超硬派のゲーム雑誌「ゲーム批評」の元編集長で、現在はゲーム開発と産業を支援するNPO法人「国際ゲーム開発者協会日本(IGDA日本)」代表の小野憲史さんが、ゲーム業界の現在を語る「小野憲史のゲーム時評」。今回は、コンピューターゲーム開発者向けの会議「CEDEC」について語ります。
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8月26~28日まで横浜パシフィコ(横浜市)で開催された「CEDEC2015」で、「妖怪ウォッチ」で知られるレベルファイブの日野晃博社長が基調講演を務めた。それはパッケージゲームの開発プロデュースの“頂点”ともいえる内容だった。
1990年代までゲームビジネスでは、面白いゲームを作ることが重要だった。しかし2000年代になると、面白いゲームを作ることは当たり前で、そのうえで売るための仕掛けを作ることが重要になった。背景にあるのがゲームの大作化で、プロデューサーの手腕が求められるようになったのだ。
レベルファイブが進めるクロスメディア戦略は、こうした「仕掛け作り」の最右翼だ。講演では「レイトン教授」から「妖怪ウォッチ」に至るまで、約10年間の歴史が振り返られた。ポイントは、ゲームクリエーターと異業種クリエーターが対等な立場でコラボレーションを深めてきたことで、並々ならぬ苦労が感じられた。
大ヒットしている「妖怪ウォッチ」も、その中核にあるのはゲームではなく「妖怪メダル」だ。全メディアで妖怪メダルを用いた仕掛けが作られ、全体が盛り上がる仕組みになっている。しかし、これには各メディアのクリエーターの協力が不可欠で、一朝一夕にはできない。10年間かけて、そのための体制が作られていったのだ。
もっとも、2010年代のゲームビジネスは、そこからさらに変化している。ポイントはパッケージゲームからF2P(基本プレー無料のアイテム課金)というビジネスモデルの移行だ。今や国内ゲームソフト市場の主役はスマートフォンのゲームで、市場は基本無料のゲームであふれている。新作ゲームもすぐに埋もれてしまうのが現状だ。
重要なのはユーザーにゲームの存在を知ってもらうことだ。そのため業界では、テレビCMの大量投下が定石となっている。しかし、これでは開発リスクが増加するばかりだ。ポイントはインターネットをうまく活用すること。つまりゲームビジネスではじめて、宣伝・広報が真の意味で重要な時代が到来したのだ。
CEDECでもこの1~2年で、ゲームのプレー動画を用いたプロモーションや、ユーザーコミュニティーの形成といった議論がみられるようになり、新しい潮流を感じさせている。そしてスマホゲームの分野では、レベルファイブでさえも成果を出し切れていないのが現状だ。F2P時代において何が有効なのか、さらなる議論を期待したい。
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