能年玲奈:「演技オタクになりたい」コメディーとアクションに意欲 映画「海月姫」主演

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 NHK連続テレビ小説「あまちゃん」(2013年)や映画「ホットロード」(14年)の主演で注目を浴びる女優の能年玲奈さんの主演映画「海月姫(くらげひめ)」(川村泰祐監督)が27日に公開された。人気マンガ家の東村アキコさんが08年からマンガ誌「Kiss」(講談社)で連載中のコメディーマンガが原作で、能年さんは主人公のクラゲオタクの倉下月海(くらした・つきみ)を演じている。眼鏡に三つ編み、スウェット姿で男子禁制のアパート「天水館」の住人「尼~ず」たちと楽しく暮らしていた月海が、女装男子の蔵之介(菅田将暉さん)と代議士秘書のエリートの修(長谷川博己さん)の兄弟と出会い、天水館立ち退きの危機に立ち向かうため一歩踏み出す様子が描かれている。久しぶりのコメディー演技で「感情と感情をポンポン行き来する演技が難しかった」と話す能年さんに聞いた。

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 ◇夢はナースだった!?

 能年さんは、完成した「海月姫」を見て、「月海をこだわってやらせていただいたんですけど、原作ファンの方に認めていただけるかどうか、楽しんでいただけるかどうかという緊張感があります」と率直な思いを語る。原作の東村さんからは「衣装も動きも月海だ」と言われたといい、「月海の自分がだめなやつだと思い込んでいるナイーブな部分を内向するんじゃなくて、外に放出するように表現ができたらなと思っていました。勢いというか。普段“おしゃれ人間”に立ち向かうとシュンとしてへこたれちゃう。でも、へこたれるときパワフルというか、うじうじがパワフルで面倒な感じにできればと思って(笑い)」と考えて月海を演じた。

 月海の外見は「最初(能年さんのそのままの)ショートヘアのまま行こうかという案が出ていたんですけど、『三つ編み』がいいですと主張しました。やっぱり原作を見ていて、これはやっぱりお団子みたいなでっかい三つ編みは重要だと思ったので」とこだわりを明かす。月海の行動では「クラゲのドレス作りに集中したときに、いろんなことがおかまいなしになる。切り替えのときの、その集中力に共感しました。私にもその気があります(笑い)。集中し始めないと(ほかは)何もやらないところが。そこから広げて(演技を)頑張りました。楽しかった」と共感を寄せる。

 月海は“クラゲオタク”だが能年さんは何オタク?と聞くと「演技オタク……って言えたらいいな」と照れながら笑顔で語る。演技以外では「演技以外は……ないかな。ひげとか好きなことはたくさんあるんですけど、オタクっていえるのかなというのがあって」という。月海は子供の頃に「お姫様になりたい」という夢を持っていたが、能年さんは「幼少期は看護師さんになりたかったですね。そのとき、(アニメの)『キューティーハニーF』をやっていて、ナースハニーがすごく好きだったので。幼稚園のとき4、5歳の頃です」と明かした。

 ◇コメディー演技の一瞬の切り替えが難しい

 「あまちゃん」などコメディー演技が能年さんの一つの持ち味だ。能年さん自身も「もっとコメディーをたくさんやりたい」と話す。能年さんが考えるコメディー演技の難しさと楽しさは「感情と感情の間をポンポンと行き来するところですね。徐々ではなくて、感情の流れがすごくくっきりしているというか、感情と感情をポンポン行き来するという中で、そこに人間的生理を成立させていくのが難しい。さっき笑っていたのにいきなり落ち込んでる。一瞬で切り替えなければいけないというのが難しいし、楽しいです」と語る。今作でも「(天水館での)尼~ずとのすき焼きのシーン」が楽しかったと振り返る。

 今作の演技は「原作がマンガなので、動きとかしゃべり方とかをより誇張をしなくちゃいけないという部分を意識しました。(白目になる演技など)原作でも“石化”して(石のように固まって)いるときに白目になっているので絶対にやりたいと思いました」と原作の表現を意識した。

 個性的な共演者からは「カメラが回ったときにすごく集中しました。こう来るんだったらこう行く、というような。(お互いに)仕掛けていくという感じだったんです」と“演技バトル”のような現場だったという。「海月姫」の中でお気に入りのキャラクターは、意外にも「私、平泉成さんの役が、豪快でテキトーな政治家という感じが楽しくて。後半の会場に入ってく際に豪快にワッハハハって乗り込んでいくところがすごく好きでした。楽しかったです」と笑顔で語る。

 「海月姫」といえば女装男子・蔵之介を誰が演じるかにも注目が集まっていた。演じた菅田さんははまり役だったが……。「(菅田さんが)10キロ以上減量されたと聞いて、すごいなと思いました。お肌のケアも抜かりなく……。撮影が終わったあとにパックとかして女装シーンのために頑張ってらっしゃった。それに比べて私は、(私服の)スウェットから(衣装の)スウェットに衣装替えして、スタイルもほったらかしで……。女性として見習わなきゃなと思いました」と女子力の高い菅田さんの演技が刺激になったようだ。

 ◇これまでを振り返って

 今年は映画「ホットロード」でシリアスな演技を見せたかと思うと、今作ではコメディーと女優としてさまざまな表情を見せた能年さん。13年は朝ドラの「あまちゃん」をやり切って、「1年間、すごい方たちに囲まれて撮影を乗り切ったこと」で手応えを感じた。「自由になった気がしました。そんなに長い期間、(撮影を)やることが初めてだったので、やれるもんだと、(これから)なんでも頑張れるぞと思いましたね」と自信につながった。

 今後は「もっと頑張んなきゃ、もっと演技したいという感じです」と貪欲で、“演技オタク”として「面白い作品を見たあとに好きなせりふを物まねしまくってます。最近は藤山直美さんのドラマを繰り返し見て、(せりふを)まねしてました」と明かした。

 来年は「コメディーをたくさんやりたいという願望があります。あと、アクションに挑戦したい。ガイ・リッチ−監督の『シャーロック・ホームズ』のような。(肉食的な)ロバート・ダウニーJrさんのシャーロック・ホームズが“どうかしていて”好きなので」と女性版シャーロック・ホームズに意欲を見せていた。

 最後に「海月姫」について「見ていただけるか緊張して、すごくドキドキしています。私自身は久々のコメディーなので、(出演できたのが)すごくうれしくて。(公開は)お祭りにしたいなと思っています」とメッセージを送った。

 <プロフィル>

 のうねん・れな 1993年生まれ、兵庫県出身。2006年に第10回ニコラモデルオーディションでグランプリを獲得しデビュー。10年まで専属モデルを務める。第11代「カルピスウォーター」CMキャラクターを務め、脚光を浴びる。映画「告白」(10年、中島哲也監督)で女優デビュー。これまでに映画は「カラスの親指」(12年)、「グッモーエビアン」(12年)などに出演。ドラマは「高校生レストラン」(11年)、「鍵のかかった部屋」(12年)、「サマーレスキュー~天空の診療所~」(12年)などに出演した。13年のNHK連続テレビ小説「あまちゃん」でドラマ初主演。14年には映画「ホットロード」で長編映画初主演を果たす。第38回エランドール賞新人賞を受賞。

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