はじめの1巻:「幻想ギネコクラシー」 「無限の住人」の沙村広明が描く奇想天外な短編集

沙村広明さんのマンガ「幻想ギネコクラシー」(白泉社)の表紙
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沙村広明さんのマンガ「幻想ギネコクラシー」(白泉社)の表紙

 1巻が発売されたコミックスの中から、編集部と書店員のお薦めマンガを紹介する「はじめの1巻」。今回はマンガ誌「楽園」(白泉社)で連載、奇想天外なショートコメディーをまとめた沙村広明さんの「幻想ギネコクラシー」です。

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 フルーツの浮くプールで泳ぐ女性の物語「鳳梨娘(フォンリーニャン)」、地球で遭難した宇宙人カップルを描く「筒井筒」、津軽弁で描かれた「殺し屋(ヒットマン)リジィの追憶」など、奇想天外なショートコメディー12編。

 ◇編集部からのメッセージ 白泉社「楽園」編集部 飯田孝

 毎回、ネームを拝見して思うのは「何をどうすればこんな発想が」。

 収録作品12本のうち、最初と最後の2本(「鳳梨娘」「イヴァン・ゴーリエ」)以外が表題シリーズです。全て1本6ページ。オリジナルをメインにパロディーはSFから古典まで幅広く。もう訳が分からない。女性に対する愛ゆえの容赦ないオチ。どれほど高名な作家であろうと描いていただく以上は、その人自身にとって意義のあるものに「それがこれかよ!」。ええ。帯のリードも「本当に救いようのないお話ばかりなんですよ」と伝えたくて。

 掲載誌である「楽園」自体、既存の何かが基になって派生したものではありません。ただ自分が「今、一番読みたい作家」を集めて作りました。ですから描いていただくなら、せっかくだからこれまでにないものを−−と。年3回刊という「楽園」本誌の刊行形態を前提に沙村さんの年間スケジュールから逆算しての毎回6ページ。「おひっこし」「シスタージェネレーター」「ハルシオン・ランチ」がとりわけ好きな私にとって彼からの「6ページだと毎回、どうしようもないギャグになりますけどいいんですか」という所信表明はむしろ願ったりかなったりでした。

 彼の代表作と言えば「無限の住人」。時代劇として不滅の金字塔です。ですがもしそれしか知らない方がいれば、どうかご一読を。6ページという短くしかし無限の表現世界に描き出される住人達の刹那(せつな)の物語を皆様何卒ご一緒に。

 ◇書店員の推薦文 恵文社バンビオ店 宮川元良さん

 「時事ネタ禁止」「メタ表現禁止」「パロディーは古典のみ」のルールの中で描かれた短編集。収録された短編は、冒頭からは考えられないエログロなラストに向かって振り切ったまま突っ走るコメディー、と後味の悪い重たーいラストを迎える短編などで構成。

 少ないページ数でお話をまとめる構成力、卓越した素晴らしい画力、そして身もふたもないくだらないお話(ゲス成分多め)、どの話も沙村氏の天才的センスが爆発です! 個人的には美しい叔母の話とか本当にひどくてエロくて素晴らしい(笑い)。マンガはもちろん、あとがきまで、エロもグロも興奮も恐怖も自在に描く、沙村広明氏の天才っぷりをしっかりと楽しめます!

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