ダンダダン
第8話「なんかモヤモヤするじゃんよ」
11月21日(木)放送分
藤子・F・不二雄さん原作の人気マンガ「ドラえもん」を初めて3DCG化した劇場版アニメ「STAND BY ME ドラえもん」が公開中だ。今作は「のび太の結婚前夜」や「さようなら、ドラえもん」といった原作の名エピソードを基に、ドラえもんとのび太の出会いから別れまでを一つの物語として描いている。「friends もののけ島のナキ」(2011年)を手がけた山崎貴さんと八木竜一さんのコンビがダブルで監督を務め、俳優の妻夫木聡さんが大人になったのび太の声を担当している。小さな頃から「ドラえもん」をはじめ藤子さんの作品の大ファンだという八木監督に、3DCG化する上でのこだわりや「ドラえもん」の魅力などを聞いた。
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山崎監督から今作を製作するという話を聞いたのは、「friends もののけ島のナキ」の仕上げ作業をしている頃だったという。山崎監督から「ドラえもんに興味ある?」と聞かれた八木監督は「大好きだし藤子・F・先生も好き」と返答。すると山崎監督から「作ってみない?」と誘われ、「『えー!? CG(コンピューターグラフィックス)でドラえもんを!』と、もうびっくりですよね」と大好きな「ドラえもん」に関われる喜びよりも驚きが大きかったことを打ち明ける。
「ドラえもん」を3DCG作品することについて、「ドラえもん(を3DCG化するの)が難しいだろうな」と感じたそうだが、「ひみつ道具が(CGで描くことで)リアルになったら絶対楽しいぞというビジョンみたいなものはありました」と期待に胸をふくらませたという。さらに「(机の)引き出しから(3Dでドラえもんが)出てくると考えただけで楽しいと思いました」と笑顔を見せ、「みんながきっと想像していたけれど、今までは線画とか情報量の少ないもので見ていたものを具体的に見せることで、すごく楽しいものになるんじゃないかというのは想像できました」と振り返る。
八木監督は「道のりは遠かったのですが、過ぎ去ってみると早いんですけどね」と感慨深げに話す。「ドラえもん」の世界観を3DCGで表現するためにかなりの時間を費やし、とりわけ主役の2人であるドラえもんとのび太の作業が難航したという。ドラえもんは等身大の人形など立体化されたものがいくつかあったが、「立体化されたグッズは静止しているから手や足などの長さが自由自在(笑い)。うまいこと立体化されている」とグッズならではの利点を挙げ、「それを僕らは動きの中で補完してあげないといけない」と説明する。続けて、「こんなに顔が大きくてこんなに手と足が短いのに、座るとあぐらをかける。正座までは難しいので、さすがに今回はやっていませんが、あぐらはかけるように作っていて、あぐらの時はみょーんと足が伸びるんです」とユーモアを交えながらも完成作に自信を見せる。
一方、のび太には「最も原作からリアルになったと思う」といい、「今回の大事なポイントとしてお客さんに感情移入してもらわなくてはいけないし、大人が見ても納得できるドラマを語らないといけない」と今作の命題を強調する。そのために「メガネと目を分離しないとリアルな芝居ができない」とし、さらに「(目を閉じる時に)黒目がギュッとしているのはマンガ的表現なんですけど、ドラえもんはロボットだから黒目が閉じていいとして、普通の人間はまぶたが閉じるというリアルな表現にしました」と説明する。そして、「大人のお客さんにも見ていただくという(世代を)全方位にする場合、その方がいいだろうなという判断です」と根拠を述べた。さらにキャラクターの「口の端のでっぱり」にこだわったといい、「これがないと藤子・F・先生(のキャラクター)じゃない。僕らは“ぽこ”と呼んでいたのですが、立体化とはいえないと先生の絵にはならない」と断言した。
各エピソードをつなげていく上で、「もともと山崎君がシナリオを書く段階でアレンジをしたところがいろいろある」といい、「“成し遂げプログラム”とか、(ドラえもんが)来る日も正月ではなくて夏の夜になっていたりして、さらに絵的なアイデアなども加えて完成した」と明かす。「バラバラな話だけれど、ドラえもんものび太もだんだんと気持ちが変わっていく。例えばドラえもんが道具に頼らないと自分で恥ずかしそうに言うのはこれまであまりなかったと思う。さらにドラえもんとのび太が互いに大事な存在になっていく過程などを気を付けて作るようにしました」と語り、「(原作でも)映画の中でも(ドラえもんはのび太を)最初の方は特に甘やかしています。『僕はすごいロボットなんだよ』というプレゼン期間ですね」と持論を展開する。
キャラクターやひみつ道具などすべてのデザインを手がけたのは花房真さんだ。八木監督は「『どこでもドア』があったら楽ですよね(笑い)。でも『タイムマシン』も捨てがたい」といい、「今回のタイムマシンは花房がすごくこだわり、元のデザインにプラスして“進化”した形になっている」と分析。さらに「ちゃんと藤子・F・先生のDNAが残っている感じなのに、プラス花房DNAが混じってという感じのものが出来上がっていて僕もすごく満足。花房じゃないとできなかったと思っています」と絶賛する。
八木監督が愛してやまない「ドラえもん」の魅力とは? 「やっぱり道具がどんどん出てくるところ」と回答し、「僕らも作る時に具体的に道具をどう表現、翻訳しようかということで、いろいろ話し合ったりしたのですが、例えば『透明マント』を『マンガではこうなっているから目は白くて口の中は見えていてもいいのでは』みたいなものを出し合って具体的に決めていく過程はすごく楽しかった」と振り返る。続けて、「お客さんにそれを実感してもらえるような気がしています」と期待を寄せ、「映画ではひみつ道具を体感してもらえばと思っています」とアピールする。
2Dと3Dを交互に見る機会があったという八木監督は、「3Dが本当に面白い」と推奨。「ひみつ道具に本当に触れられそうだぞということと、道具の先に友情というものが描かれている。キャラクターの感情がきちんと描かれているように作ったと思っていますので、そこを堪能してほしいです」と力を込める。ちなみに、もしドラえもんが現実に近くにいたら? 「難しいですね……僕ものび太のような人間なので、頼り過ぎちゃうかも」と笑い、「あんまり全部頼っちゃうと……。なので、道具一つだけでいいですとか言ってしまいそう」とちゃめっ気たっぷりに語った。映画はTOHOシネマズ日本橋(東京都中央区)ほか全国で公開中。
<プロフィル>
1964年12月19日生まれ、東京都出身。87年に白組に入社。CMのデジタルマット画やゲーム映像のCGディレクションを担当。代表作に「クロックタワー3」「バイオハザード0」、2006年から「うっかりペネロペ」や「もやしもん」(フジテレビ系)の菌の演出も担当した。映画監督デビュー作は日本初の長編3DCGアニメ「friends もののけ島のナキ」(11年)。
(インタビュー・文・撮影:遠藤政樹)
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