名探偵コナン
#1146「汽笛の聞こえる古書店4」
12月21日(土)放送分
MBS・TBS系の日曜午後5時のアニメ枠“日5”が復活することが話題を呼んだ。アニメの視聴が時間に縛られないサブスクリプションサービスに移りつつあるなか、地上波でのアニメ枠復活に勝算はあるのか。アニメコラムニストの小新井涼さんが独自の視点で分析する。
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数々の人気作を世に送り出してきたMBS・TBS系の日曜夕方5時のアニメ枠、通称“日5”が、約5年ぶりに復活することが発表され、話題になりました。復活後のラインナップも、4月からは「呪術廻戦」第1期の再放送、10月からは「機動戦士ガンダム 水星の魔女」と、話題のタイトルが並び大きな注目を集めています。
しかし5年前と比べると、現在は配信サービスもすっかり定着し、リアタイ(リアルタイム)以外でのアニメ視聴もますます容易になりました。テレビ放送には厳しい状況にも見えますが、そんな中での夕方アニメ枠の復活は、果たして難しい挑戦となるのでしょうか。
私はむしろその逆で、今のタイミングでの復活には、この5年を経たからこその“強み”があるように思います。たとえば、配信サービスがすっかり定着したからこそ、“リアタイ視聴の楽しみ方が再発見”されてきているのもそうです。
各種配信サービスが普及し、作品数も充実してきた今、スマホやPC、テレビを使って、好きな時に好きな場所で、見たい作品を自由に見ることができるようになりました。しかしその一方で、決められた時間に決められた場所で、決められた作品しか見ることができないにもかかわらず、最近の「金曜ロードショー」でのアニメ放送や「鬼滅の刃」など、テレビのリアタイ視聴が大いに盛り上がる機会も増えてきているのです。
この盛り上がりこそ、配信が“最も便利な視聴方法”として定着したことで、そこにはない魅力として、全国規模で同じ作品を一斉に視聴し、その体験をSNSで共有するという、“リアタイ視聴のお祭り的な楽しみ方”が再発見されたことに他ならないと思います。同時視聴ができる配信サービスもありますが、テレビのリアタイ視聴は、作品ファンであるなしにかかわらず幅広い視聴層が集まる点で、全く違う視聴体験であるといえるでしょう。
また、そうしてリアタイ視聴が盛り上がるようになった要因としては、上記「鬼滅の刃」をはじめとする社会的な人気作品が続々登場し、ここ数年でアニメがますます一般化したこともあると思います。そしてその背景にも、配信サービスが定着したからこそ、アニメファン以外までもが気軽に話題の作品にアクセスできるようになったことがありそうです。
たとえば、昨年「金曜ロードショー」で放送され話題となった「ヴァイオレット・エヴァーガーデン」は、作品ファンのオススメも後押しとなり、テレビ放送を機に初めて本作に触れるようなアニメファン以外の層にもしっかり届きました。そもそもの作品の魅力は大前提としても、それだけ幅広い層から注目を集めた一因としては、近年のアニメブームを受け、アニメファン以外も配信で気軽に作品をチェックするようになっていたことで、“話題作を受け入れる土壌が出来ていた”ことも大きかったのでしょう。
確かに、“日5”が復活するまでのこの5年で、配信サービスはすっかり定着しました。
しかしそれは、5年前の配信サービスが登場したての頃、度々“テレビ離れ”が叫ばれていた時とは少し様相が異なってきているように思います。配信が定着することでテレビ離れが助長されるどころか、リアタイ視聴にしかない強みが改めてみえてきたり、配信によって視聴層が拡大したことで、話題作がテレビ放送されれば、関連ワードが続々トレンド入りするほど盛り上がるようにもなってきているのです。
こうした中で行われる“日5”の復活は、難しい挑戦どころか、むしろベストなタイミングともいえるのかもしれません。
ただ復活後、アニメファン内外に「日曜5時にアニメがやってる!」としっかり認識され、リアタイ視聴者が定着していくには、それなりに時間もかかると思います。“日5”が誰にとってもお馴染みの、リアタイ視聴も盛り上がるアニメ枠になっていくのかについては、「呪術廻戦」や「ガンダム」以降の作品ラインナップや、そもそも放送枠が存続していくのか、そうした今後の展開が重要になっていきそうです。
こあらい・りょう=埼玉県生まれ、明治大学情報コミュニケーション学部卒。明治大学大学院情報コミュニケーション研究科で、修士論文「ネットワークとしての〈アニメ〉」で修士学位を取得。ニコニコ生放送「岩崎夏海のハックルテレビ」などに出演する傍ら、毎週約100本(再放送含む)の全アニメを視聴して、全番組の感想をブログに掲載する活動を約5年前から継続中。「埼玉県アニメの聖地化プロジェクト会議」のアドバイザーなども務めており、現在は北海道大学大学院国際広報メディア・観光学院博士課程に在籍し、学術的な観点からアニメについて考察、研究している。
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