吉田山田:“泣ける歌”が話題の男性デュオ「つらいときに聴いてもらえる音楽でありたい」

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 昨年末から今年にかけて、シングル曲「日々」がNHKの音楽番組「みんなのうた」で放送され、“泣ける歌”として話題になった男性デュオ「吉田山田」が、「日々」を含むシングル曲と新曲「逢いたくて」を収録したアルバム「吉田山田シングルズ」を17日にリリースした。高校時代の同級生、吉田結威(よしだ・ゆい)さんと山田義孝(やまだ・よしたか)さんで結成し、2009年のデビューから5年、ようやく大きなヒット曲を得て次のステップに進もうとしている2人に話を聞いた。

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 −−泣ける歌として話題になった「日々」は、どのようにして生まれた曲ですか?

 山田さん:僕が小さかった頃にお世話になった、近所のおじいちゃんとおばあちゃんのことを思い出して、今ごろ何をしているのかなあとか想像しながら、ポロポロと作った曲です。

 吉田さん:山田が実際に見て体験した風景を、そのままに曲にしています。NHK「みんなのうた」で流れるから泣かせてやろうみたいな、作為はまったくなくて。(作為が)なかったことで、聴いてくれた方の胸に届いて、泣けるといっていただけたのだと思います。

 −−その「日々」をはじめ、曲作りで大切にしていることはなんですか?

 山田さん:なんだか分からないけどいい、という感覚です。僕はいつも鼻歌でメロディーを作るのですが、その鼻歌と一緒に出てくる言葉をつむいで曲に仕立てていく。それで完成したとき、歌詞を読んで曲を聴くと、今、自分はこういう気持ちだったんだなって、あとから気づかされることが多いですね。

 −−それはアルバム「吉田山田シングルズ」の収録曲で具体的にいうと?

 山田さん:「魔法のような」という曲は、まさにそうやってできた曲です。この曲は、サビの歌詞が「ラララ~」なんです。普通はサビって、意味やメッセージ性のある言葉が乗っていたりするものだけど、そういう言葉にならない気持ちを込めることができるのは、音楽のいいところ。まさしく、音楽の魔法の力を信じて作った曲です。

 −−吉田さんはいかがですか?

 吉田さん:「日々」という曲ができた経緯と、その曲が僕らの中でもっとも大きな反響を得たことを考えると、単純に僕たち自身が見て、経験して感じたことを突き詰めるだけでも、人の心に寄り添えるのだと、改めて思いました。一見、自分のことだけを考えて曲を作るのは、わがままに見えるけど、それがゆくゆくは誰かの心に届くんだということを実感しています。

 −−「吉田山田シングルズ」に収録されている、新曲「逢いたくて」は、年賀特設サイト「郵便年賀.jp」で鉄拳さんの映像とコラボして話題の曲です。吉田さんが作詞・作曲を担当されていますが、どのような気持ちで作ったのでしょうか。

 吉田さん:「逢いたくて」は、田舎で一人暮らしをしている、僕のおじいちゃんのことを歌っている曲で、僕の中のすごく個人的な気持ちをつづりました。5~6年前におばあちゃんが亡くなり、今は田舎の広い一軒家でおじいちゃんは暮らしていて。一人で暮らすには、あの家は広すぎるだろうなとか、おじいちゃんが毎日どんな気持ちで過ごしているのか、想像しながら作りました。おばあちゃんが亡くなって、どんなに会いたくても会えなくて、でもおじいちゃんは、おばあちゃんのことをそばに感じているんじゃないかって。そういう絆もあると思って書きました。

 −−そんなヒット曲の「日々」や、新曲の「逢いたくて」も収録した、アルバム「吉田山田シングルズ」は、お二人にとって初のベスト盤です。どんな作品になったと思いますか?

 山田さん:「日々」で僕らのことを知ってくれた方が多いと思うので、その人たちにほかにもこういう曲があるんだよって、聴いてもらいたいです。収録曲は、本当にバラエティーに富んでいますが、「日々」を気に入ってくれた方なら、きっと他の曲も気に入ってもらえる自信がありますね。僕らのこれまでの軌跡を聴いてほしいし、アルバムを聴いて、この先もきっといい曲を作るんだろうなって期待してほしいです!

 吉田さん:今まで応援してきてくれた方たちへの、感謝の気持ちを表したアルバムでもあります。曲順としては1曲目の「日々」から5年前にさかのぼりながら、最後に最新の「逢いたくて」を収録しています。聴きながら「この曲でファンになった」とか「このとき初めてライブに行った」とか、それぞれのいろんな思い出と重ねて聴いてほしいです。うれしいのは、ファンの人同士でたくさんの交流があって、新しい友達ができたとか付き合い始めたとか、いろいろなうれしい報告をいただくことです。このアルバムをきっかけに、またいろいろなファン同士の報告が聞けたら、うれしいです!

 −−明るく元気な曲もありますが、基本的に悲しいとか切ない、寂しさとか、心の奥に響くものが多いですね。

 山田さん:どんな曲でも、ネガティブな部分とポジティブな部分が表裏一体で収められています。デビュー曲の「ガムシャランナー」は明るくて元気な応援歌だけど、そこにもしっかり裏側の切なさが表現されています。そういう両面がどの曲にもあるから、何度聴いても飽きないのだと思っています。陰と陽のバランスは曲によって違いますが、必ず両方を込めていますね。

 吉田さん:光を表現するには、闇が必要です。逆もそうです。だから必然的に、両方が入り交じったものになりますね。でもデビューする以前に作っていた曲は、もっと暗くて静かな曲ばかりだったんですよ。3曲聴いたら寝ちゃうんじゃないか?っていうくらい(笑い)。だから僕らにしてみれば、結構明るい曲が多いと思うんですけどね。

 −−吉田山田の音楽は、聴く人にとって、どういう音楽でありたいと思いますか。

 吉田さん:つらいときに、手を伸ばしてもらえる音楽でありたいです。自分の経験で、本当につらかったときに聴きたいと思える音楽がなかった。ということは、まだまだやれていないことがあるということ。それを僕らが探して音楽にすることに、何よりもやりがいを感じています。

 山田さん:僕らの音楽は、僕らそのもの。僕にとって、内面の表現です。でもそれを狙うのではなく自然と出せるように、その感覚をキープし続ける。意外と難しいことですが、今のこの感覚を忘れずにいれば、いい曲をこれからも作ることができると思っています。

 −−リスナーの気持ちに寄り添いながら、お二人の内面も表れているのが、吉田山田の楽曲ですね。そもそも吉田山田という名前は、どうやって決めたのですか?

 吉田さん:デビュー前、ライブハウスに出演するときにグループ名を聞かれて。いろいろ考えたものの、結局決まらず、仮で2人の本名で、「吉田結威 山田義孝」と付けたんです。それが、そのままずるずると、次のライブもその次のライブも、名前はそのままになっていて。そのうちファンの方が、省略して「吉田山田」と呼んでくれるようになって。それで、デビューが決まったとき、「吉田山田」ということにしようって。

 −−ファンが付けてくれた名前なんですね。

 山田:そうですね。

 吉田:でも正式には今もまだ仮で、いい名前を考え中なんですけどね(笑い)。

 <プロフィル>

 高校時代の同級生だった吉田結威(よしだ・ゆい)さんと山田義孝(やまだ・よしたか)さんの2人で結成。2009年にシングル「ガムシャランナー」でデビューした。13年12月にリリースしたシングル「日々」が、NHKの音楽番組「みんなのうた」で放送され、“泣ける歌”として話題を集めた。これまでに9枚のシングルと、第56回日本レコード大賞で優秀アルバム賞を受賞したアルバム「吉田山田」を含む3枚のアルバムをリリース。15年5月には初の渋谷公会堂(東京都渋谷区)でのライブを開催する。

 (インタビュー・文・撮影:榑林史章)

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