は謎の婚約者を連れてやって来た。バイオレットの妹一家もやって来て、久しぶりに一同が実家に集まった。母バイオレットの毒舌が家族を攻撃し、言い合いになる中、それぞれの秘密がばれ始め……という展開。
家族の甘い幻想など、ここにはない。行方不明になってしまうアルコール依存症の父ベバリー。機関銃のように悪態をつき周囲を攻撃する母バイオレット。家族がバラバラになりかけている長女、秘密を抱えながら地元に住み続ける次女、地に足がついていない三女、そしてバイオレットの妹一家。言い合いの中で、少しずつ見えてくるそれぞれの姿は、人間の弱さを浮き彫りにする。時おりロングショットで映し出される風景には、地方の退屈さが充満し、家の中の喧騒(けんそう)とのコントラストを表している。バイオレットの口から自分の子ども時代の悲しい思い出が少しだけ語られるシーンで、母の弱さを見せるストリープさん。「こんな母、いるいる」と思う人も少なからずいるのでは? ストリープさんとロバーツさんの演技のすさまじいぶつかり合いももちろん見どころだが、個人的には次女アイビー役のニコルソンさんとロバーツさんが対話するシーンに、姉妹の過去まで見えるようで静かな迫力を感じた。4月18日からTOHOシネマズシャンテ(東京都千代田区)ほか全国で公開中。(キョーコ/フリーライター)
<プロフィル>
キョーコ=出版社・新聞社勤務後、闘病をきっかけに、単館映画館通いの20代を思い出して、映画を見まくろうと決心。映画紹介や人物インタビューを中心にライターとして活動中。趣味は散歩と街猫をなでること。
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