女優の沢尻エリカさんの主演映画「猫は抱くもの」(犬童一心監督)が23日に公開された。沢尻さん演じる元アイドルの沙織に、吉沢亮さん演じる猫の良男が恋をする……という物語。3人組音楽ユニット「水曜日のカンパネラ」のボーカルとして活動するコムアイさんが、峯田和伸さん(銀杏BOYZ)演じる画家「ゴッホ」の飼い猫、キイロ役で出演。水曜日のカンパネラとしても劇中歌「キイロのうた」などの音楽を担当している。今回が映画初出演となるコムアイさんに、役作りや劇中歌の制作秘話、主演の沢尻さんとのエピソードなどについて聞いた。
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――まず、2013年に水曜日のカンパネラを始動した経緯から教えてください。
ケンモチ(ヒデフミ)さんとDir.Fはもうプロジェクトを始めていて、私は後から加わったという感じなんですけど、知り合いの映像ディレクターのホームパーティーでDir.Fに初めて会って、「女の子(のボーカル)を一人、探してるんだけど」みたいな感じで誘われて入りました。そのときは「怪しいな」って思ったんですけど(笑い)、でもちょっとずつやり始めて面白いなと思うようになりました。曲を作ってレコーディングをして、それをどういうふうにリリースしていくか、みたいな打ち合わせを水曜日にやることが多かったので「水曜日」の名前が付いたんですけど、「カンパネラ」にはあんまりちゃんとした理由はないと思います。
――役者デビュー作は、16年に放送されたドラマ「シリーズ横溝正史短編集 金田一耕助登場!」の第3回「百日紅の下にて」(NHK BSプレミアム)だったそうですね。
でも、高校や大学のときに友達の自主制作(映像)をずっと手伝っていて、ちょっと(演技を)やったりしてました。このドラマは、相手役の嶋田久作さんがすごく好きな役者さんで、「絶対出たい!」みたいになって。嶋田さんのファンだったので、すごく楽しかったです。
――映画「猫は抱くもの」の出演のきっかけは、犬童一心監督からいただいたオファーのお手紙だったそうですが、今回のお話を聞いたときの気持ちは?
監督が犬童さんだったから一緒にやりたいなと思って。猫の映画って聞いて、猫が好きだから猫と遊べるかなと思ってオファーを受けたら、実際の猫とはシーンや撮影が別であんまり会えなかったんです。それに「私が猫(役)だった」と思って(笑い)。(監督からの手紙は)「猫の持つ柔らかい思考を表せるのはコムアイさんだけだと思う」みたいな感じの内容だったと思います。
――脚本を読んで、ご自身が演じるキイロという猫はどんなキャラクターだと思いましたか。
キイロは、人間と野生の世界を行き来したり、映画の中でも現実と現実じゃない世界をつなぐような役割をしていたり。なので、あんまり決めないタイプというか、流されながら生きていく、みたいな感じ。環境が変わったら、その都度、臨機応変みたいな猫の役なので、すごく理解できるというか、自分の生き方がすごく猫っぽい、キイロっぽいんだなと思いました。ライブでパフォーマンスしているときも、ステージの上にいると、自分から発してるというより、見ている人たちと、パフォーマンスしている内容や全然違う世界との橋渡しをしているような感覚があるんです。
――コムアイさん自身が、臨機応変に生きているキイロと具体的に似ているなと思う点は?
水曜日のカンパネラも歌を歌いたいと思って始めたわけじゃなくて、誘われて「やろうかあ」みたいな感じだったので。自分が表に出るっていうのも考えてなくて、ざっくりしているけど「何者かになりたい」みたいな。だからこれからも別に、「絶対にこれをやらないといけない」みたいな感じじゃなくて、「近いところに降ってきたもの、もらったチャンスは絶対キャッチしよう」って。一つのものに固執しているとそれを逃しちゃうから、その方が私にはもったいない。一番いいチャンスを逃さないでスキップしていく、みたいな感じの生き方ができたらいいなと思います。結構、人まかせです(笑い)。
――沢尻エリカさんと共演していかがでしたか。
沢尻さんとは楽屋でもいっぱい話をして、それ以来、よく一緒に遊びに行ったりもするし、火鍋を食べたりクラブに行ったり。タイにも行ったし。仲良くしてもらってます。
――今作では、水曜日のカンパネラとして劇伴の音楽も担当されています。「惑星の軌道が重なる……」といったフレーズが印象的な劇中歌「キイロのうた」はどんなイメージで作詞されたのでしょうか。
惑星の軌道があって、その二つが重なる時に人が出会っていて。例えば良男と沙織とか。どうして出会ったかというのはすごく説明しがたくて。別に考える必要もないと思うんですけど、ただ単に出会って、それと同じように、ただ単に別れるというのができた方がいいと思っていて。でも自然に別れるのってすごく難しい。恋人もそうだし、お金、名声、家……一度、手に入れたものを手放すのって、すごく難しい。けれど、沙織が追いかけてた夢を手放すというのも歌いたかったし、良男が「絶対に沙織と一緒じゃなきゃダメだ」と思って苦しんでいることから解放されるといいなと思ったり。そういったいろんな別れというか、デトックスみたいな、何かを手放すための歌みたいなイメージで書きました。
――ちなみに、コムアイさんご自身が手放したいと思っているものは?
昨年、結構、手放したと思ってるんですけど。周りからどう見られてるかっていうのを少し気にしなくなれたかなと思います。それは、社会で生きていたら、常に鏡のようにあって、本能的に気にしているところは絶対なくならないんだけど、意識的にそれを切るようにしていて、受け返しすぎない、みたいな。もともと、人と自分の境界が曖昧で、人の気をもらいやすいところがあったんですけど、人が慌てていたり、すごく混乱していても、関係なくいられるというか(笑い)。少し殻が硬くなってきたのかなって。
――演技を経験して感じることや、音楽活動に与える影響はありますか。
お芝居をやると、自分が使っていなかった自分が出る、みたいなのが面白いかも。自分の使える面を切り取ってる、みたいな感じがあって新鮮です。それは例えば、母性、子供っぽさ、セクシーさ、男っぽさ、優柔不断さ……いろんなキャラクターのことなんですけど。そういう感情や表情を歌やライブにもまた還元することができて、単純にできることが増えれば増えるほど楽しくなっていくから、お芝居はまだ始めたばかりだし、やっていったらもっと面白みが分かると思います。
<プロフィル>
1992年生まれ、神奈川県出身。「コムアイ」は「もともとはツイッターのアカウント名」で、本名に由来しているという。2013年にケンモチヒデフミさんとDir.Fさんとのユニット「水曜日のカンパネラ」を始動し、16年にミニアルバム「UMA」でメジャーデビュー。コムアイさんが初めてハマったポップカルチャーは「5、6歳のころ、好きでずっと見ていた」というアニメ専門チャンネル「カートゥーンネットワーク」。今月27日には、初出演映画「猫は抱くもの」の劇中歌「キイロのうた」を収録したミニアルバム「ガラパゴス」を水曜日のカンパネラとしてリリースする。
(インタビュー・文・撮影:水白京)
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