田中公平:愛され続ける名曲「ゲキテイ」 舞台「新サクラ大戦」に愛を込めて

「サクラ大戦」の主題歌「檄!帝国華撃団」を手がけた田中公平さん
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「サクラ大戦」の主題歌「檄!帝国華撃団」を手がけた田中公平さん

 セガの人気ゲーム「サクラ大戦」シリーズの「新サクラ大戦」の舞台第2弾「新サクラ大戦 the Stage ~二つの焔~」が12月17~19日にシアター1010(東京都足立区)で上演される。「サクラ大戦」と言えば、作曲家の田中公平さんが手がけた主題歌「檄!帝国華撃団」のイメージが強い。「ゲキテイ」はアニソン史に残る名曲で、約14年ぶりの新作となった「新サクラ大戦」では「ゲキテイ」が「檄!帝国華撃団<新章>(新ゲキテイ)」としてよみがえった。「『新サクラ大戦』はファンに対するお礼でもあるんです。舞台を続けることもそうです。やり続けることが大事だと思っている」と語る田中さんに「ゲキテイ」「新ゲキテイ」、舞台への思いを聞いた。

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 ◇オリックス福田選手を応援 登場曲も話題に

 「サクラ大戦」のゲーム第1作が発売されたのは1996年。「サクラ大戦」は知らなくても「ゲキテイ」は聴いたことはあるという人もいるほど同曲は愛され続けている。今年、プロ野球パリーグで優勝したオリックスで1番打者として活躍した福田周平内野手が8月から登場曲に「ゲキテイ」を使用したことも話題になった。福田内野手は優勝の立役者の一人で、スタジアムで「ゲキテイ」が流れると、ファンがリズムに合わせて拍手をして、盛り上げていたのが印象的だった。

 「『サクラ大戦』は、広井王子さんが、乙女の戦隊もの、宝塚のような舞台の2本立てと最初から決めていたので、音楽も大きいんですね。福田君は、これからの選手ですし、楽しみです。応援しています。日本シリーズで流れると、熱いよね(取材は日本シリーズ前)。いい宣伝になります(笑い)。(オリックスの前身である阪急の本拠地の)西宮球場は昔から行っていたし、昔はオリックスの会社のCMの音楽を作ったこともありますしね」

 「ゲキテイ」には、伝説がある。田中さんはわずか15分で名曲を生み出したという。

 「長くかけたらいいものでもないんですよ。日本で一番速いかもしれない時期もありました。でも、速いだけではやっぱりダメなんです。クオリティーがあってこその速さなので。自分で言うのもなんだけど、上20年、下20年で私より速い人はいないと思う。最近は速い人もいます。東大路(憲太)君も速いからね。『ウマ娘』もすぐに書いている。彼は才能があるね。早かろう安かろうではダメだけど、クオリティーもしっかりしている」

 ◇「新ゲキテイ」は密度が違う

 「新サクラ大戦」は、PS4用として2019年12月に発売され、テレビアニメ化もされた。2005年に発売された「サクラ大戦V」以来、約14年ぶりの新作となった。「ゲキテイ」は「新ゲキテイ」としてよみがえった。

 「『新ゲキテイ』はちょっと苦労しました。『ゲキテイ』を残しながら、新しいイメージにする。すごく考えました。それでも、2、3日ですが。『また同じことをやっている』と思われるのはイヤ。『新サクラ大戦』は『ゲキテイでいきたい!』と言われたけど『変えましょう。任せてください。』と言ったんですよ。バランスを取りました。あのイントロは残さないといけない。1小節だけ、エリック・ミヤシロさんのトランペットを入れた。最初の5秒で『ゲキテイ』か『新ゲキテイ』かが分かります。3、4秒増やすだけで、差別化できた」

 1小節で印象がガラリと変わるのは、まさに“田中公平マジック”と言えるだろう。ほかにもマジックが随所にちりばめられている。

 「『ゲキテイ』は、今の感覚では密度が低い。『千本桜』以降、速いテンポで詰め込むようになっている。YOASOBIもそうですね。言葉を詰め込んでいる。マンガ『ONE PIECE』にしても、最初の頃と比較すると、今は密度が高くなっている。密度が大事だと思っていました。例えば『引き裂いた』と『闇が吠(ほ)え』の間をどう埋めるか? そこが難しいんです。テンポは一緒だけど、あのテンポは今では遅い。深夜アニメの主題歌を聴くと、みんな速くなっています。それを聴いている人たちに『冗長だな』と思われてしまうと、うまくいかない。密度、スピード感を出して、『ゲキテイ』を壊さないのがコンセプトです」

 ◇座長・関根優那はイチロー?

 舞台「新サクラ大戦 the Stage ~二つの焔~」は、2020年11月に上演された舞台の続編で、前作に続き、関根優那さんが主人公・天宮さくらを演じる。田中さんは音楽を担当しただけでなく、オーディションにも参加した。オーディションには100人以上が参加した。

 「大変ですけど、そこはちゃんと面倒を見なければいけない。彼女たちの人生もある。子供の頃からダンス、歌、演技の練習をして、本当に偉い子ばかりです。全員にコメントしました。すごく時間がかかったんですよ。関根は、最初はそんなに目立たなかった。さくらにしては背も少し低い。(東雲)初穂もやってもらって、もう一度、さくらをやってもらったら、よかったんです。ほかにも候補はいましたが、関根が一番光っていた。性格もそうですが、舞台の真ん中で引っ張っていけると感じた」

 田中さんは、関根さんについて「不思議な子」とも話す。

 「ガーッ!と勢いがあるわけではなく、柔らかい印象なんです。でも、しっかりしている。前回の舞台で、最初のけいこで分厚い台本を全部覚えてから来ていましたからね。すごいですよ。第2弾のけいこが始まると、花組は誰も台本を持っていないんです。覚えてきたんです。強制はしていないけど、関根がそういう空気を作った。一人で最初に来て、、最後まで残っている。関根はイチローですよ。多くは語らないけど、やるべきことをしっかりする。みんながそういう姿を見て、付いてくる。素晴らしい座長です」

 舞台では新曲もお披露目される。

 「まだ詳細は言えないのですが、一幕の終わりにあります。ものすごく格好いいです。難しいので、歌のけいこが大変かもしれない。私の悪いところで、ちょっと上のレベルの曲を書くんです。普通のレベルにすると、ちょちょいとやってしまいますから。レベルアップしないと面白くない。私もそうです。昨日と同じ曲じゃダメ。毎日、レベルアップしないといけない。この年だから、そうしないと切られます。老化とワンパターンがいけない。老化は仕方がないけど、曲が老化してはいけない。一番まずいのはワンパターン。過去の栄光がある人ほどワンパターンになってしまう。次はもっといいものを!という気持ちじゃなきゃいけない」

 キャストもレベルアップしている。

 「最初は手探りだったけど、今は自分のものになっている。キャラと本人が同化していくのが『サクラ大戦』のいいところ。不思議な感覚になるんですよ。みんな、この一年ですごくスケールアップした。私のオーケストラコンサートにも出演させたしね。どれだけ、歌がうまくなったか。彼女たちに最初に会った時も『責任をもってスターにします!』と言いましたから。みんな引っ張りだこになっている。ここで売れても次がないのもかわいそうですから。別の舞台にも呼ばれるようにしないといけない」

 田中さんの言葉からは、作品、キャストへの愛を感じる。「サクラ大戦」シリーズは約14年、新作が作られてこなかったが、田中さんはその期間、同シリーズを守ろうと、イベントを開催してきた。

 「(『サクラ大戦』の真宮寺さくら役の)横山智佐と私がシリーズを守ろうとしてきた。いくらやっても、ファンに飽きられたら終わっちゃうけど、ずっと愛してくれた。『新サクラ大戦』はファンに対するお礼でもあるんです。舞台を続けることもそうです。やり続けることが大事だと思っている」

 新作舞台にも愛を込めた。スケールアップしたキャスト、スタッフの愛を感じてほしい。

 ◇「新サクラ大戦 the Stage  ~二つの焔~」のスタッフ、キャスト(敬称略)

 シリーズ原作:広井王子▽音楽:田中公平▽演出、脚本:伊藤マサミ▽制作:Office ENDLESSほか

 天宮さくら:関根優那▽東雲初穂:高橋りな▽望月あざみ:寒竹優衣▽アナスタシア・パルマ:平湯樹里▽クラリス:沖なつ芽▽ヤン・シャオロン:本条万里子▽ホワン・ユイ:西田ひらり▽アーサー:楓▽ランスロット:小松穂葉▽神崎すみれ:片山萌美▽神山誠十郎:阿座上洋平(声の出演)▽芽組:山田せいら、矢澤梨央、本宮光、飯嶋あやめ、石田彩夏、小太刀瑞姫、永井毬絵、牧野澪菜、三島依、山下由奈

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