アイドルグループ「乃木坂46」のメンバーとして活躍する齋藤飛鳥さん、与田祐希さんが、同グループの活動を追った7月5日公開のドキュメンタリー映画「いつのまにか、ここにいる Documentary of 乃木坂46」(岩下力監督)についてインタビューに応じた。今作では、メンバーがグループについて、卒業するメンバー、そして自分自身について、時に涙を見せながらさまざまな思いを語っている。齋藤さんと与田さんに、“卒業”に対する思いや「乃木坂46」でアイドルとして活動する原動力、改めて感じた同グループの魅力などを聞いた。
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映画は、前作「悲しみの忘れ方 Documentary of 乃木坂 46」(2015年公開)から4年ぶりとなる「乃木坂46」のドキュメンタリー映画で、グループの“エース”だった西野七瀬さんの卒業をきっかけに、自分自身のあり方を見つめ直すメンバーたちの葛藤と成長が映し出されている。
完成作を見た齋藤さんが、真っ先に感じたのは「私って、メンバーのことをあまり知らなかったんだな」という思いだったという。「他のメンバーが卒業について話していても、私は別にそういう話はしていないですし……。普段から、そういうことに対してあまり深く考えていなかったので、みんなの話を聞いて『(みんなが)ちょっと先を歩いているな』と思いました」と齋藤さん。現実をシビアに見つめている他のメンバーの姿を知り「私ももっと考えなきゃいけないのかな、と思いました」と口にする。
メンバーとの関わりや自身のことについて、少しずつ、思いを吐露するようになる姿が映画に映し出されていた齋藤さん。岩下監督について「『こう思っているだろう』と予測しながら話してくださっていても、押し付ける感じがなく、こちらも自然に言葉が出てくる」と説明し、「いつもインタビューのときは、どこまで話していいのか、言葉を変えた方がいいのか……と考えるけど、今回はあまり考えずに自然と会話ができました」と語る。また、「インタビューでしゃべるのが得意ではない」という与田さんも、「(岩下監督は)言葉が出るまで待ってくださったり、意図をくみ取ってくださったので本音が話しやすかったし、リラックスして話すことができました」と明かす。
映画の中で、たびたび涙を見せていた与田さんは「私、すっごい泣いているなって……。こんなに泣いていたんだとびっくりしました」と笑顔で語る。4年前の前作の公開時は、まだグループに加入する前だった与田さんは「『悲しみの忘れ方』を何も知らない状態で見て、すごく感動して乃木坂というグループが好きになったので、今回もそのときの気持ちを思い出しました」と振り返る。
映画では齋藤さん、与田さんが地元に帰る姿に密着したシーンがある。特に、齋藤さんが自らの意思で成人式や同窓会に出席するシーンは長い時間、カメラが回されており、大きな見どころになっている。齋藤さんは「学校というものが得意ではなかったし、乃木坂46に加入してからは実家にも帰らず、地元の友達もいない状態だったけど、私は『それでいいや』と思っていたんです。ただ、なんとなくどこかでモヤモヤはしていて……ちゃんと区切りをつけたい気持ちがありました」と胸の内を明かし、「帰ってみて、地元での自分や当時の周りの環境もそんなに悪くなかったのかもな、と思えた。それは今回、帰らないと感じなかったことです」と語る。
映画には卒業への思いを口にするメンバーの姿も映し出されている。1期生としてこれまでグループをけん引してきた齋藤さん、3期生として新たな風を吹き込んできた与田さんは、卒業についてどのような思いを抱いているのだろうか。
「不思議だな、とは思います。男性アイドルでは長く活動している方もいるけど、女性で30、40代までアイドルって呼ばれている方はあまりいない。その文化の違いは、不思議だなと思います」と自身の見解を語る齋藤さん。さらに、「今はすごくグループの変化が大きいから、戸惑っているファンの方もいると実感していて……。そういう方たちを目の当たりにすると『どうやったら今の乃木坂も受け入れてもらえるのかな、難しいな』と感じることが多いんです」と現状の課題を口にしつつ、「でも、過去を否定せずに、ずっと昔のころのことを今も言ってくださる方がいるということは、現象としては美しいことだな、とも思うんです」と続ける。
映画の中では自身の卒業について語ることはなかった齋藤さんは、「自分のことになると分からないですけど」と前置きしつつ、「でも卒業ということ自体には、私はそれほどネガティブなイメージはないかもしれない」と打ち明ける。
一方、「七瀬さんの卒業コンサートのとき、寂しいという気持ちが大きくて滝のように泣いていた」という与田さん。だが、「卒業されていく先輩たちは前向きというか、キラキラしているんです。そういう姿を見て、ずっと悲しい、悲しいと言っているのも違うんだな、これから頑張らなきゃいけないなって思えて。(卒業した先輩たちに)安心してもらえるように頑張ろう、という気持ちもだんだん出てきたりしました」と前を向き、「自分の卒業はあまり考えたことないけど、もし卒業するときが来たら、先輩たちみたいな、あんな姿で卒業できるように頑張らなきゃなって思いました」と気持ちの強さものぞかせる。
“卒業”という道を選んだメンバーを見送りながら、「乃木坂46」としてアイドルを続けていく、その原動力は何だろうか。改めて齋藤さんに聞いてみると、「何だろう……」と熟考したのち、「メンバーといるのが楽しいとか、居心地がいいとか、スタッフさんが優しいとか、周りの人のお陰、ということはあるんですけど……。自分の中では、乃木坂に『いさせてもらっている』という認識の方が強いから、何かを励みに頑張っているというよりは『ありがとうございます、頑張らせていただきます』という気持ちでいます」と率直な思いを語る。
与田さんにも同じ質問をぶつけてみると、乃木坂46への思いとファンやスタッフへの恩返しを挙げる。「私が乃木坂46に入ったきっかけは、オーディションがあると友達づたいに知って、一緒に受けて……と、結構ふわっとしているんです。でも、3期生になると決まったとき、『やるならちゃんとやろう』と思ったんです。ただこんなに大変なんだ、と現実を目の当たりにすることが多くて、そのたびに先輩、同期、スタッフさん、ファンの方……いろんな方に助けられて今、活動できている。これまで助けてもらってばかりだったので『何か返していかなきゃ』という気持ちと『乃木坂が好きだ』という気持ち、ですね」と話す。
最後に、改めて乃木坂46の魅力を聞いてみると、「仲の良さや温かい空気感」と与田さん。「後輩なので最初のころは気を使ったりドキドキしていたけど、それがいい意味でなくなっていくぐらい、温かくて居心地のいい場所になっていったんです。それは、先輩やスタッフさんが作り上げてくれた空気感のお陰だと思っています」。
齋藤さんもやはりメンバーの温かさを挙げ、「単純に、すごくいい人たちがいるなと(笑い)。映画を見ても、普段からも、最近はより強くそう思います。すごく温かいところや、いやらしくない優しさをちゃんと持っている人がすごく多いな、と思いますね」とほほ笑みながらグループへの思いを語った。
(取材・文:河鰭悠太郎、撮影:三澤威紀)
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