世界でシリーズ1億本以上を出荷しているスクウェア・エニックスの人気ゲーム最新作「ファイナルファンタジー(FF)15」が29日に全世界で一斉に発売された。松田洋祐社長が「弊社のクリエーティブを結集したフラッグシップタイトル」と期待を寄せる一作は、ゲームの発表から発売までに10年も費やした。裏返せば10年分の膨大な開発費も投じているため、絶対に失敗は許されず、同社とシリーズのブランド力が問われる一作になりそうだ。
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発売日の29日に開かれた発表会で、2012年の夏に開発責任者を引き継いだ田畑端ディレクターは「ホッとしている」と心中を明かした。それもそのはずで、2006年に「FF ヴェルサス13」の名前で発表されて以降、発売時期も「未定」だった。同時に発表されたFF13シリーズの本編「FF13」は2009年に発売され、続編「FF13-2」、「ライトニング リターンズ FF13」もそれぞれ11年、13年に発売。もう一つのFF13シリーズの作品で、タイトル名と対応ハードが変更された「FF零式(旧・FFアギト13)」が2011年に発売されたことを考えると、FF15がいかに迷走したかが分かる。そして開発期間の長さゆえに途中で新しいハードが登場し、フラッグシップタイトルゆえに対応ハードを変更せざるを得ず、さらに開発期間が延びる……という状況に陥った。
そんな“負のスパイラル”というべき状況下で、世界的なトレンドともいうべき「オープンワールド(広大な世界を自由に遊べるようにしたゲームデザイン)」を作り、キャラクターの人間性を出すために優れた人工知能を搭載し、映画ばりの映像を仕上げ、責任者の交代から巻き返して4年間で完成させたこと自体が驚異的だ。田畑ディレクターは、FF15の販売目標について明確な数字は避けたが、世界のトップクラスのヒットを意味する「AAA(トリプルエー)」にしたいと語り、「FF15は、日本のゲームをシビアに見るメディアも高いスコアを付けてくれている」と自信を見せている。
振り返るとFFシリーズは、先鋭的、冒険的なことをしてきた歴史がある。1987年に発売された初代FFは、旧スクウェアがヒット作に恵まれず“存続の危機”に立たされていたとき、残された資金と社内の開発陣を総動員してヒットさせた。97年発売のFF7は、任天堂全盛期にPSに“移籍”するリスクを取って大成功させて世界的な認知度を得た。他にも本格的なオンラインゲームとして制作・運営したFF11(2002年)。開発責任者が途中で交代したFF12(06年)。仮想の神話世界を軸にした壮大なシリーズ構想を打ち上げながら事実上頓挫したFF13シリーズ。そして一度は自ら「失敗」と断じた上で、作り直してヒットさせたオンラインゲームのFF14(10・13年)。これだけ“背水の陣”を乗り切ったシリーズも珍しい。
近年の日本では、携帯ゲームやスマホゲームが人気だ。そのためゲーム会社がカネと時間のかかる大作ゲームを避ける傾向にあることから、「世界的にヒットする大作を開発する力が落ちている」と指摘する関係者は多い。それだけに果敢に世界に勝負を挑んだFF15の“成績”は、多くの関係者が注目するところと言えそうだ。(河村成浩/MANTAN)
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