モンスター
#8 数字の鎖
12月2日(月)放送分
オンライン動画配信サービス「Hulu(フールー)」で独占配信中のドラマ「神様のえこひいき」に出演している俳優の窪塚愛流さん。2021年は3本のドラマに起用され、現在放送中の連続ドラマ「ファイトソング」(TBS系、火曜午後10時)でもレギュラーキャストを務めている窪塚さんは、本作で主人公・弥白(藤原大祐さん)から告白される同級生・ケンタを演じている。「出演シーンやセリフの量の多さなど初めての経験が多かった」という撮影を通じて、窪塚さんは俳優としてどんなことを得たのだろうか――。
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窪塚さんの俳優デビューは、2018年に劇場公開された映画「泣き虫しょったんの奇跡」。本作で、松田龍平さん演じる主人公の中学生時代を演じた。当時自身も中学生だったというが「小学校の卒業文集にも将来の夢は俳優と書いていました。僕の家族って父(窪塚洋介さん)も父の弟(窪塚俊介さん)も俳優をしていて、レゲエアーティストの叔父さんもいるんです。さらに母も元ダンサーということで、周りにいる大人がみんな表現者だったので、自然とそう感じていたのかもしれません」と振り返る。
さらに、父親や叔父の姿を見て、演じるという仕事に魅力を感じていたという。
「もちろん、そばにいただけで本質は理解していませんでしたが、とても楽しく仕事をしているように見えました。だから『この俳優さんに憧れて』とか『この作品に影響を受けて……』みたいなきっかけではなく、ただただ子供のころから俳優という仕事が近くにあったので、やってみたいなと思っていました。もし父がお花屋さんで、すごく楽しそうに仕事をしていたら、僕もお花屋さんになりたかったと思います」
そんなきっかけで志した俳優業だが、作品を重ねるごとに、その道のりは険しく遠いものに感じているという。「神様のえこひいき」では、これまで以上に出演シーンやセリフの量が多かった。劇中で対峙(たいじ)したのは、藤原さんや桜田ひよりさん、古川雄輝さんら窪塚さんよりはキャリアを積んだ俳優たち。
「僕は皆さんよりもスタートラインが遅いと自覚していましたし、実際、力不足だなと思うこともたくさんありました。自分の中で山場だなと思うシーンも多く、朝から晩までまったく気が抜ける瞬間がなかったんです。家に帰ってからもなかなか作品のことが頭から離れませんでした。すごく大きな壁だなと感じましたし、進めば進むほど、自分が思い描いていた理想とはかけ離れていくような気持ちでした」
窪塚さんが演じているケンタは、女子の扱いがうまいモテ男だが、親友の弥白からまさかの告白を受けるという高校生だ。「ケンタはナンバーワンホストのように、女の子を手のひらの上でコロコロ転がす役なのですが、実際の僕はまったく女の子慣れしていないので、胸キュンシーンなどは、耳が赤くなってしまうんです」と照れ笑いを浮かべると、「とにかく何度も何度も台本と向き合って、浮かんできた純粋な気持ちをしっかり表現しようと思いました」と役へのアプローチ方法を語る。ただ、明確な正解がない芝居の現場、しっかりと自信が持てる瞬間はあまりなかったという。
それでも、こうした悩みや大きな壁にぶち当たることは窪塚さんにとって、「しんどいとか嫌だなという気持ちはまったくなく、ワクワクするし、楽しいなと思えました」と語る。こうした感情は、より俳優という仕事へのモチベーションとなった。
「例えば日常に起こるどんなことでも、俳優という仕事には肥やしになると感じています。こうやって取材を受けて話をしていても、作品への感想もいろいろありますし、人と話すことや人間観察も、すべて俳優という仕事に生かせると思います。それってすごく楽しいですよね」
本作を経験して、より貪欲に俳優業に取り組みたいという気持ちが強くなった。芸能界に入る前は、特別目標とする俳優はいなかったというが、実際現場を重ねるたびに「こうなりたいな」と思える先輩たちに出会えたという。
「昨年放送されたドラマ(『あのときキスしておけば』)でご一緒した井浦新さんや松坂桃李さんは、ほとんど現場経験のない僕に対して、緊張をほぐしてくださるように、いろいろ話しかけてくださったんです。テレビや映画で活躍されている方とお話できたこともうれしかったのですが、それ以上に経験の浅い僕を同じ俳優として接してくださったことがうれしかった。もし僕が30歳、40歳になっても俳優を続けていられたなら、自分もそういう人になりたいなと思いました」
俯瞰で物事を見つめられて、現場でどんなことが起きても吸収し、しっかりと人の心を動かせる表現ができる……そんな俳優になりたいと未来に思いを馳(は)せた窪塚さん。「人間としての厚みがあり、どんなことにも動じず、誰とでもコミュニケーションをとれる魅力的な大人になりたいです」と、俳優だけではなく人としても“懐の深い人間”になることを誓っていた。(取材・文・撮影:磯部正和)
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