人気子役の鈴木梨央さんと俳優の津川雅彦さんが日本語吹き替え版の声を担当した仏の劇場版アニメーション「リトルプリンス 星の王子さまと私」(マーク・オズボーン監督)が公開中だ。今作はアントワーヌ・ド・サン・テグジュペリ(1900~45)による名著「星の王子さま」をモチーフにしている。9歳の女の子が引っ越し先で出会った元飛行士のおじいさん……彼こそが「星の王子さま」で“王子”と出会った飛行士だった。映画は、その元飛行士との交流によって、母親の言いつけ通りの生活を送っていた女の子が、子供らしさを取り戻し、人生における「大切なものは目に見えない」ことに気付いていく姿を描いている。女の子役の鈴木さんと、元飛行士役の津川さんに話を聞いた。
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今作で、アニメーションの吹き替えに初挑戦した鈴木さんは「私は、出だしの最初の声が小さくなっちゃって、(吹き替え版の)監督さんに何度か注意されて気を付けました」と反省する一方で、「津川さんや(お母さん役の)瀬戸(朝香)さんの声のお陰で、すんなり役に入れました」と度胸のよさを見せる。後半の、少女が元飛行士に自分の気持ちをぶつけるシーンも「自分の気持ちがあふれてしまうと、秒数とか口の動きも忘れちゃうので、すごく難しかったです」と打ち明けるが、そんな苦労をみじんも感じさせない名演技ぶりだ。
そんな鈴木さんを「どんなに早口のところでも、どんなに難しいところでも、割と楽に(声を)出していて、素晴らしいと思いました」とたたえる津川さん。隣で恥ずかしそうに身じろぎし、「ありがとうございます」と鈴木さんが愛らしくお礼をいう。
鈴木さんが声を担当した“女の子”は、本来は、津川さんの言葉を借りるなら、「人一倍好奇心旺盛な、未知のものに対して勇気を持って信じていく、そういうすてきなお嬢ちゃん」なのだが、元飛行士に会うまでは、よい学校に入るために母親が立てた分刻みのスケジュールをこなす、せわしなく、味気ない日々を送っている少女だ。「私はマイペースなので、女の子みたいな生活はできないと思います」と話す鈴木さんだが、「でも、せめて朝ご飯ぐらいは、ゆっくり食べてと思いました」と女の子を思いやる。
一方、意外にも声優の仕事は今回が3作目という津川さんは、本人いわく、「役者をやっていることを考えるとね、顔も体も使わないわけですから、難しいなとやる前は思っていた」そうだが、「いざやってみると、顔も体も全部向こう(アニメーション)がやってくれているわけです。声も、自分の中に七色あるわけじゃないですから、いくつかの色をそれに合わせるということで、技術的なことは別にして、やりやすかったですね」と、さすがベテランの貫録を見せる。
津川さんが演じた元飛行士は、古ぼけた屋敷に暮らし、裏庭にはこれまた古ぼけたプロペラ機があり、それをコツコツと修理している風変わりな老人として描かれている。そんな彼の人物像を津川さんは「若い頃は飛行機に乗って砂漠に不時着するという、冒険心と挑戦意欲に富んだ数少ない青年」で、そういう意味で「そんじょそこらにいるようなおじいさんではない」と分析する。そして「でもだからこそ、星の王子さまにも出会えたし、星の王子さまを信じることができたわけです。また、あの物語(原作)は、全部青年が語っている話ですから、彼がそれだけのうんちくを持っていたということですよね」と説明する。
そんな元飛行士は鈴木さんにも魅力的に映ったようで、もし自分の家の隣に住んでいたら、「お友達になりたいです!」と目を輝かせる。その一方で「でも、飛行機のプロペラで家の壁を突き破ってしまうのは、嫌ですね(笑い)」と本音を語り、「女の子が、早く星の王子さまのことを信じてあげられたらいいなと思っていたんですけど、女の子が信じて、飛行士さんはよかったなと思いました」と屈託ない笑みを浮かべる。
ちなみに、女の子は元飛行士との触れ合いを通じて、自分を取り巻く大人たちの「奇妙さ」にも気付いていくが、鈴木さん自身も「大人って奇妙」と思うことはあるようで、例えば「お母さんとかが言うんですけど、『もう(小学校)5年生でしょ。大人なんだから』というときもあれば、『まだちっちゃいんだから、子供なんだから』というときもあるから、どっちなんだろうと思って(笑い)」と首をかしげる。そんなときはどうするのかとたずねると、「従います(笑い)」と殊勝なところを見せた。
印象に残っているシーンに、鈴木さんは「女の子が飛行機に乗って星の王子さまを探しに大冒険するシーン」を挙げ、「自分も大冒険した気分になれました」と感想を語る。一方の津川さんは、元飛行士が初めて女の子と出会うシーンを挙げ、「心が躍るというか、なかなかすてきなシーンでね。バックに流れる音楽も、2人の出会いを象徴するようで素晴らしい」としみじみ語る。
女の子を演じ終え、「女の子のように、真っすぐで正義感のある芯の強い女の子になりたいです」と元気に話す鈴木さん。そんな鈴木さんに、自身も子役経験がある津川さんは、「子役って本当にいろんな意味で“天才”なんですよ。でも、それが大人まで続くかどうかは別の問題で、梨央ちゃんには、このまま素直に大人になってほしい」と期待を寄せつつ、子役から大人の俳優になることの難しさ、大変さを口にする。その上で、「だからこそ逆に、梨央ちゃんがどういう大人になっていくのかなというのは、とても楽しみですね」と温かいまなざしを向けた。
2人は見どころについて、「9歳の女の子が星の王子さまの世界を大冒険するお話で、大切な人とけんかをして怒ったり、泣いたり、感動したりする作品になっておりますので、皆さんにぜひ見ていただきたいです」(鈴木さん)、「見どころはいろいろありますが、僕はやはり、キツネ(声:伊勢谷友介さん)とヘビ(声:竹野内豊さん)の言葉に深く感動したので、彼らとの会話の場面をぜひ心にとめて見ていただきたい」(津川さん)とメッセージを寄せる。
今年5月には、今作のワールドプレミアが開催された仏カンヌ国際映画祭で、レッドカーペットの上を歩いた。主催者のみならず、映画祭を見に来る人々や、周囲のホテルやレストランまでもが映画祭の盛り上げに一役買っているのを目の当たりにした津川さんは、「文化というものの層の厚さ」に驚くとともに、「一つの文化の伝統、その重み、格式を感じました」と語る。かたや鈴木さんは「皆さんが、『梨央!』といって、たくさんの人が写真を撮ってくれました。うれしかったし楽しかったです。でも、緊張もありました。口から心臓が飛び出そうなくらい緊張しました。でも、津川さんや瀬戸さんがいらしたので、安心して(レッドカーペットを)歩くことができました」と子供らしさをのぞかせる。そんな鈴木さんに、また行きたいですか?と問いかけると、「チャンスがあれば、ぜひ行きたいです!」と満面の笑みで答えた。映画は21日から全国で公開中。
<鈴木梨央さんのプロフィル>
2005年生まれ、埼玉県出身。ドラマ「カエルの王女さま」(12年)で子役デビュー。翌年のNHK大河ドラマ「八重の桜」(13年)の主人公・八重の幼少期を演じ、注目される。ほかに、ドラマ「Woman」(13年)、「明日、ママがいない」(14年)、「金田一耕助VS明智小五郎」シリーズ(13、14年)、「お兄ちゃん、ガチャ」(15年)などに出演。映画出演作に「ST 赤と白の捜査ファイル」(14年)がある。米映画「ワールド・ウォーZ」(13年)では主人公の娘の声の吹き替えを担当した。出演映画「僕だけがいない街」が2016年春公開予定。
<津川雅彦さんのプロフィル>
1940年生まれ、京都府出身。5歳の頃から子役として映画に出演。16歳のときに出演した「狂った果実」(56年)で一躍スターダムにのし上がる。以来、数多くの映画、ドラマに出演。映画「マノン」(81年)ではブルーリボン賞助演男優賞、「マルサの女」「夜汽車」(87年)では日本アカデミー賞最優秀助演男優賞を受賞。2006年から監督としても活動し、作品に「寝ずの番」(2006年)、「次郎長三国志」(08年)、「旭山動物園物語 ペンギンが空をとぶ」(09年)がある。声優は、クレーアニメ「ウォレスとグルミット ベーカリー街の悪夢」(09年)、劇場版アニメ「バケモノの子」(15年)に続いて今作が3作目。
(取材・文・撮影/りんたいこ)
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