宮崎吾朗監督:アニメ新手法に活路 武者修行で見えた脱宮崎駿の方向性

テレビアニメ「山賊の娘ローニャ」を手がける宮崎吾朗監督
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テレビアニメ「山賊の娘ローニャ」を手がける宮崎吾朗監督

 劇場版アニメ「ゲド戦記」「コクリコ坂から」で知られるスタジオジブリの宮崎吾朗監督が初めて手がけたテレビアニメ「山賊の娘ローニャ」(NHK・BSプレミアム)が、10月11日にスタートする。屋台骨を支えてきた父・駿さんが長編アニメ製作から引退し、宮崎監督が初めてスタジオジブリを離れて制作したことや、3DCGアニメに初挑戦したことが話題になっている。「いい武者修行になっている。勉強することも多い」と語る宮崎監督に新作について聞いた。

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 ◇従来のジブリと違う方法論

 アニメは、「長くつ下のピッピ」シリーズなどで知られるスウェーデンのアストリッド・リンドグレーンの同名の児童文学が原作。森の巨大な古城に暮らす山賊・マッティスの一人娘・ローニャが、不可思議な生物が生息する森で生きるすべを学んでいく……というストーリー。少女ローニャの成長と家族の物語が描かれる。3DCG制作会社のポリゴン・ピクチュアズが制作し、スタジオジブリも制作に協力している。NHK・BSプレミアムで10月11日から毎週土曜午後7時に放送。

 宮崎監督は、スタジオジブリについて「ジブリは宮崎駿のスタジオで、そのセオリーや考え方がベースにある。僕が追い求めているものと食い違うこともあるけど、突破できない」と語り、スタジオジブリを離れて“武者修行中”の現在の環境について「今は(ほかのスタッフと)一緒にやっている感覚が強い。そのやり方が性に合っている。(スタジオジブリと)違う方法論で何ができるかを考えるいい機会になっている」と話す。

 ◇3作目で分かったこと

 スタジオジブリを離れたことが、アニメ制作について改めて考える機会になったようで「アニメ制作がやっと何だか分かってきた。1作目は何だか分からなかったが、3作目でアニメーションはこういうことなのか……と分かってきた。画面で見る人に訴えかけなければいけない。そこで何をやればいいのか、何となく分かった」と明かす。

 一方、スタジオジブリを離れても「父が宮崎駿なので、この年になっても息子であることを意識し続けている」と父への思いは強い様子。父・駿さんの後継者について、スタジオジブリの鈴木敏夫プロデューサーがアニメ「新世紀エヴァンゲリオン」の庵野秀明監督の名前を挙げたことも話題になっているが、「自分のことを作家とは思っていない。作家性を持った作品を作るのなら庵野さん。僕は“ポスト宮崎駿”にはなりえない」と話す。

 ◇新手法セルルックの可能性

 日本のテレビアニメでは「蒼き鋼のアルペジオ」や「団地ともお」といったキャラクターなどほとんどの作画を3DCGで制作する作品が増えてきており、セル画(2D)のような表現をするセルルックという手法が採られている。宮崎監督は、3DCGで制作するにあたり「技術的な壁があり、セルルックでどこまでできる?」という疑問があったといい、制作を進める中で「手描きはなかなか動かなく、その困難に打ち勝とうとすると、宮崎駿のような一人のスーパーマンが頑張るしかない。3DCGは動き続けるイメージで、止まるのが苦手。CGは動かしてこそ命が吹き込まれる。ただ、工程数が多く、時間がかかるんです」と苦労しているようだ。

 また、劇場版とは違い、毎週放送されるシリーズもののテレビアニメを手がけるのも初めてということもあり、「テレビアニメのセオリーをちゃんと分かっているわけではない。開き直って、分かってないままやっている。スケジュールは瀬戸際です」と現場は手探りだ。

 「山賊の娘ローニャ」に込めた思いを「極力、原作に忠実に作る。はしょったり、余計なものを入れない。家族そろって『楽しかった』と笑えるものを目指している」と話す宮崎監督。武者修行の中で、さまざまなものを吸収しているようだ。

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