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文春砲:なぜ声優ファンには効かなかったのか

アニメ コラム
プライベートの部分に踏み込むことは、ファンとして“マナー違反”という暗黙のルールがあるのです

 昨今“文春砲”に代表される芸能ゴシップのターゲットが人気声優にまで広がってきている。しかし、そうしたゴシップ記事に対するファンの反応は一般的な芸能人の時とは若干異なるようだ。“オタレント”の小新井涼さんが、アニメファンの目線から独自の解釈で分析する。

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 世間をにぎわせてきた、いわゆる“文春砲”に代表される芸能ゴシップネタですが、最近新たに「人気声優」をターゲットにし始めました。スクープ内容はよくある熱愛話や不倫ネタなのですが、一般的な芸能ネタとは“砲撃への反応”が異なっているようです。例えば、普段こうしたスクープではターゲットにされた人物が炎上するものですが、“砲撃”を受けた声優はたたかれるどころか、場合によっては同情すら集めています。さらに、本来ならばターゲットの方に向きそうなファンの怒りと非難の矛先も、声優ではなくスクープを報じた側に向けられているのです。こうした反応の違いが生じ、しまいには“空砲”とまで呼ばれてしまうなど、結果として声優ファンやアニメファンには“文春砲”があまり効かなかったのは、一体なぜなのでしょうか。

 原因のひとつとして、報じた側が“声優ファンのタブーを冒してしまったこと”が考えられます。今では声優個人の冠番組や顔出しでのイベント出演はもはや当たり前となり、ファンの中にはキャラやアニメ作品だけでなく、声優個人のパーソナルな面を好きになる人も多いと思います。とはいえ、そうしたファンが追いかけ、欲している情報というのは、多くの場合、あくまでも声優の“お仕事の範疇(はんちゅう)”までです。そのためそれを超える領域、特に声優本人が公表していないプライベートの部分に踏み込むことは、ファンとして“マナー違反”という暗黙のルールが、彼らの中にはあるのです。スクープされた声優よりも、それを報じた側が真っ先に非難されたのもそのためでしょう。声優ファンは、自分たちがあえて踏み込まないでいる領域を勝手に暴き、あまつさえそれをネタとして公表した側に強い憤りを感じたのだと思います。

 もうひとつの原因としては、報じた側が声優ファンだけにとどまらず、“アニメファンのテリトリーをも侵してしまったこと”が挙げられます。過去に苦い経験をしたこともあり、アニメファンは自分たちのファン文化(例えばコスプレやBLなど)を、メディアなどの第三者に理解のないまま、冷やかし半分で報じられることにとても敏感です。そのため、そういった相手を「自分たちの遊び場を脅かす侵入者」とみなして、拒絶反応を起こすことがあります。今回はまさに、「自分たちの好きなモノを、よく知りもしないで食い物にする侵入者」であると、アニメファンに認識されてしまったのでしょう。こうなると、“ターゲット声優のファン”だけでなく、普段は彼らと敵対している“ターゲット声優のアンチ”でさえ、支持するどころか、“いちアニメファン”として、報じた側を目の敵にするようになります。こうして報じた側はターゲット声優のファンのみならず、その声優のアンチ、ひいてはアニメファン全体をも敵に回してしまい、スクープへの賛同者を得ることができなかったのではないでしょうか。

 結局のところ、“文春砲”が声優ファンやアニメファンに効かなかったのは、報じた側が、こうしたファンの作法をよく知らないまま、人気声優をターゲットにしてしまったことがなによりの原因だと思います。スクープをした自分たちの方がバッシングの対象とされてしまったのもそのためでしょうし、逆にファンの作法をよく理解していたならば、普通は騒がれる「熱愛や不倫」といったネタの需要の低さや不燃性も、事前に察することができたかもしれません。

 もちろん、確かにファンの間で話題になるのは間違いありませんし、その時点で報じる側としては一定の役割を果たしたといえるのかもしれません。しかも近ごろは声優がバラエティー番組に出演する機会なども増え、確かに彼らの認知度は以前より上がってきています。しかし、いくらタレントやアイドルに近い存在になったとしても、依然としてその主なフォロワーは声優ファンやアニメファンです。彼らの作法を無視したまま声優に砲撃を打ち続けたところで、いつまでも報じる側の期待通りとはいえない空砲のまま終わってしまうのではないかと私は思うのです。

 ◇プロフィル

 こあらい・りょう=埼玉県生まれ、明治大学情報コミュニケーション学部卒。明治大学大学院情報コミュニケーション研究科で、修士論文「ネットワークとしての〈アニメ〉」で修士学位を取得。ニコニコ生放送「岩崎夏海のハックルテレビ」などに出演する傍ら、毎週約100本(再放送含む)の全アニメを視聴して、全番組の感想をブログに掲載する活動を約5年前から継続中。「埼玉県アニメの聖地化プロジェクト会議」のアドバイザーなども務めており、現在は北海道大学大学院国際広報メディア・観光学院博士課程に在籍し、学術的な観点からアニメについて考察、研究している。

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