今年の夏に数多くの音楽フェスに出演し、ライブシーンを熱く盛り上げている注目のロックバンド「THE ORAL CIGARETTES(ジ・オーラル・シガレッツ)」が、メジャー初のフルアルバム「The BKW Show!!」を12日にリリースした。地元の奈良を盛り上げたいというメンバーに話を聞いた。
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−−メジャー初のフルアルバム「The BKW Show!!」は、インディーズ時代の2枚のアルバムと、どんなところが違いますか?
山中拓也さん:最も大きいのは、10曲を収録しているところです。インディーズの2枚はどちらも8曲入りで。僕らは1枚の作品としての物語性を重要視しているのですが、当時の自分たちでは8曲でそれをやるのが精いっぱいだったんです。でも今回は、当時より成長した部分を見せたかったし、より広い世界観を見せたいと思ったので。
それに、自分たち自身がリスナーとしてアルバムを聴いたとき、どんなに好きなアーティストでも、曲数があまり多いと疲れてしまって、もう1回聴こうってなかなかいけなくて。めちゃめちゃ好きなのにもう1回聴こうと思えないもどかしさを、どうやったら解消してもらえるのか考えた結果、10曲がちょうどいいんじゃないかと。
−−このアルバムでテーマにしたものは?
山中さん:二面性です。今年はたくさんフェスに出て、そこで知ってくれた人が多くて。ライブとはまた違った新しい発見をしてもらうことをコンセプトに作りました。僕らは多面的にいろいろな曲をやっているんですけど、それを分かりやすくくくると表裏とか、二面性みたいな感じだと思って。
あきらかにあきらさん:今までのオーラルを知ってる人でも、こんなにゆっくりな曲もあるんだとか、こんな変拍子もあるんだって思ってもらえると思います。
中西雅哉さん:ライブの流れを意識したところもあったし、アルバムの前半、後半という分かれ方も少し意識していて。前半は攻めている曲、一筋縄ではいかない曲、怪しげな曲。後半はバラードものとか聴きやすい曲、キャッチーで耳に残りやすい曲が集まっていますね。
鈴木重伸さん:まず1曲目の「嫌い」と4曲目の「STARGET」という曲の位置を決めて。それを中心に曲を選んで、この位置ならこういうアレンジがいいんじゃないかとか、常に全体像を考えながら制作していきました。1曲ごとにその曲の個性を生かすことができたアルバムになったと思います。ラストの「透明な雨宿り」なんかは、本当に美しいバラードになっていて。ライブでの熱さとは、また違ったものを感じてもらえると思います。
−−基本的にアッパーで熱いのですが、急に落ちる曲があったり、変拍子で乗りにくい曲があったり、個性的な楽曲が多いですね。
山中さん:曲作りで根本にあるのは、一筋縄ではいきたくないという気持ちです。他のバンドにはできない自分たちの強み、自分たちにしかできないアレンジと歌詞の世界観みたいなものをその都度考えていった結果、こういうサウンドが生まれて、それをどうやって伸ばすかを常に考えてきました。インディーズのときにストレートな曲を作ったことがありますが、やっぱりどこか照れくさくて。ひとひねりするほうが、むしろ自分たちらしくて自然体なんですよ。でも、サビは爽快だったり聴きやすくというのは意識しているところです。
−−曲のタイトルが「自動販売機の男」とか「大魔王参上」とか面白いですね。歌詞も物語テイストで、独特なカラーを持っていると思います。
山中さん:以前は、歌詞は各自で解釈してくれればそれでいいという気持ちだったんです。でも今回は、自分が伝えたいことが核にあって、それがどうやったら伝わるかということをすごく考えました。僕が浮かべている絵と、同じ絵を浮かべてもらえたらうれしいなって。そこも今までと違うところですね。
あきらさん:そういう歌詞に寄り添うということが、サウンドのテーマでもありました。(山中)拓也が書いてくる歌詞の起伏に、みんなのグルーブが合わさって、一緒に走ったり一緒に止まったりすることができる。そこにお客さんも乗ってきてくれるので、一体感が生まれます。
鈴木さん:だから、アレンジを考えるときは必ず歌詞の意味も聞くようにしています。
−−「ハロウィンの余韻」という曲は、ホラー映画っぽいサウンドですね。世間が騒いでいたハロウィーンのお祭り気分とは少し違った独特の怖さがある曲です。
山中さん:怖いと思ってもらえたら、バッチリです(笑い)。これは、ハロウィーンの仮装行列の中に、犯罪を犯した人が仮装してまぎれて、集まってくる子供たちに悪いことをしていた。そのことに気づいた警察官が、子供たちをおとりにして犯人を捕まえたという話をどこかで聞いたことがあって。本当の話か分からないけれど。それを元にして、そんなことが許されていいのか? という問題提起を、かぼちゃのお化けのジャック・オ・ランタンの目線で書いています。
「大魔王参上」という曲は、3年前に作ったんですけど、電車に乗ってるときとかにアイデアが浮かんで、携帯に打ち込んで書きました。もともと人間が好きで、人間観察していて人間くさいなと思ったことを、ちょっと違う角度から、聞いた話と合わせたりしながら書くことが多いです。
−−アルバムのタイトルは「The BKW Show!!」ですが、「BKW」の意味は?
山中さん:僕らはよく、ライブで「番狂わせだ」って言うんですけど、それで「番狂わせ」の頭文字を取って「BKW」と。いつだったかSNSで書いたら、ファンの間でそれが広まって、僕らとファンとの合い言葉になったんです。以来、「BKW」という言葉を中心に一体感がどんどん強まっていったので、今の僕らを表すのにぴったりな言葉だと思って。
それに僕らはまだまだ新人で、先輩バンドと共演することが多くて。そんなときはやはりアウエー感があるわけですけど、そんな中でも空気を一転させてやるとか、どれだけそこのお客さんに印象を刻み込むかってことを考えているので。僕らの負けず嫌い精神が表れている言葉でもありますね(笑い)。
−−THE ORAL CIGARETTESは、ライブも魅力です。初回盤にはその様子もたっぷり収録されていますが、あきらさんはベースを弾きながらのY字バランスがすごいですね。
あきらさん:リハーサルで調子が悪いときでも、本番になると不思議と上がっちゃうんですよね。
鈴木さん:ズボンが破れたこともあったよね。
あきらさん:そうそう。僕は気付いてなかったんですけど、最前列の子たちが「あ! 大魔王が参上してる!」って(笑い)。
鈴木さん:ステージにはお立ち台があるんですけど、グイグイ行きたがるメンバーばかりなので、お立ち台の取り合いみたいになります。
−−ドラムは前に行けないですけどね。
中西さん:でもワンマンのときとか、アンコールの最初に出て行ってMCをやって盛り上げたりしているんで。それはそれでオイシイなと。
−−最初の頃は、お客さんが5人くらいだったとか。
山中さん:結成したばかりのときはゼロだったときもありました。
あきらさん:まさやん(中西さん)が入ってから流れが変わりました。
中西さん:当時みんなは20歳くらいだったんですけど、地元を盛り上げようっていう意識がすごく高くて。僕は三重県の出身なんですけど3人は奈良で、地元を盛り上げたいっていう感覚が僕にもすごく分かるので、一緒に盛り上げたいと思って。
−−奈良出身という部分は、どのくらい意識してるのですか?
山中さん:めちゃめちゃ意識してますよ。奈良には、結成当時から今でも応援し続けてくれているお客さんがいっぱいいるので、そこは大事にしていきたいし。それと、奈良はバンドシーンの層が薄くて。先輩に「LOSTAGE」というバンドがいるんですけど、「LOSTAGE」が作り上げたシーンのあとが、すっぽり空いてしまっていたんです。そこに僕らが新しい風を吹かせたいと思ったし、「LOSTAGE」が一度作ったシーンを受け継いでいきたいという気持ちもあるし。ゆくゆくは地元でバンドフェスをやりたいですね。
−−どこかの大きい会場でやることよりも、地元でフェスをやりたい気持ちのほうが強いですか?
山中さん:どっちも並行してですね。欲張りですけど。まずはオーラルといえば奈良だよねってみんなに思ってもらえるくらいになって、じゃあそのときにオーラルが奈良をどう動かせるかだから、今からしっかり考えてやっていかないとなって思っています。あと、同じ奈良出身の著名人で、堂本剛さんのファンなので、いつか何か一緒にやりたいという夢もあります。
<プロフィル>
メンバーは、山中拓也さん(ボーカル&ギター)、あきらかにあきらさん(ベース)、鈴木重伸さん(ギター)、中西雅哉さん(ドラム)の4人。2010年に奈良で結成。12年に音楽雑誌「MUSICA」やflumpoolなどが所属する音楽レーベルA‐Sketchなどの4社で開催したオーディションでグランプリを獲得し、昨年ミニアルバム「オレンジの抜け殻、私が生きたアイの証」でメジャーデビューした。12月28~31日に幕張メッセ(千葉市美浜区)で開催する「COUNTDOWN JAPAN 14/15」に出演(30日に出演)が決まっている。
(インタビュー・文・撮影:榑林史章)
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