大鈴功起:アニメ「アオアシ」主役 大抜てきの新人声優 格好悪くても泥臭く 全力疾走!

「アオアシ」で主人公・青井葦人を演じる大鈴功起さん
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「アオアシ」で主人公・青井葦人を演じる大鈴功起さん

 「ビッグコミックスピリッツ」(小学館)で連載中の小林有吾さんの人気サッカーマンガが原作のテレビアニメ「アオアシ」が、NHK・Eテレで4月9日から毎週土曜午後6時25分に放送される。Jリーグの名門ユースで奮闘する主人公・青井葦人(アシト)を演じるのが、新人声優の大鈴功起さんだ。2021年に声優デビューしたばかりの大鈴さんは、テレビアニメ初レギュラーにして、初の主人公役に抜てきされた。「アシトになるために」収録前に役作りに励んだといい、「収録では『格好よくなるな』といわれます。がさつで大ざっぱで、泥臭くてという、感じたままのアシトを演じるようにしています」と意気込む。収録の様子、作品にかける思いを聞いた。

ウナギノボリ

 ◇アシトになるため“故郷”愛媛へ 役作りに費やした収録前

 「アオアシ」は、2015年から「ビッグコミックスピリッツ」で連載中のJリーグの高校生世代を育成する組織・ユースチームを題材にしたマンガ。セレクションの末、Jリーグの東京シティ・エスペリオンFCの名門ユースの一員となった主人公・青井葦人が成長する姿を描いている。

 大鈴さんが声優という職業を意識したのは、小学生のころ。国語の授業の朗読や、音楽の授業の歌が好きで、「歌も歌って、お話もできる仕事」として声優に興味を持った。中学生時代、友達の影響でさまざまなアニメに触れるようになり、中でも「東京喰種トーキョーグール」「四月は君の嘘」などで主人公を演じた花江夏樹さんの演技に衝撃を受けた。

 「この作品も、この作品も花江さんなんだ!って。どのキャラクターも全然違うんですけど、お芝居は本当にそのキャラクターにぴったりで、繊細なお芝居をされるので、すごいなと思って。最初に憧れた声優さんです」

 その後、高校に入学した大鈴さんは、本格的に声優を志し、声優養成所に入所。2021年に声優デビューした。

 大鈴さんは、「アオアシ」のオーディションを受ける際に原作を読み、「熱いシーンはめちゃめちゃいっぱいあって、人間の心理的な描写もすごい。僕はそれまでサッカーに詳しくなくて、試合を見たこともあまりなかったのですが、原作を読んでいるだけで、サッカーがうまくなっていくような気持ちになりました」と感じたという。

 「作品もアシトもめちゃめちゃ好きになった」という大鈴さんは、アシト役合格の知らせを受け、「うれしいと同時に全身の力が抜けちゃって、しゃがみこんでしまうほどでした。よかったぁ……!って」と喜びを語る。

 出演が決定し、収録が始まるまでの期間は「ほとんどアシトになるために使った時間でした」と並々ならぬ思いで作品に挑んだ。

 「自分がアシトに近付くためにできることは何だろう?と考えました。アシトは、ユースに入団する前まで15年間愛媛に住んでいた少年だから、まず自分も愛媛に行って1週間過ごしました。サッカーにも詳しくならなきゃと思って、詳しい友達にスタジアムについてきてもらって、Jリーグ観戦をしたり、動画サイトで試合を何本も見たり。オーディションで合格をいただいた時のままの自分だったら、絶対まだアシトにはなりきれないなと思ってたので、どうにかして時間をいっぱい使いました」

 ◇「絶対きれいに叫びたくない」 泥臭さ、強いエゴを表現

 大鈴さんが演じるアシトは、自称「全盛期ロナウドの生まれ変わり」という自信家で、裏表のない熱い性格だ。持ち前の負けん気の強さで、強者ぞろいのユースの入団セレクションに挑むことになる。

 大鈴さんは、アシトの「サッカーが何より好き」という気持ち、「ただ熱いだけじゃない、芯の強さ」、自分を応援してくれる母親への「母ちゃんのために」という思いを大事にして収録に臨んでいるという。

 「音響監督のはたしょう二さんからは、『もっと荒っぽく』『格好よくなるな』とディレクションをいただきました。主人公だから格好いいキャラというような意識は持たずに、がさつで大ざっぱで、泥臭くてという、感じたままのアシトで演じるようにしてます」

 大鈴さんは「せりふじゃない部分のお芝居」に苦戦しているといい、「サッカーの描写もたくさんあるので、走ったり、ボールを受けたり、パス出したり、シュートしたり、その一つ一つの息や反応を表現するのが難しいです」と語る。息の演技のために、実際に“全力疾走”したこともあったという。

 「第1話では、アシトが全力で走って死にそうになるぐらいゼーゼーと息をするシーンがあるんです。収録前は、実際に僕も家の周りを走りました。元々体力がないので、アシトほど走らなくてもすぐにゼーゼーとなるので、『今だ!』と思ってスマホで録音して。それを家に帰って聴いて『こんな感じなんだ』って」

 アシトの“叫び”にもこだわりがある。

 「アシトの泥臭さが一番出るような叫びのシーンもたくさんあるんですけど、絶対にきれいに叫びたくないなと思っていて。というか、僕の技術ではまだきれいに叫べないんですけど(笑い)。どうしたって汚くなるんですけど、それが『やっぱアシトだな』と思うんです。どんな壁にぶつかっても、食らいついて食らいついて、『絶対に俺が点を取るんだ!』というアシトの強いエゴの部分。そこが僕はすごく好きだし、憧れなので、強く意識して演じています」

 ◇壁にぶつかり乗り越えていく アシトに奮い立たされる現場

 テレビアニメ初主演に挑む大鈴さんが熱く意気込みを語る姿は、ユースの世界に飛び込んで奮闘するアシトとリンクする。

 「アシトはユースに入っていろいろな壁にぶつかって、それでも頑張って乗り越えていく。僕にとっては、今の現場がそれなんです。毎週アフレコで、周りの人たちはみんなうまくて、僕が一番下手な状態なので。でも、アシトが頑張ってるんだから、僕も頑張らなきゃなって。『アオアシ』の作中に『ユースはサバイバルなんだ』というせりふがあるんですけど、声優業界も一緒で、淘汰(とうた)されていく世界だと思うので、勝ち残っていかないと、という思いです」

 最後に大鈴さんに声優としての目標を聞いた。

 「とにかくいろいろな作品に出て、いろいろなコンテンツに関わりたいです。将来的には、僕自身というより、僕が演じたキャラクターを愛してもらえるような、『大鈴の演じるキャラクターって、なんか好きになるんだよね』と感じてもらえたら、すごくうれしいです」

 全力で「アオアシ」という作品に挑む大鈴さん。熱く、泥臭いアシトの活躍に注目だ。

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