山口勝平:「名探偵コナン」はテレビアニメの枠超えた「不思議な作品」 “名探偵”役の楽しさも…

劇場版アニメ「名探偵コナン 紺青の拳」で工藤新一/怪盗キッドの声を演じる山口勝平さん
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劇場版アニメ「名探偵コナン 紺青の拳」で工藤新一/怪盗キッドの声を演じる山口勝平さん

 人気アニメ「名探偵コナン」の劇場版23作目で、声優の山口勝平さんが人気キャラクター・怪盗キッドと工藤新一の声を務める「名探偵コナン 紺青の拳(こんじょうのフィスト)」(永岡智佳監督)が12日から公開される。同作はシンガポールが舞台で、コナンの宿命のライバルである怪盗キッドがメインキャラクターとして登場。コナンと行動を共にするシーンも多く、キッドの活躍が目立つ作品だ。山口さんに怪盗キッドを演じることや「名探偵コナン」への思いなどについて聞いた。

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 ◇工藤新一と怪盗キッドの演じ分けは… 

 怪盗キッドは「名探偵コナン」ではコナンのライバルとして登場する人気キャラクターで、青山剛昌さんのマンガ「まじっく快斗」では主人公の高校生・黒羽快斗として描かれている。「名探偵コナン」の劇場版シリーズでは、1999年に公開された3作目「名探偵コナン 世紀末の魔術師(マジシャン)」が“デビュー”作だ。山口さんは「キッドを演じることになった時期は意外と早く、新一くんの声とほぼ同じぐらいの年数をやっているんです」と語る。ただ、当初とは演じ方も変化しているといい、「『世紀末の魔術師』がテレビで放送されたとき、見ていて『ずいぶん自分の中でも変わったな』と思いました」と明かす。

 「あの時点では、“黒羽快斗”的な要素は、まったく入っていなかったんです。ひらすらカッコよく、というか、表面上の部分が強く見えていたんです。ただ、ストーリーが進んでいって、コナンとの関わりも増えてきたことで、コナンに対してのしゃべり方ややり取りが、当時からは変わってきていると思います。(今は)コナンにある種の信頼を置いていますから。当時は、あくまでコナンのライバル的な立ち位置のキャラクターという感が強かったですね」。とはいえ、コナンとキッドの「探偵と怪盗」という前提は変わらない。「どうしても相いれない部分はあるので、『距離が近くなりすぎないように』ということは注意しておかないといけない部分ですね」と山口さんは話す。

 23作続いた人気シリーズで人気キャラを演じる難しさは、「あまり感じたことはないんです」と山口さん。今作でもキッドと工藤新一の2役を演じ分けるが、「キッドが新一に化けたりするので、テクニカルな部分で考えないといけない部分はあるんですが。そこも含めて、楽しみながらやれるようになっているかなと思います」と笑顔を見せる。演じ分けについては、「同じ部分はどうしても出ちゃうと思うんですが」としつつ、「劇中の印象的な部分で、キッドっぽさ、新一っぽさをポイントで出しておけば、なんとなくキャラクター分けになる。自分の中の感覚で演じ分けしています」と明かす。

 ◇工藤新一は「不思議な立ち位置」のキャラ?

 今作ではメインキャラとしてキッドが大活躍。コナンと行動を共にする姿や、傷ついた姿など、さまざまな表情のキッドが堪能できる。山口さんは「今作でも、あのいでたちでキッドが登場するのはやっぱりカッコいいなと思います」と声を弾ませ、「そこをやらせていただいているのは、すごくありがたいことだなと思いますね」と喜びを語る。

 長く怪盗キッドと工藤新一役を務めてきた山口さんにとって「名探偵コナン」とは、どのような存在なのか。山口さんは「当初は、こんなに長く続くことは予想していなかった」としみじみ。「名探偵コナンという作品自体が不思議というか……ファミリー向け、子供向けで長く定着する作品はありますが、連続ものの形で長く続けられる作品って珍しいかなと思います。テレビアニメという枠を超えちゃっているのかな、という気がします。それだけ長く応援してもらえる作品というのは、改めて考えてみるとすごいことですよね」と語る。

 演じる工藤新一については、「不思議な立ち位置にあるキャラクター」と表現する。「主人公でもあるけど、出番はすごく少ないですからね。劇場版が23作、テレビアニメも放送開始から25年に近づいているわけですが、自分自身の出番はどれぐらいあるだろうと考えてみたら、全部合わせても、たぶん2年分もないんじゃないかな、というぐらいのものなので、どっぷりと関わっているわけではないんです。でも立ち位置的には主役というところもあって、つかず離れず、というか。他の作品との距離間とは、また違う作品ですね」と話す。

 ◇「作品とキャラに恵まれた」声優人生 “名探偵役”の楽しさも

 山口さんといえば、アニメ「DEATH NOTE(デスノート)」でL/竜崎、劇場版アニメ「金田一少年の事件簿」で金田一一(きんだいち・はじめ)の声を務めるなど、工藤新一以外にも“名探偵”役を演じている。山口さんは「意外とやらせてもらってますね」と笑い、「探偵役は、登場人物を集めて推理を披露していく。そこが一番の見せ場だし、やっていて気持ちがいいところ。役者としては“おいしい”部分であり、楽しい部分。だから、探偵役は楽しいですね」。ただ、「新一だと、出てきて推理するとものすごい分量をしゃべることになるので(笑い)、大変ですけどね」と笑いながら苦労ものぞかせる。

 これまで「犬夜叉」の犬夜叉役や「らんま1/2」の早乙女乱馬役など、長年にわたって数々の人気キャラクターを演じてきた山口さん。改めて声優としてのキャリアを振り返ってもらうと「あっという間な気もします。出演したのがつい最近のことのように思っていたのが、実は10年前の作品だったり。自分が体感しているより、ずいぶん早いんだなと思いました」と感慨深い表情を浮かべる。「でも、すごく恵まれていると思いますね。声優としてデビューしてから、作品とキャラクターに恵まれ続けた30年だったかなと思います」とほほ笑む。

 今は“おじいちゃん役”に興味があるといい、「(声優は)長く、いろんな役がやれますから。そういう意味では、声優の可能性ってすごくたくさんあるんだなって思います。これからもいろんな役をやりたいですね。新しいキャラクターと出会うのは刺激になりますし、楽しいです」と意欲を示す。改めて今作への手応えを聞くと、「みんなすごく楽しみにしてくれているんだな、とネットの前評判などを見ていても感じます。満足してもらえるんじゃないかなと思います」と語ってくれた。

 「名探偵コナン」は、小学生探偵の江戸川コナンが次々と起こる難事件を解決する人気マンガで、1994年から青山剛昌さんがマンガ誌「週刊少年サンデー」(小学館)で連載している。96年からテレビアニメが放送され、97年からは劇場版アニメも製作されている。今作は19世紀末に海底に沈んだとされる世界最大の宝石ブルーサファイア“紺青の拳”を巡り、コナンと怪盗キッドが、リゾートホテル「マリーナベイ・サンズ」近郊で起きた殺人事件やシンガポールの巨大な陰謀に巻き込まれていく……というストーリー。

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