注目映画紹介:「ジュピター」ウォシャウスキー姉弟監督の最新作 悪役目線で見るのも一興

映画「ジュピター」のワンシーン (C)2014 WARNER BROS.ENTERTAINMENT INC.AND VILLAGE ROADSHOW FILMS(BVI)LIMITED.ALL RIGHTS RESERVED.
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映画「ジュピター」のワンシーン (C)2014 WARNER BROS.ENTERTAINMENT INC.AND VILLAGE ROADSHOW FILMS(BVI)LIMITED.ALL RIGHTS RESERVED.

 SFアクション大作「ジュピター」(ラナ&アンディ・ウォシャウスキー監督)が28日から公開される。ウォシャウスキー姉弟監督の最新作で、「マトリックス」シリーズ以来の完全オリジナル作となった。主演は「フォックスキャッチャー」(2014年)のチャニング・テイタムさんと「ブラック・スワン」(10年)のミラ・クニスさん。

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 ジュピター(クニスさん)は、家政婦として忙しく味気ない毎日を過ごしていたが、実はある運命を背負っていた。偉業を成し遂げる宿命を持つ星座に生まれ、10万年前から地球を所有する宇宙最大の王朝アブラサクス家の女王と同じ遺伝子配列を持つ“生まれ変わり”だったのだ。しかし、一族の継承者である3人の子どもたちは、ジュピターが地球を継承することを阻み、全人類を滅ぼそうと考えていた。ある日、異星人にさらわれそうになったジュピターは、遺伝子操作で生み出された究極の戦士ケイン(テイタムさん)に助けられ、自分が王族だったことを知る。ジュピターとケインは地球を救うべく力を合わせて闘っていく……という展開。

 壮大な宇宙を舞台にし、アクションとラブストーリーがメリハリをつけて展開されていく。火花散るまぶしい映像が続く激しいバトルが繰り広げられたかと思うと、途方もない広さの宇宙空間を漂うジュピターとケインのロマンチックな映像がはさみ込まれる。実は王族だった美しいジュピターと、オオカミのDNAを持つというケイン。美女と野獣コンビの2人が宇宙の権力争いに巻き込まれながら、己と闘っていく姿にしびれる。地球はアブラサクス一族が所有する資産に過ぎないという驚きの設定で、女王である母亡きあと、3きょうだいの仲がギスギスしている点が、SF大作でありながら妙に現実的で感情移入しやすい。ジュピターへのアプローチにそれぞれの個性が込められていて、悪役目線で見るのも一興だ。特に人格が破たん気味の長男バレムが見もの。「博士と彼女のセオリー」(14年)で今年度の米アカデミー賞主演男優賞を受賞したエディ・レッドメインさんが「人間は家畜同様」とうそぶく背筋も凍る悪役を小声で印象的に演じている。ウォシャウスキー姉弟監督のスタッフが集結して作り上げた世界観や宇宙船の凝ったデザインなどの美術、衣装も、いうまでもなく見どころだ。丸の内ピカデリー(東京都千代田区)ほかで28日から公開。(キョーコ/フリーライター)

 <プロフィル>

 キョーコ=出版社・新聞社勤務後、映画紹介や人物インタビューを中心にライターとして活動中。趣味は散歩と街猫をなでること。試写前に宣伝さんのいう「マトリックスから16年……」のフレーズを耳にして、ヒエーッと驚きました。

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