ドラゴンボールDAIMA
第6話 イナヅマ
11月18日(月)放送分
話題のアニメの魅力をクリエーターに聞く「アニメ質問状」。今回は、太田紫織さんのミステリー小説が原作のアニメ「櫻子さんの足下には死体が埋まっている」です。加藤誠監督に作品の魅力を語ってもらいました。
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「櫻子さんの足下には死体が埋まっている」。ライトノベルのような長いタイトルではありますが、法医学知識を用いた本格的なミステリー小説となります。事件があって犯人を見つけるといったことが重要ではなく、死体から“聞こえてくる声”から標本士である博識ヒロイン・九条櫻子が隠された真実を見抜き導き出していく、そこが今作の大きな魅力となります。
僕が原作から受けた作品全体が持つ清涼感。それをどう映像で表現していくか、画面の空気感づくりに一番気を配りました。今作はいわゆるキャラものではないので、画面に映りうるすべてのもので作品を表現していく必要がありました。志高いスタッフさまのおかげで、完成映像はイメージ以上の仕上がりになっていると思っています。
もう一つは僕自身に掲げた課題「アニメーション化することの意味とは?」です。原作は太田紫織先生が書かれた小説です。原作ものをアニメ化すること自体初めてなのですが、企画をいただいた時から「決して原作通りの焼き直し作品にはしたくない」と思っていました。それは原作の構成がしっかりしていたのもありますが、僕自身、原作通りのアニメ化なら「原作を読めばよいんじゃないか?」と思うたちの人間だからです。
映像化することの意味、必然性が必要でした。せっかく映像化できるなら、映像化するための媒体の特性を最大限に生かした原作とは違った切り口で違う旨味(うまみ)を出す。原作を壊すのではなく、見え方を少しズラしたいい意味での改変。それが僕が自身に掲げた課題であり、目標なのです。
演出面で特に力を入れさせてもらったところは櫻子さんが事件に絡んでいく際の推理シーンへの導入部分、謎解き部分でしょうか。ゴム手袋をハメた直後の異空間演出。僕は「変身バンク」と呼んだりしています。少女が魔法少女になるための変身シーンみたいな役割があります。櫻子さんが推理モードに入ったスイッチの切り替えをあのようなビジュアルで表現してみました。
ちなみに櫻子さんのまわりにはカラフルに着色された無数の骨格標本が出現しますが、あれは「透明標本」の色味をモチーフに作らせていただきました。変身バンクを飾る素晴らしい作画にも注目です。
もう一つは謎解き部分。櫻子さんの解説とともに登場人物たちが現場を追体験する特殊演出になっています。実際には空間移動はあり得ないことですが、少し見え方をズラして解釈を変えれば、映像だからこそ表現できる強みではないかと思い採用してみました。こちらも変身バンク同様、シリーズを通してのマスト演出にしています。話数によってそれぞれに違った仕掛けを施させていただいています。どちらも原作にないアニメオリジナルの表現。チャレンジとなっています。
一番うれしかったのはやはり監督という立場で現場に立たせていただけたことでしょうか。監督という立場になってから人とのつながり、気遣い、駆け引きといった一人の人間としての葛藤は想像を超えるものでしたが、その分もう一歩前へ進める気がしています。転ぶことは常ですが、必ず何かを拾って起き上がり、最後まで走り抜けたいと思います。「監督になる」という一つの目標を胸になんとかこの仕事を続けてきました。何度もやめようと思ったことがありましたが、自分を信じることを諦めなくて本当によかったと今は思っています。
大変だったことは正に今です(笑い)。放送も始まり毎週のように納品が迫ってくる日々がとてもつらい。視聴者の皆さまの大事な時間を預かってる立場でもあるので、少しでもクオリティーの高いものを提供したいと、粘り過ぎても時間が足りない……。そのジレンマがすさまじいです。今作にお付き合いいただいた視聴者の皆さまの時間が特別なものになるよう、キッチリ終わらせて、後からの笑い話にしたいですね(笑い)。
ストーリーが進んで行くにつれ、櫻子さんが抱える閉ざされた過去との因果関係が少しずつ顔をのぞかせてきます。それを楽しむかのようにある「美しい人物」の影も徐々に姿を現していきます。今作は九条櫻子という人間をひもとく物語です。相方の館脇正太郎の視点から彼女と物語をともに歩み、追って行ってほしいです。
「櫻子さんの足下には死体が埋まっている」という作品を通し、読み、見比べた時、原作を知っている方には「意外性を」。アニメをきっかけに原作を読もうと思ってる方には「驚きを」。原作小説とアニメーション作品それぞれが持つよさと変化を一つのエンターテインメントとして楽しめるものにしたいと思っています。アニメも絶賛放送中ではありますが、最後までお付き合いいただけたら幸いです。北海道のファンの方々に届くよう現場スタッフ一同、頑張らせていただきます! ありがとうございました。
監督 加藤誠
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