渋谷天外:「バックアップの立場に回りたい」 渋谷天笑と松竹新喜劇の今後語る 新婚生活も

松竹新喜劇代表の三代目渋谷天外さん(右)と二代目渋谷天笑さん
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松竹新喜劇代表の三代目渋谷天外さん(右)と二代目渋谷天笑さん

 松竹新喜劇で正月恒例の「初笑い! 松竹新喜劇 新春お年玉公演」が、2022年1月2~10日に京都・南座(京都市東山区)で開催される。今回は、若手俳優陣のエネルギッシュな演技をベテラン俳優の安定感のある演技がガッチリと支える「お祭り提灯(ちょうちん)」、曽我廼家(そがのや)の名跡を39年ぶりに継承した曽我廼家一蝶さん、いろはさん、桃太郎さんが大役に挑戦する「お種と仙太郎」がラインアップされている。現代表である三代目渋谷天外さん、「渋谷」の名跡を継承するべく、天外さんが名乗っていた名を襲名した二代目渋谷天笑さんに今回の見どころやなどを聞いた。

ウナギノボリ

 ◇渋谷天外、天笑に激怒した理由とは?

 --お二人は「お祭り提灯」で共演されます。それぞれの役柄と見どころを教えてください。

 天外さん:私は強欲な金持ちを演じますが、やっとそんな年になれたなぁ、と。私は根がいい人なので、なかなか悪役になりきれなくて(笑い)。

 天笑さん:私は「お祭り提灯」が松竹新喜劇で一番面白い作品だと思っています。これがダメだったら、劇団がダメになると思っていますよ(笑い)。それぐらい、自信がある作品です。僕は今回、上総屋の旦さんをやらせていただきます。天外さんも過去にやられている役で、僕は初めてなのでとても楽しみにしています。

 --天外さんが演じられていた役を受け継ぐ気持ちとはどんなものなのでしょうか?

 天外さん:そんなものあるわけないでしょう(笑い)。自分のオリジナリティーを出さなあかんのですよ。歌舞伎でも俳優さんはオリジナリティーを出してやってはるでしょ? 俺と同じことをしていたら、俺以上にはなれんぞ。

 天笑さん:実は、天外さんにクソほど怒られたことあるんですよ。天外さんがやっていた役のDVDを見て「僕もこういうふうにやってみよう!」って思って泣く芝居をしたら、「お前は何でそこで泣いているんだ!」って言われて。「天外さんが泣いてはったんで」って言ったら、「アホー、俺のマネすんな!」って(笑い)。バチバチに怒られました。

 天外さん:お前がマネするなら、俺が演じた方がええねん(笑い)。お前じゃないとできない芝居をしないといけないんだよ。

 天笑さん:でも今回演じる若旦那って目立った特徴もない役なのに、気品と色気を出さないといけないんですよ。でもちょっとナヨナヨしていて、それが難しいと思います。

 天笑さん:僕はもう一つの演目「お種と仙太郎」では、丹波屋の息子という役を演じているんです。こっちもお金持ちの役で、この違いも難しいんですよ。着物の着付けは一緒だから見た目は同じなんです。だからお芝居を変えていかないと。だから「お種と仙太郎」には出演されない天外さんも、おじいちゃんの役で出ていただいて、一緒に苦しんでいただかないと(笑い)。

 ◇渋谷天笑になって4年、「おちょやん」出演が役者のスタート

 --天笑さんもそうですが、藤山扇治郎さんら若手の活躍がめざましいです。天外さんはどのように感じていらっしゃいますか?

 天外さん:しっかりしてきていると思いますよ。僕は10年ぐらい前から「60歳になったら辞めるから、お前らの芝居を作っていけ。俺がいつでも引退できるようにしろ」って言ってきたんです。まだ僕が松竹新喜劇のトップみたいな顔をしているじゃないですか。60、70のおっさんがトップで、若いお客さんが来るわけない。だから彼らの世代のお客さんを捕まえて、お芝居をしてほしいとしか思っていないよね。

 「老兵は死なずただ消えゆくのみ」っていうけど、バックアップの立場に回りたいね。今回の「お祭り提灯」は、芯の部分は若手が中心で、周りを俺たちぐらいの年齢で固めているんです。最初は若い連中だけでやろうとも思ったんだけど、芝居がむちゃくちゃになっちゃうから、後ろでグッと支えてやらないと。

 --お二人は、NHK連続テレビ小説(朝ドラ)「おちょやん」にも出演されていました。その後の反響はいかがでしたか?

 天外さん:若い連中が多く出てくれたので、それに対して「良かったですな、天外さん」と反響をいただきました。私の芝居に対して言ってはってくださった方もおるねんけど、そっちの方がうれしかったね。でも杉咲花さんとは楽しくやらせていただきました。

 天笑さん:僕はNHKでレギュラーが夢だったので、それがかなってうれしかったです。テレビは難しいことがたくさんあって。カメラの位置を理解しないといけないし、どのカメラが自分を撮っているのか意識しないといけない、人とかぶらないようにしないといけない……。リアクションする大事さもすごく勉強になりました。

 僕は天笑になって4年目なんですが、ここから頑張っていかないと。ただ天笑になっただけだと、何の意味もないので。「おちょやん」に出れたことが、やっと役者としてのスタートになったと思っています。

 天外さん:立派なこと言うな、俺の天笑時代はむちゃくちゃやったで(笑い)。

 天笑さん:天外さんの天笑時代を知っている人に会ったら、めっちゃ言われますよ。「天笑になったんか。ようそんなのもらったなぁ」って(笑い)。

 ◇再婚し「尻に敷かれています」

 --天外さんは7月に再婚されて半年近くたちました。新婚生活はどうでしょう?

 天外さん:尻に敷かれています(笑い)。イニシアチブは完全に嫁が持っていて、毎日何かで怒られています(笑い)。でも私自身がおしゃべりなので、1人で生活していたらテレビに話しかけるからね、それは良くない。人としゃべるって、ストレスの軽減にもつながるんですよね。

 もちろん「幸せです」と言いたいんですけど、占いを見ると「晩年が幸せ」と書いてあるんですよ。晩年って死ぬ2、3年前のことやろ。だからあまり幸せであってはいけんなぁとも思うけど(笑い)。

 天笑さん:最近は(前の奥さんの)お子さんと交流もあるそうですね? グループLINEも作ったって聞きましたよ。

 天外さん:あいつらグループLINE作って、俺入れてくれんねん。ケンカしたらそこで相談しているみたいだし(笑い)。でも66歳になってから、来てくれるなんてありがたいですよ。

 --最後に「初笑い! 松竹新喜劇 新春お年玉公演」の見どころを教えてください。

 天外さん:とにかく若いやつらのアホさ加減を見に来てほしい。今回は若手をメインに押し出している公演なので、そればっかり考えていますが、腹の底では「お前らに負けてたまるか」って思っていて(笑い)。ライブの息づかいを感じてほしいね。

 天笑さん:「お種と仙太郎」「お祭り提灯」どっちも面白い作品なので、正月から笑ってほしいですね。笑いでコロナを吹っ飛ばしてほしい。スタートを切った渋谷天笑を見ていただきたいと思います。

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