映画「いなくなれ、群青」(柳明菜監督、9月6日公開)で共演した俳優の横浜流星さんと飯豊まりえさん。映画は謎だらけの島・階段島を舞台に、悲観的な主人公・七草(横浜さん)と七草の幼なじみで理想主義者の真辺由宇(飯豊さん)たちが島にまつわる謎を解き明かそうとする姿を描いた青春ファンタジーだ。10代のころは雑誌の仕事で共演し、のちに同じ高校に通うなど共通点の多い横浜さんと飯豊さんに、改めて共演した印象や役への思いを聞くとともに、映画にドラマにと話題作への出演が相次ぐ2人に、現在の活躍への思いを聞いた。
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原作は河野裕さんの同名小説(新潮文庫nex)で、第8回「大学読書人大賞」も受賞している。映画は、ミステリアスな雰囲気の七草と凛々しい少女・真辺が奇妙な島・階段島で再会。真辺は島から出るために、七草ら周囲を巻き込みながら島にまつわる謎を解き明かそうとする……というストーリー。
雑誌では10代のころに共演経験があったという横浜さんと飯豊さん。飯豊さんは「実際に知っているから、不思議な感覚がありましたね」と共演の感想を明かし「中学生の時期に雑誌のお仕事でよく会っていて、プライベートでも友達みんな交えて仲が良かったんです。『りゅうせいくん』っていう子が(横浜さん含め)2人いて、私は横浜さんのことを『横浜』って呼び捨てにしていたんです(笑い)」と仲の良さをうかがわせるエピソードを披露。横浜さんも「ある日いきなり『横浜』と(笑い)」と当時を思い出し苦笑いでうなずく。
今作では感情的な真辺が、感情を抑え込む七草を振り回すが、異なった価値観を持ちながらも2人はどこか信頼し合っているようにもみえる。実際に、飯豊さんはそうした信頼感を横浜さんにも抱いていたようで、「ボールを投げたら全部打ってくれる、という感じ。壁みたいでした(笑い)。ポーンと当てても、全部きれいに跳ね返ってくる。お芝居しやすかったです」。“幼なじみ”という設定が2人の実際の関係性に合致していたことも大きかったようで、横浜さんは「境遇がちょっと七草、真辺と重なるところがあったので、演じやすかったです」と振り返る。
悲観主義の七草と、理想主義の真辺。それぞれ、演じた役柄と自分自身との間にどのような共通点やギャップがあったのか。役が自分自身に近かった、と明かすのは飯豊さん。「どちらかというと私もこだわりが強いので、真辺とのギャップはなかったですね。七草と向き合う方が難しかったです」と苦笑いで語る。同じく、「どちらの要素も持っていますけど、近いのは七草」と役への共感を示す横浜さん。「たとえば感情をあまり表に出さないところとか。自分も抑え込む方なので、似ているなと思いましたし、七草ほどではないけど悲観主義なところも共感できる部分は多かったです」と語る。
ただ、真辺から発せられる感情やエネルギーを受け止める“受け”の芝居は難しさもあったという。「すごく難しかったです。感情を抑え込む七草は、相手から発信されるお芝居を素直に返せず、一回心の中に落とし込んでから話さないといけなかったので。真辺が感情的になればなるほど、どうしても素直に返したくなってしまうので、こらえるのが大変でした」と苦労を明かす。
そんな横浜さんの七草を、最も近くで見ていた飯豊さんは「空気感がこの作品にとっても合っている」と話す。今作のメガホンを取った柳監督は、別のインタビューで横浜さんについて「『この方は、どれだけの顔があるのか』と思った」と横浜さんの持つ多面性に触れ「七草にぴったりだなと思いました」と語っていたが、飯豊さんも「本当にそう思います」とうなずき、「横浜さんが持っている真っすぐさとミステリアスさが、作品とすごくリンクしていて……。それでこの世界観がぐっと引き締まっているのを感じています」と絶賛する。
横浜さんといえば、今作以外でも「愛唄 -約束のナクヒト-」「チア男子!!」など映画で主演作が続き、連続ドラマでも「初めて恋をした日に読む話」「あなたの番です-反撃編-」など話題作に立て続けに出演。さまざまな役を演じられる“多面性”と空手で培ったであろう身体能力の高さも武器に現在大活躍中だ。飯豊さんも今作公開後は映画「惡の華」の公開が控え、ドラマ「サイン―法医学者 柚木貴志の事件―」にも出演中と引っ張りだこ。劇場版アニメ「劇場版シティーハンター <新宿プライベート・アイズ>」や「名探偵ピカチュウ」では堂々とした声優ぶりをみせるなど新境地も開拓している。
そんな2人に現在の活躍への思いを改めて聞くと、実は今作の撮影前、意外にもインスタグラムのフォロワー数の伸びに悩んでいたこともあった、という。「(横浜さんが)『どうしたらインスタグラムのフォロワーが増えるの?』と私に言ってきたんです。それで『大丈夫だよ、まだみんなにかっこよさが見えてないんだよ』と言っていたら、そのあとボーン! といったからね」と明かす飯豊さん。今ではフォロワー100万人を超える横浜さんだが、「すごく相談していた(笑い)。撮影中、まだ10万人ぐらいしかフォロワーがいなかったんです。それで2人で『大丈夫かな……』って(笑い)」と楽しそうに振り返る。
ただ、そうした大ブレークには“怖さ”も感じていると横浜さんは言う。「自分は何にも変わっていないから、怖いですよね。自分は変わっていないけど、取り巻く環境が変わっていって……。絶対変わりたくないという思いもあったから。(熱気は)一時的なものだと思っていますし」と突然の変化への戸惑いと心情を打ち明け、「だからこそ、変わらずに『ちゃんと地に足をつけてやるべきことをやろう』と、今もずっと思っています」と気を引き締める。
そんな絶好調のキャリアの中で挑んだ本作。ここで2人が得たものとは、なんだったのだろうか。最後にそう問われると、「監督にずっと『目でお芝居するのではなく、心に落とし込んでお芝居してみて』と言われていて。もう一段階(上の)、役との向き合い方を学びました」と充実の撮影だったことをうかがわせる飯豊さん。横浜さんも「この作品を通して、自分と向き合う時間をすごく大切にするようになりました」とほほ笑み、自身に訪れた変化を語ってくれた。
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