明坂聡美:アニメ「Vivy」 AIだからこそ繊細な演技を 「一言一句を大切に」

「Vivy - Fluorite Eye’s Song-」に出演する明坂聡美さん
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「Vivy - Fluorite Eye’s Song-」に出演する明坂聡美さん

 「甲鉄城のカバネリ」「進撃の巨人」などのWIT STUDIOが制作するオリジナルテレビアニメ「Vivy - Fluorite Eye’s Song-(ヴィヴィ-フローライトアイズソング-)」。作品の舞台は、人と人型AIが共に暮らす世界で、AIは人間と見まがうような姿で、心があるかのような行動を見せる場面も多い。5、6話では、人間と結婚した看護AI・グレイスが登場し、人間とAIの間に恋愛感情が生まれた末の悲劇が描かれ、SNSでは「涙が止まらない」「切ない」と話題になった。グレイスの声優を務める明坂聡美さんは、看護AIゆえの「慈愛、献身さ」を大事し、「プログラミングされたAIだからこそ、一言一句を大切にしました」と語る。演技のこだわり、作品の魅力を聞いた。

 ◇冴木とグレイスの結末にメンタルブレーク 心にどしんと来る物語

 「Vivy」は、人気ライトノベル「Re:ゼロから始める異世界生活(リゼロ)」の長月達平さん、アニメ「リゼロ」の脚本を手がけた梅原英司さんがシリーズ構成、脚本を担当するなど豪華スタッフが集結。AIを滅ぼす役目を背負ってしまったAIのヴィヴィの100年の旅を描く。歌姫として活動していたヴィヴィの元、マツモトと名乗るプログラムが転送される。マツモトは自身を100年後からやってきたプログラムといい、未来で起こる人間とAIの戦争を防いでもらいたいと依頼。ヴィヴィ、マツモトが戦争を回避しようとする。TOKYO MX、MBS、BS11ほかで放送中。

 「Vivy」は放送が始まるまで詳しいストーリーは明かされず、さまざまな謎を残したまま1話の放送を迎えた。

 「『AIが100年の時を巡る』ということで、壮大なスペースファンタジーなのかなと思っていたんです。グレイス役が決まって台本を読んだら、人の感情であったり、『AIとは何だ』『心とは何だ』という私たちが生きている今の世界にもマッチしそうな物語で、心にどしんときました」

 明坂さんが演じるグレイスは、病院や研究機関などで働く看護AI。「人間の命を助けること」が使命で、未来では人間と初めて結婚したAIとして歴史に名を残している。グレイスの夫は、AIの過度な進化を促した完全AI制御による海上無人プラント・メタルフロートの開発者・冴木で、ヴィヴィとマツモトは歴史を変えるためにメタルフロートの機能を停止しようとする。グレイスが登場したのは5、6話で、明坂さんは5話の台本のみを受け取ったという。

 「5話は、グレイスが話すシーンは冴木と結婚式を挙げる様子が描かれた冒頭だけで、それ以外の感情が見えてこなかったんです。5話の収録でヴィヴィ役の種崎(敦美)さんに『私たちは幸せになれるんですかね?』と聞いたら無言だったので『おや? これは一体……』と思って、困惑しながらアフレコする感じでしたね」

 その後、明坂さんは6話の台本を読み、衝撃を受けた。実はグレイスは、看護AIとしての使命を書き換えられ、メタルフロートのマザーコンピューターに取り込まれていた。ヴィヴィとマツモトが出会ったのは、グレイスの似姿だった。冴木はヴィヴィたちを利用し、グレイスを取り戻そうとするが、悲劇的な結末を迎えることになる。

 「6話の台本を読んだ時にグレイスの献身さや、冴木との出会い、歌が持つ意味にかなり心を打たれて、メンタルブレークしてしまいました。この感覚で5話を録(と)っていたら、AI然としたせりふはできなかっただろうなと思います」

 ◇一言を発するのがとても怖い 全員が使命を全うする収録

 明坂さんは、看護AIを演じる上で「慈愛、献身さ」を大切にした。「AIというより、看護を使命とする人として演じました」と振り返る。

 「グレイスが、少年時代の冴木、大人になった冴木と接する場面が描かれますが、冴木に恋愛感情を持つようになるという変化はあっても、慈愛、愛情を全面に出すことを念頭に置きました。冴木とグレイスが一緒にいた時間を大切にしてあげたいという気持ちが強かったので、とにかく温かく、温かくと思って演じました」

 明坂さんは、グレイスと、よりAI然としたグレイスの似姿の二役を演じたこともあり、AIならではの表現も意識した。

 「プログラミングされたAIだからこそ、言葉の句読点の置き方だったり、ニュアンス一つで意味合いが変わってきてしまうかもしれない。『。』なのか『、』なのか『……』なのかを考えなければいけない。そして、セリフもこれはグレイスが心を動かして言ったものなのか、AIとして言ったものなのか、一言一句を大切に。一言を発するのがとても怖かったです」

 冴木を献身的に思う看護AIとして、ブレない演技を心がけたという明坂さんが「一番ブレた」のが、少年の冴木と会話するシーンだった。入院中の冴木が「お母さんはどこにいるんだ」とグレイスに迫り、「お母様は国外にいらっしゃいます。そこで新しい家族の方と暮らしています」と冴木にとってはつらい現実を明かす。

 「あの時は、冴木に母親のことを答えるように命令されて無理やり答えることになった。人間に命令されたAIとしては答えなければいけないけど、答えたくないという人間的な感情もあって、言葉が詰まってしまって。リテークが出るかなと思っていたんですけど、OKになりました。あの詰まった感じがちょうどよかったのかなと」

 「Vivy」では、AIとAI、AIと人間のドラマが色濃く描かれ、声優陣がAIの感情の揺れを繊細な演技で表現している。明坂さんは、ヴィヴィ役の種崎さん、マツモト役の福山潤さんと共に収録し、「全員が使命を全うしている」と感じたという。

 「ヴィヴィは使命について疑問を持ちながらも立ち向かっていて、すでに似姿になったグレイスはAIとしての使命を全うしていて、絶対に真っすぐに演じなければいけない。そんな中で福山さんがマツモトを楽しげに演じられていたので、私たちも落ち着いてせりふを読むことができました。ストーリーはシリアスで重いのですが、それを吹き飛ばすかのように福山さんがマツモトを緩急を付けて表現し、視聴者を和らげるような演技をされていたので圧倒されました」

 「『Vivy』は人間の愚かさとか、負の部分がすごくリアリティーがあるんですよね。だからこそ、すごく心に爪痕を残して考えさせられる。100年の物語の中でヴィヴィがどこに行き着くのか、この先が全く予想が付かなくて、気になってしょうがないんです」と明坂さん。今後、どんなドラマが描かれるのか、目が離せない。

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