三宅由佳莉:自衛隊の歌姫がアニソンに挑戦 理想のヒーロー像は「目標に一生懸命取り組む人」

アルバム「響け!ブラバン・ヒーローズ」などについて語った海上自衛隊東京音楽隊の歌手、三宅由佳莉さん
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アルバム「響け!ブラバン・ヒーローズ」などについて語った海上自衛隊東京音楽隊の歌手、三宅由佳莉さん

 海上自衛隊東京音楽隊がテレビアニメや特撮シリーズの主題歌を演奏したアルバム「響け!ブラバン・ヒーローズ」が3月30日にリリースされた。海上自衛隊の歌手、三宅由佳莉さんがボーカルを務める「キューティーハニー」「残酷な天使のテーゼ」のほか、「ウルトラ兄弟メドレー」「宇宙戦艦ヤマト」「銀河鉄道999」といった昭和のヒーローものやアニメの主題歌を中心とした名曲の数々を吹奏楽の新アレンジで収録している。自衛隊音楽隊のボーカリスト第1号として活躍する三宅さんに、今作の話や自衛隊に入隊した経緯、普段の生活などについて聞いた。

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 ――三宅さんは、元々はミュージカル俳優を目指して大学で声楽を学んでいたそうですが、自衛隊の試験を受けることになったきっかけは?

 大学で歌を教えてくださっていた先生から「自衛隊の音楽隊で歌手を募集しているみたいよ」っていう話を聞いて、その説明会に行ったのが、音楽隊を初めて知るきっかけでした。そこで、音楽隊で初の歌手を募集していて、1人しか受からないっていうのを聞いてすごく興味が湧いて。これまでにやった人がいなくて、どういう仕事が待っているのか未知であるということにすごく好奇心がくすぐられて、受験することに決めました。

 自衛官になるための試験は筆記なんですけど、音楽隊の試験は、課題曲を歌う実技と面接がメインで、課題曲はミュージカル「キャッツ」の「メモリー」と童謡の「赤とんぼ」、あとその時は「君が代」を歌いました。私は、大学の時は空手道部にも所属していて、体を動かすことも好きだったので、この世界に飛び込みやすかったのかなって思います。

 ――入隊から配属までの5カ月間は、さまざまな自衛官の訓練を受けたそうですね。具体的にはどんな訓練だったんですか?

 最初は基礎訓練で、敬礼や行進の仕方だったり、あとは体力面では筋力トレーニングもあります。海上自衛隊は船を基本としているので、ボートを漕いだり、水泳の訓練だったり、手旗信号を覚えたり。あとは「陸戦」といってほふく前進をしたり、銃を持っての訓練もあります。でも、集団生活でのしつけの面がとても厳しくて、そこが一番大変だったかな。携帯電話が使えなかったり、テレビを見る時間がないとか、外出も制限されるとか。最初は「おうちに帰りたい」と思うくらい寂しくなりました。

 ――今も、音楽隊の寮で生活しているそうですね。

 3人部屋で、お風呂も共同、テレビも見る部屋が決まっていたり。でもご飯も3食出ますし、苦痛に感じるようなことは全くありません。門限があるのがちょっとアレですけど……。門限は夜の11時45分なんですけど、門限を破った前例は、私は見たことがないです。絶対できないですね(笑い)。

 ――EXILEがパフォーマンスした「天皇陛下御即位二十年をお祝いする国民祭典」でも演奏経験のある東京音楽隊ですが、三宅さん自身が参加した中で印象的だったイベントは?

 国立競技場が解体される前の「SAYONARA国立競技場」という最後のイベントで国歌を歌わせていただきまして、私が見た限り、今までで一番多い人数の前で国歌を独唱したっていうのは私の中ではビッグイベントでしたし、記憶がぶっ飛んでしまうぐらいの強烈な緊張の中で歌ったイベントでした。競技場の袖からど真ん中に歩いて行くんですけど、そこの記憶はないですね……。

 ――それでは、今回のアルバムついてお聞きしたいのですが、ご自身のボーカル曲に関しては、原曲の主題歌が流れるアニメのオープニング映像をYouTubeなどで見て、歌録(ど)りに臨んだそうですね。

 「キューティーハニー」は、倖田來未さんの方をよく知っていたんですけど、原曲を聴いてみたら、すごく特徴的な歌い方をしていて、ちょっとコミカルな感じといいますか、歌というよりはセリフっぽい感じがあって、そういう言葉のニュアンスや表現の仕方も原曲に近づけられるように歌ってみました。キューティーハニーにあるイヤラシさ(セクシーさ)が前面に出すぎないような可愛らしさというか、そのキャラクターをイメージして、声優さんになったつもりで声を吹き込むような感じでやってみたら、案外、恥ずかしくなくて。最初はとっても恥ずかしかったんですけど……。

 「新世紀エヴァンゲリオン」の曲「残酷な天使のテーゼ」も、原曲の歌声、バンドの演奏もカッコよくて、自分がそのカッコよさを生かせるのかっていうのもありましたけれど、でも、これまでにない“ワイルドさ”みたいなものを試せたのでよかったと思います。あと「無限に広がる大宇宙」のスキャットも、今回「宇宙戦艦ヤマト」を歌っている川上(良司)1等海曹がアニソンにとっても詳しくて、的確なアドバイスをもらえて。同じようなフレーズが繰り返しあるんですけど、「銀河をイメージしながら。最初は遠くから、だんだん近づいてくるんだよ」みたいなイメージを伝えてくれたので、すごくやりやすかったです。

 ――今作は「ヒーロー」がテーマの一つになっていますが、三宅さんの理想のヒーローは?

 何か自分の目標に向かって一生懸命取り組んでいる姿がすごく好きですね。スポーツ選手とか、カッコいいなって思います。水泳ですと北島康介選手、テニスの錦織圭選手も好きです。精神的な強さやストイックな感じはすごいなあって思いますね。

 ――最後に今作のPRをお願いします。

 ヒーローは世界の平和を守る存在だと思うんですけれど、私たち自衛官も日本の平和と独立を守ることを任務としておりまして、このCDを手に取って懐かしい思い出に浸っていただきながら、私たちの熱い思い、正義感も合わせて感じていただければ幸いです。自衛隊で働いている自衛官について、もっと多くの人により理解してもらえるように、こういうCDや演奏会を通して貢献できたらなって思っています。

 <プロフィル>

 1986年12月14日生まれ、岡山県出身。日本大学芸術学部音楽学科声楽コース卒業。2009年4月に海上自衛隊に入隊し、9月に東京音楽隊のボーカリストとして配属される。三宅さんが初めてハマったポップカルチャーは、中学1年生の頃にハマった宝塚歌劇。「ピアノの先生が宝塚が好きで、その先生が録画していたビデオを借りて見たのがきっかけで宝塚やミュージカルが好きになって、ミュージカル俳優を目指すきっかけにもなりました。周りの友達はジャニーズとかにハマってたんですけど、私は一人、宝塚にゾッコンで、夜な夜な宝塚のDVDを見たり、グッズを集めたり。姿月あさとさんがずっと大好きで、一度お会いしたこともあるんですけど、私にとっては神のような存在で、今でも大好きですね」と話した。

 (インタビュー・文・撮影:水白京)

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