ダンダダン
第7話「優しい世界へ」
11月14日(木)放送分
話題のマンガの魅力を担当編集が語る「マンガ質問状」。今回は、名優・勝新太郎の生涯を描いた吉本浩二さんのドキュメンタリー「カツシン さみしがりやの天才」です。「月刊コミック@バンチ」(新潮社)の岩坂朋昭さんに作品の魅力を聞きました。
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−−この作品の魅力は?
昭和の時代に勝新太郎という稀有(けう)な役者・映画製作者がいました。生前のカツシンさんをご存じの方は、豪放磊落(ごうほうらいらく)な遊びや“パンツ事件”、“勝新伝説”といったスキャンダラスな面ばかり強調されて覚えていらっしゃるかもしれません。でも、本来のカツシンさんは、「座頭市」の主演俳優の役者でありながら、その枠を超えて、監督・脚本・製作……果ては、編集まで手がける天才的な映画製作者。そして、20世紀美術界最後の巨匠バルテュスなどと交流を持つ“本物”の男でした。
「こんな男が昔の日本にはいたのか!」「こんな男とまた会いたい」と思わせる、多面体の魅力を持ったカツシンさんの姿が、本書には余すところなく描かれています! 見どころは満載ですが、奥様との秘話、バルテュスとの交流、そして原田美枝子さんに伝えたこと……などのここでしか語られなかった秘話を読んでいただければ幸いです。
−−作品が生まれたきっかけは?
「さんてつ」が終って、吉本浩二さんとどんなマンガを描きたいかを打ち合わせていたところ、真っ先に出た名前が勝新太郎さんでした。小さいころ、おばあちゃんと「座頭市」を見て、“盲目の市井のヒーロー”で弱者が強者に打ち勝つ「座頭市」というキャラクターが、当時、ちょっとどんくさいところもあった吉本少年のヒーローだったんだそうです。
その吉本さんの熱意から、ご遺族にアプローチし、カツシンさんを描くことを快諾していただき、ご遺族の関係者から京都の映画人の方々を紹介していただき……という流れで取材が進んでいきました。
−−取材による証言が作品の重要な要素になっていますが、苦労した点、面白かったエピソードを教えてください。
苦労という苦労でいうと、取材相手への交渉でしょうか。すぐにOKということにならない場合もありますし……。ただ、バルテュスの奥様・節子さんの取材は、通常ではかなわないところ、今年、バルテュス展があることもあって、節子さんが来日した際に取材させていただき、貴重なエピソードをうかがうことができました。こういうときに作品が持っている“縁”のめぐり合わせを感じて、吉本さんとも感動していました。
そしてなんといっても、取材させていただいた方々の証言から、カツシンさんの魅力が立体的に浮き彫りになっていくのが素晴らしいところです。その上、吉本さんは、その証言から“シーン”を捕まえられるのが、とても巧みな方。例えば、第1話で(美術監督の)西岡善信さんがふと漏らした、ホテルでカツシンさんに会ったときのほんの小さなエピソード(仲間のために自動販売機でビールを買うというエピソード)を、きちんとマンガの核のシーンに仕立てていく。その“シーン”を描く手法は、いつも鳥肌ものの感動があります。
−−今後の展開は?
勝さんと交流した各界の方々が登場します。夜の娯楽の殿堂といわれた伝説のクラブの支配人、カツシンさんと義兄弟の友誼(ゆうぎ)を持った方、某大スター……取材を続けていくのが楽しみになってきています。
−−読者へ一言お願いします。
カツシンさんの映画やドラマを見ていない方には、読んでいて「こんな痛快な男がいたのか!」とワクワクされると思いますし、カツシンさんを覚えている中高年の方々には、「勝新ってこんな男だったの!?」と驚かれること請け合いの作品です。
この後も、思いがけない、そして、びっくりするような秘話満載の本作をぜひお楽しみに! 今後、イベントなども企画しておりますのでバンチの公式ツイッター(@Bunch_Shincho)などをチェックしておいてください。
新潮社 バンチ編集部 岩坂朋昭
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