大ヒットドラマ「半沢直樹」や映画「そして父になる」(共に2013年)など多くの話題作に出演し、そのピュアなまなざしで“天才子役”ともいわれる二宮慶多さん(13)が主人公の一人を演じた映画「ウィーアーリトルゾンビーズ」が、6月14日に公開された。サンダンス映画祭のショートフィルム部門でグランプリ受賞歴のある長久允監督の長編デビュー作。両親を突然事故で亡くすも全く泣けなかったヒカリ(二宮さん)が、火葬場で出会ったイシ、タケムラ、イクコという仲間と共に、音楽を通して成長していく姿を独自の映像表現で描いている。このほど二宮さんと長久監督がMANTAN編集部を来訪。今作の二宮さんの演技について、また、将来の夢などを聞いた。
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映画は、両親を亡くしても泣けなかったヒカリ、イシ、タケムラ、イクコというゾンビのように感情を失ったローティーンの4人は火葬場で出会い、自分たちの心を取り戻すため、もう誰もいなくなってしまったそれぞれの家を巡り始める。冒険の途中でたどり着いたゴミ捨て場で「LITTLE ZOMBIES(リトルゾンビーズ)」というバンドを結成。そこで撮影した映像が話題を集め、社会現象を巻き起こすヒットとなるが、4人は思いがけない運命に翻弄(ほんろう)されていく……というストーリー。
イシ役はドラマ「嘘の戦争」(2017年)に出演した水野哲志さん、タケムラ役は奥村門土さん、イクコ役は「クソ野郎と美しき世界」(2018年)で香取慎吾さんと共演した中島セナさん。そのほか佐々木蔵之介さん、永瀬正敏さん、菊地凛子さん、池松壮亮さん、村上淳さんらが脇を固めている。今年2月に開催された第69回ベルリン国際映画祭のジェネレーション(14plus)部門で日本映画で初となるスペシャル・メンションを獲得した。
「ゾンビは出ません!」と言いながら取材部屋に入ってきた長久監督は、今作を作ろうと思ったきっかけを「若い頃って追い詰められたりしたら視野が狭くなってしまうことがあると思うんですけど、それを救えたり、何かマインドを変えるきっかけが作れないかなと思って。絶望的な状況に置かれてもユーモアを持てたり、客観性を持って、ある意味、冷めていたりすることで逃れられるティーンエージャーの話が作れないかなと思ったんです」と語る。
二宮さんは今回の役どころについて、「両親が死んでも泣けないという役。いままでは感情を表に出す役が多かったんですけど、今回は無感情の役だったので、難しかったです」と話す。演じたヒカリについて「ヒカリ君とは似てないかなと思います。僕はやっぱり両親が死んだら悲しむだろうし。でも、みんなを連れて冒険に出るところは僕にも共感できる部分です」と話す。
長久監督は、ローティーンのキャストについて「思春期に差し掛かる前の方が偏見とか常識がなく、世界とか物事をフラットに見られるんじゃないかなと思って。実際に演出してみると、素直で言葉や感情に対して真っすぐに演じてもらえて、すごくしっくりきました」と評する。二宮さんについては「慶多くんは微調整が群を抜いてうまくできるので、そういう意味では普通の13歳とは違う。技術として(求められる演技に)到達できているという稀有(けう)な存在かなと思っています。でも、やっぱりその奥にヒカリに近いナイーブさを感じられたので、この役をお願いできると思いました」と語る。
それを聞いた二宮さんは「うれしいです」と笑顔で、「すごく現場が明るくて、監督は演技で聞きたいことがあったら相談に乗ってくれるし、ヒカリ役を演じるときのしゃべり方だったり、目線などを相談しました」と語る。
二宮さんは2006年8月13日生まれ、愛媛県出身の中学1年生。学校ではバスケットボール部に所属し、今、一番楽しい時間は「部活です。バスケの経験はないんですけど、周りの人がやっていて、友達もたくさんいるので入ろうかなと思いました。背が高くなりたい」と目を輝かせる。
二宮さんに「ヒカリのように反抗期真っただ中?」と尋ねると、自分では分からないと困り顔で、同席していた母に「どうかな?」と助けを求めた。すると母は「真っただ中だと思います」と即答。二宮さんは「そうなっているみたいです……」と自覚はないようだった。
学校ではゲーム「フォートナイト」がはやっているといい、「友達とよくやります。あと『ゼルダの伝説』もよくやっています」と明かす。そのほかマンガなら「ギャグマンガ日和」、小説は「図書館戦争」や「英国情報局秘密組織CHERUB(チェラブ)」などをよく読んでいるという。
劇中では歌を歌っているが、二宮さん自身はギターを始めたといい、音楽にも興味津々の様子。クイーンやビートルズなど少し前の洋楽を聴いていると言い、「音楽では福山雅治さんが理想です。ギターもできて、歌もできて、そういう人になりたい」と語る。俳優としては「世界で活躍したい。『アベンジャーズ』とかも大好きなので」と大志を抱いていた。
最後に、2人にこの映画をどんな人に見てもらいたいかと尋ねると、長久監督は「この映画を作ったきっかけでもある、悩みがある子に機能してもらえるとうれしい」と話し、二宮さんは「一つ一つのシーンがメッセージになっています。幅広い人たちに響くと思います」と語った。
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