梶裕貴:「PSYCHO-PASS 3」慎導灼への思い 「芝居だけで勝負できる役」 信念に共感

アニメ「PSYCHO-PASS サイコパス 3」の一場面 (C)サイコパス製作委員会
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アニメ「PSYCHO-PASS サイコパス 3」の一場面 (C)サイコパス製作委員会

 人気アニメ「PSYCHO-PASS サイコパス」のテレビアニメ第3期「PSYCHO-PASS サイコパス 3」で、主人公・慎導灼(しんどう・あらた)の声優を務める梶裕貴さん。梶さんは、灼を「自分の声が出そうな顔をしているな……という親近感から始まって、だからこそ声を作るということを考えずに、お芝居だけで勝負させてもらえる役柄」「自分が思っている信念を自信を持って伝えるというところに、すごく共感できる」と語る。「PSYCHO-PASS サイコパス」シリーズへの思いや、演じる上でのこだわりを聞いた。

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 ◇「PSYCHO-PASS」の魅力 「人が人らしく生きるために、どう動くのか」

 「PSYCHO-PASS サイコパス」は、人の心理状態などを数値化して判断できるようになった近未来の高度情報化社会を舞台に、厚生省公安局の刑事の活躍を描く近未来SFアニメ。テレビアニメ第1期が2012年10月~2013年3月、第2期が2014年10~12月に放送され、劇場版が2015年1月に公開。今年、新作劇場版アニメ「PSYCHO-PASS サイコパス Sinners of the System(SS)」3部作が公開された。

 巨大監視ネットワーク・シビュラシステムの導入後、日本は海外との交流を断ち、長く事実上の鎖国状態だったが、テレビアニメ第3期は、2120年、開国後の日本が舞台。慎導灼と炯(けい)・ミハイル・イグナトフという厚生省公安局刑事課一係に配属された2人の新人監視官が主人公だ。

 梶さんは、以前から同シリーズのファン。第3期について「鎖国をやめた日本に移民が入ってきて、同時に文化や宗教も入ってきた。絡み合う人間関係が変わると、こうも印象が変わるんだなと感じています」と語る。

 梶さんは同作のゲーム版で声優を務めた。「役者として、また一視聴者として、個人的に大好きな空気感の作品で、ゲーム収録後も『もっと、あの世界の中でお芝居がしたい』と思い続けてきた」と作品への思いを明かす。

 「今、僕らが生きている社会にも通じることが詰まっている。そこで問われるテーマには、決して答えがないというか。人によって違っていいことだけれど、その違いが新たな争いを生む可能性がある、ということを描いている。シビュラに統制されてはいるものの、問題に立ち向かっていくのは、結局一人一人の人間であって、その人間たちがどう考えて、ぶつかって、悩んで、自分たちなりの答えを出していくのか。言っていること自体は実はシンプルで、『人が人らしく生きるために、どう動くのか』だと思うんです」

 ◇慎導灼の人間らしさ 「演じていて楽しい」

 梶さんの演じる慎導灼は、特A級メンタリストで、高度な共感によって追跡対象者になり切るメンタルトレースという特技を持つ。普段は明るくひょうひょうとし、ちゃめっ気を見せるシーンもある。

 灼について「表面的なことをいえば、自分の声が出そうな顔をしているなという親近感から始まった」と笑顔で話し、「だからこそ特に声を作るということを考えずに、お芝居だけで勝負させてもらえる役柄」と表現する。「人柄としても、かなり共感できる人間」とも。

 第3話で、灼の信念が垣間見えるシーンがある。灼は、一係の執行官の廿六木天馬(とどろき・てんま)が、ドミネーターで犯罪係数がオーバーした相手を撃とうとするのを制止し、「何で止めた? ドミネーターは執行しろと言っていたろうが」と言われる。灼は「それを決めるのは人間であるべきです。そのためにドミネーターには引き金が付いているんですから」という。梶さんはこのシーンに思い入れが強いと語る。

 「灼は監視官であるべき人だな、と。葛藤やはがゆい思いといったものもちゃんと持っている部分も含めて、とても人間らしくて、演じていて楽しいです。格好つけているわけでもなければ、可愛い子ぶっているわけでもなくて、自分が思っている信念を自信を持って伝えられる人間性には、すごく共感できます」

 演じる上では「灼はひょうひょうとして、どこかフワフワとしているけれど、革新的なことをズバリという。その時、その言葉に説得力がないと、きっと周りの人も付いてこないだろうなと思うので、そこはかなり意識しました」と話す。

 さらに灼の刑事としての魅力を語る。「人と人なので、この人だったら言えちゃうなと思わせたら勝ちでしょう。そこには実際の言動による重みがないといけないと思いますけど、灼は全部事前に準備した上で、直感やアイデアを交ぜて、やりくりしている人だと思う。そこも既にメンタリストというか、人心掌握術なのかもしれないですけど、そうした技術うんぬんの前に、灼はそういう人なのかなと思いたいです」

 ◇“犯人不在”の展開 「最後の最後に誰と対峙(たいじ)するのか…」

 第3期は、狡噛慎也(こうがみ・しんや)や宜野座伸元(ぎのざ・のぶちか)ら、これまでのシリーズで活躍してきた人気キャラクターの登場も話題だ。梶さんは、灼が狡噛や宜野座と絡むシーンを「僕も作品の一ファンなので、『あのキャラが登場した!』『会話しちゃった!』みたいな、そんな気持ちもあったりします(笑い)。もちろんお芝居する時は違いますけど」と振り返る。

 「この人たちが築いてきた時代、そこで変わったもの、得たもの、失ったものというのはとても大きくて、でもそれがあったからこそ、今の『PSYCHO-PASS サイコパス 3』の世界観につながるドラマになっている。改めて圧倒的な存在感を持っているメンバーであり、『この人たちが来たら安心できるな』という感覚がありました」

 そうした礎を築いてきたキャラクターの登場がありつつ、公安局刑事課課長の霜月美佳率いる第3期の一係も魅力的に描かれている。

 「視聴者の皆さんの印象では、第2期、劇場版のSSを通して霜月さんが成長した、しっかりしてきたんだなという印象があると思います。霜月さんが統括する一係は、新しい形だなと。回を追うごとに入江(一途)や廿六木も魅力が出てきて、灼や炯との絆も芽生えている。もっともっと彼らの日常も見てみたいなという思いはすごくあります。もちろん僕は一視聴者として最初の一係も大好きですけど、今の霜月課長の一係もすごく好きですね」

 第3期も終盤を迎えている。ビフロストという謎の組織、狐の存在と謎が多く、どの事件も明確な黒幕が分からないままという展開だ。主人公の灼と炯にもまだ、明かされていない部分がある。

 梶さんは「分かりやすく『この人が犯人で、その人を逮捕したら終わりです』という感じじゃない。もしかしたら、視聴者の皆さんは達成感という部分で、まだ物足りないのかもしれない。だからこそ、ストーリーがつながって、最後の最後に誰と対峙(たいじ)するのかというところまで、集中してご覧いただきたいです」と力を込めた。

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