今年、創刊50周年のマンガ誌「ビッグコミック」(小学館)の関係者に、名作の生まれた裏側や同誌について聞く連載企画「ビッグに聞く」。第15回は、評論家で日本マンガ学会理事、京都精華大マンガ学部客員教授の呉智英(くれ・ともふさ)さんが登場。同誌の創刊でマンガがどのように変化していったかを聞いた。
ウナギノボリ
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「ビッグコミック」創刊は1968年。呉さんはその功績を「それまでアンダーグラウンドな存在に過ぎなかった貸本マンガの作家を表舞台に引っ張り出したことです。さいとう・たかを、白土三平、水木しげる……彼らを大資本の下で描かせた。新しい流れを作り、既存の壁を壊したんです。並み居る貸本作家の中には『なぜ僕を使ってくれないんだ?』と悔しい思いをした人もいたと思うけどね(笑い)」と説明する。
創刊当時は「コミック」という言葉になじみがない人も多かったという。「新しい言葉だから分からない人もいた。『ビッグコミック』が言葉を広めた。それまでは、カタカナの『マンガ』だったんです。当時関西を中心に隆盛していた貸本マンガの作家は対抗して『劇画』と言っていた」と振り返る。
「ビッグコミック」の創刊以降、大人向けのストーリーマンガが増え、マンガの表現がさらに多様化した。東京藝術大出身の一ノ関圭さん(1975年デビュー)が、第14回ビッグコミック賞に選ばれるなどさまざまな才能が活躍していく。「(一ノ関さんは)油絵科で、めちゃくちゃ絵がうまい。最高峰の美術大を出た油絵の専門家までマンガを描く。ここまでくると、もう社会的ニュースですよ」と語る。
同誌の創刊当時の編集長の小西湧之助さんは「マンガを大衆が楽しめる文学にする」という夢を持っていた。呉さんが「いつからか、文学の代わりを果たしているのは事実です」とも話すように、夢はかなったのかもしれない。この先、マンガはどのように進化していくのか……。
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