高度1万2000メートル上空を飛行中の旅客機内で起こる脅迫事件をテーマにしたリーアム・ニーソンさん主演の映画「フライト・ゲーム」(ジャウマ・コレットセラ監督)が6日、公開された。映画の中で、たまたまニーソンさん演じる主人公の航空保安官の隣の席に座り、犯人捜しに協力する女性ジェン・サマーズを演じたジュリアン・ムーアさん。ニーソンさんの指名で今作に出演が決まったというが、ニーソンさんのアクション演技に「完璧に演じ切っていて、思わず感心しちゃった」と絶賛する。撮影のエピソードなどをムーアさんに聞いた。
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−−今回の役は、ニーソンさんから直々に声がかかったとのことですが、こういった形でのオファーはよくあるのでしょうか。
「クロエ」(2009年)で共演したこともあったんだと思うけど、リーアムが「ぜひジュリアンとやりたい」と言ってくれて、昔から知っている(プロデューサーの)ジョエル(・シルバーさん)から連絡があって、一緒にやりたいといってくれて、うれしかった。私も昔一緒に仕事をした方とまた一緒に仕事がしたいということはあるし、役者が他の役者を薦めたり、「現場で一緒に共演したいから」と言ってくれる。それ以上の褒め言葉はないし、とてもうれしかったわ。
−−主演のリーアム・ニーソンさんとは映画「クロエ」以来の共演だそうですが、久しぶりの共演でニーソンさんの印象は変わりましたか。
印象が変わったというか、今回、リーアムがアクション映画で演技をしているのを初めて見たので、演技や肉体的なアクションに感服した。アクションヒーローは誰もが演じられる簡単な役ではない。今回それを完璧に演じきっているリーアムに思わず、感心しちゃったわ。
−−初めから犯人の正体を分かった上で演じていたんでしょうか。知らなかった場合、どの段階で知ったのでしょうか。
今回はみんなが脚本を読んでいたから、犯人が誰だということはみんな知っていると思うけど、何が素晴らしかったというと、脚本を読んでいるときに誰が犯人なのかということを私たちも思わず考えしまうこと。また脚本を読んで思い出したのは、アガサ・クリスティのミステリーのようで、最近そういう作品が減ってきている中で、今作に出合えてうれしかった。
−−機内でのアクションや長期間、同じ空間で撮影を続けるにあたって演技などで難しい部分、苦労した点はありましたか。
全然大変ではなかったのよ。むしろ大変だったのはスタッフで、映画見ていると狭い空間でつらいと思うかもしれないけれど、撮影中はスタッフの方がいろんな体勢をとらなければいけなくて、大変だったと思う。私たちは、椅子も快適だったし、休みももらえるし、役者は過酷な現場でつらい思いをすることが多いのだけど、今回の仕事は真逆で、とっても楽に、すごく居心地よく仕事ができた。でもスタッフは大変そうだったわね。
−−サスペンスのジャンルで高い評価を得ているコレットセラ監督との仕事はいかがでしたか。
彼はシャイで物静かな監督だけでも、とてもユーモアがあって、そして確固たるビジョンを持っている。そしてそれを形にするために、何が必要なのかということを分かっていて、それが決してブレない。だからといって決して押し付けがましくなく、今回のキャストや映画の作られ方を見ても、細かいところまで綿密に作られていて、それはすべて監督のお陰なの。一面的ではなくて、多面的に多層的にいろいろなテクスチャーがある、それがコレットセラ監督なんですね。
−−手に汗握るサスペンスに仕上がっていますが、サスペンス作の演技で心掛けていることはありますか。
役者として、常に作品のスタイルは意識すべきだと思う。役作りにおいては、役者的な観点からこのキャラクターは誰なのか、このキャラクターには何が必要なのかということを考えてアプローチはするけれども、コメディー、アクション、ドラマでは必要とされているトーンが変わってくるし、作品に関わる役者みんなが同じトーンをちゃんと押さえて作品を作らなければいけない。サスペンスの場合は、テンションやミステリーというものをもたらしたいと思うけれども、演技自体、パフォーマンスが変わるわけではない。ただ具体的にいうと、私が目を見開くシーンを撮るとして、私にとっては目を見開いているだけなんだけど、監督がどういう意図を持って、ムードや雰囲気を作り上げたいのかと、役者が意識することは重要だと思う。今までいろんなジャンルを経験できているだけにそれは強く思います。
−−今作のような事件でないにしろ、実際に飛行機で怖い思いをしたことはありますか。
スキー旅行に家族で行ったときに、飛行機が着陸するとき娘と私、逆側に息子と夫が座っていて、みんな飛行機の着陸には慣れているので、安心していたら、着陸後、機体が止まらずに、どこまでもどこまでもどこまでも路面を走っていって、最後の最後に機体が止まったの。オーバーランだったのかな。あの時はひやっとしたわ。でも飛行機で飛ぶことはやめないわ。飛行機で旅をするのが大好きなの。短い時間であっという間に他の国に運んでくれる。旅が大好きな私は、飛行機が怖くないし、大好きよ。
−−「フライトゲーム」をこれから見る日本の観客に見どころとメッセージを。
映画を見に行く理由は、究極的には楽しみたいという感情があるからだと思うし、いろんな感情を喚起されたりっていうのを、楽しむわけだけど、とにかくこの作品は、超、超、超、楽しめる娯楽という意味では最高ね! 楽しいし、サスペンスもあって怖いし、そして「なるほど。こうきたか~」というエンディングが待っている。ほんとうに娯楽作品として上質な作品なので、男性、女性問わず、見てもらいたい。本当に映画的に楽しめる作品だと思う。
−−今後の予定、こんな役をやってみたい、こんな生活がしたいなどの夢があったら教えてください。
脚本で作品を選んでいるタイプなので、脚本を読んで引かれるかという点が出演の決め手にはなるんだけれども、今まで、あまり実はコメディーをやれていないので、チャンスがあればトライしたいと思っています。スティーブ・カレルとの共演も楽しかった。それも脚本を読んで決めた。
夢と聞かれて最初は悩んでいたんだけれど、やっぱりすべての作品はストーリーありきで、今まで素晴らしい監督と仕事が出来ていて、それを続けて行きたいわと思ったところで、はっと思いついたのが、実現するか分からないけれど外国語で演技がしてみたい。それが究極のチャレンジだと思う。英語が母国語でない人が英語を耳で聞いて、覚えて演技をしているのを見てすごいなと思ったし、それを自分も体験してみたい。
<プロフィル>
1960年12月3日生まれ、米国出身。大学卒業後、ニューヨークのオフブロードウェイを中心に舞台で活動。「フロム・ザ・ダーク・サイド ザ・ムービー 3つの闇の物語」(90年)で映画デビュー。「SAFE」(95年)で初主演。02年度のアカデミー賞では「エデンより彼方に」で主演女優賞、「めぐりあう時間たち」で助演賞の2部門で同時ノミネートされ、「めぐりあう時間たち」ではベルリン国際映画祭で共演のメリル・ストリープさん、ニコール・キッドマンさんとともに銀熊賞(女優賞)を受賞した。その他の出演作に「マグノリア」(99年)、「ハンニバル」(01年)、「キッズ・オールライト」(10年)などがある。
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