ドラゴンボールDAIMA
第8話 タマガミ
12月2日(月)放送分
家族を鬼に殺された主人公と、凶暴な鬼に変異した妹の姿を描いて人気のマンガ「鬼滅の刃」。テレビアニメ化され、その後ニュース番組などでも取り上げられ、原作マンガが「ONE PIECE」に次ぐ年間販売を記録するなど大ヒットしているが、テレビアニメ放送時も、放送開始直後ではなく中盤以降から話題になり始め、放送終了後にブレークするなど、従来のヒット作とは異なる流れをたどっている。そこには、「鬼滅の刃」ならではの要因があるようだ。アニメコラムニストの小新井涼さんが独自の視点で分析する。
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「鬼滅の刃」は、「週刊少年ジャンプ」(集英社)で連載中の吾峠呼世晴(ごとうげ・こよはる)さんによるマンガ原作の作品で、人を喰(く)う鬼がすむ大正時代の日本を舞台に、鬼に家族を殺された主人公が、鬼にされた妹を人間に戻すため“鬼狩り”の道に進む……、というお話です。
本作は今年4月のアニメ化をきっかけに人気が高まり、年末にはYahoo!検索大賞、Twitterトレンド大賞で共にアニメ部門賞を獲得、紅白歌合戦ではLiSAさんがアニメの主題歌である「紅蓮華」を披露することが発表されて話題になるなど、すっかり2019年の顔と呼べる作品となりました。
最近では報道番組など各種メディアでその人気ぶりが取り上げられることも増え、そのブームの要因として“女性人気の高さ”にも注目が集まっているようです。しかし、アニメ放送終了から3カ月を過ぎた今も衰えるどころか、さらに過熱する本作のこの盛り上がり方は、果たして本当に女性人気の高さだけが原因なのでしょうか。
アニメ化前から既に一定の根強い人気があった本作は、アニメ放送前の劇場先行上映や本編放送開始直後からも、好評の声は散見されていました。しかし、本作が今に至る盛り上がりの兆候を徐々に見せ始めたのは、春クール(4~6月)が終わる間際のアニメ11話以降、主要キャラクターたちが続々と出そろってくるタイミングからだったと記憶しています。彼らの参戦や活躍と共に、作品の評判は4月時点ではまだアニメを見ていなかった人たちにまで広がり、夏クール(7~9月)中に遅れてアニメや原作を追い始める人が増えていったのです。
その後、人気キャラクターの増加に伴いグッズ展開も活発になり、コスプレーヤーやファン創作も急増し、2.5次元化も発表……といった一連の流れから、確かにこの時点では本作が女性人気が特に高い、ジャンプの歴代作品のような盛り上がり方をしていくと予想した人も少なくなかったと思います。今になって思うと、アニメ中盤以降生じたこの女性人気は、今に至るブレークの“起爆剤”であったのかもしれません。
しかし本作のブームが他の女性人気作品と異なっているのは、アニメ放送終了後3カ月を過ぎた現在、女性に限らず年齢や性別、ひいてはアニメ・マンガファンであるか否かに関係ない層にまで、本作の人気が広がっている点です。
そのきっかけとしては、上記のタイミングで急増した女性ファン層にとって、本作が普段は“布教”をしないような相手にもオススメしやすい作品であったことが大きかったのではないでしょうか。本作は、魅力的なキャラクターやその関係性、豪華なキャスト陣など、確かに女性人気が高くなりそうな要素もたくさん持ってはいますが、そういった要素が刺さらない層でも別の角度から夢中になれる、家族愛や兄妹愛、泥臭い修行や成長、迫力の剣戟や時に無慈悲な命のやりとりといった、万人受けしそうな魅力も併せ持っています。
そのため、盛り上がりの火付け役となった女性層も、年齢性別、アニメ・マンガ好きに関係なく周りにオススメしやすく、またオススメされた側も作品に手を出しやすかったのでしょう。実際に現在、娘にオススメされたという親や仕事の上司など、「この人も!?」と驚く意外な人までが年齢性別関係なく本作を知っていたり、“布教”されていたりと、他の女性人気が高い作品たちにはあまり見られない人気の広がり方を見せているのです。
女性人気が特に高い作品は、女性の“布教力”の高さもあってか、そのかいわいで爆発的なムーブメントが起きたり、その盛り上がりに注目が集まったりすることは多いものの、それ以外の層にまで人気が広がるのはかなり珍しいことです。例えると、同じ野球好きであっても巨人ファンが阪神ファンにわざわざ巨人の魅力を“布教”しないように、たとえ同じアニメ好きでも“絶対刺さらないし、下手したらおとしめられるかも”という相手に、大事な作品をわざわざ“布教”することもないという心境もあるのかと思います。
しかし今回の「鬼滅の刃」に関しては、例えるなら同じ野球好きが野球に興味を持ってくれそうな人を相手にしたとき、“興味を持ってくれそうな要素”をとっかかりにして野球の面白さを布教する方に近かったのでしょう。確かに女性のツボを突く要素もたくさんあるけれど、少しでも興味を示してくれたならきっと楽しんでもらえるだろう要素、つまり普遍的な「とっかかり」の要素も同じくらいあったために、本作は年齢性別関係なく“布教”されていき、その人気も広がっていったのだと思うのです。
本作が、もはやアニメ・マンガファンであるか否かにかかわらず話題となり、同じジャンプの“お化けマンガ”である「ONE PIECE」に次ぐ累計年間売り上げとなるほどのブームとなったのは、女性人気をきっかけに、そうした珍しい作品の広がり方をしたからなのだと思います。
こあらい・りょう 埼玉県生まれ、明治大学情報コミュニケーション学部卒。明治大学大学院情報コミュニケーション研究科で、修士論文「ネットワークとしての〈アニメ〉」で修士学位を取得。ニコニコ生放送「岩崎夏海のハックルテレビ」などに出演する傍ら、毎週約100本(再放送含む)の全アニメを視聴して、全番組の感想をブログに掲載する活動を約5年前から継続中。「埼玉県アニメの聖地化プロジェクト会議」のアドバイザーなども務めており、現在は北海道大学大学院国際広報メディア・観光学院博士課程に在籍し、学術的な観点からアニメについて考察、研究している。
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2024年12月04日 02:00時点
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