機動戦士ガンダム ククルス・ドアンの島:富野由悠季監督「今回のメカ作画はすごいな」 CGで表現したMS 制作の裏側

「機動戦士ガンダム ククルス・ドアンの島」のスタッフトークイベントの様子(C)創通・サンライズ
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「機動戦士ガンダム ククルス・ドアンの島」のスタッフトークイベントの様子(C)創通・サンライズ

 アニメ「機動戦士ガンダム(ファーストガンダム)」のアニメーションディレクターやキャラクターデザインなどを担当した安彦良和さんが監督を務める劇場版アニメ「機動戦士ガンダム ククルス・ドアンの島」のスタッフトークイベントが7月21日、新宿ピカデリー(東京都新宿区)で開催され、安彦監督らが登場。「ガンダム」シリーズは、手描きのモビルスーツ(MS)戦が魅力になっているが、同作ではCGが多用されており、スタッフがCGを駆使したMS戦の制作の裏側を語った。

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 ◇安彦監督の一言 「ガンダムはヒーローなんだ」

 バンダイナムコフィルムワークスの小形尚弘エグゼクティブプロデューサーは「メカを描くことは職人芸で、これまで培ってきた能力を持つ方々が高齢化してきていることもあり……。今は3Dというものがアニメの制作工程で重要な役割を担っている」と説明。

 “ガンダムの生みの親”である富野由悠季監督が同作を見て「今回のメカ作画はすごいな」と言ったといい、小形プロデューサーは「今回のメカ作画、富野さんの目には2Dに見えているんですよ。これはもう勝ちですね。ちなみに、『THE ORIGIN』の時はCMを見て、『安彦のガンダムなのになんで3Dなんだ?』と言ってましたが、今回は全然言ってなかったです」と話した。

 3D演出を担当したCGアニメーションスタジオ「YAMATOWORKS」の森田修平さんは「3Dはあくまでも鉛筆だと思っていて、作り方、言語が違ったりする……。でも、手描きもCGも目指しているものは同じだと思うんです。そこをうまく一緒になってできないかな?と思っていたところ、今回お仕事をいただけて、とても楽しかったです」と話す。安彦監督の「ガンダムはヒーローなんだ」という言葉が印象的だったといい「言葉一つで方向性を伝えられるなんて、改めてすごいなと思ったんです」と語った。

 ◇金田伊功だってこんなデフォルメしないぞ!

 「ククルス・ドアンの島」は、1979年に放送されたファーストガンダムの第15話のエピソードで、主人公のアムロ・レイ、敵対するジオン軍の脱走兵ドアンの交流を通じて、戦争の哀愁が描かれた。劇場版では第15話を改めて描く。テレビアニメ第15話は、ファーストガンダムの制作当時、スケジュールの都合で外部のスタジオに外注したこともあり、ザクIIが細身で、“鼻”が長いなど作画が安定しなかった。劇場版ではCGで、異形のMS-06F ドアン専用ザクを表現しており、小形プロデューサーは「作画崩壊を再現していいのか? 富野さんに怒られるのでは?と考えていましたけど、(メカデザイナーの)カトキ(ハジメ)さんとYAMATOWORKSさんにやってもらうからには、結果格好よくなると思っていたので、信頼してお願いしました」と明かした。

 3Dディレクターを務めたYAMATOWORKSの安部保仁さんは「カトキさんと一から話をさせていただき、いろいろなアイデアを受け取りながら、特徴的な鼻のフォルムなどを作っていきました。カトキさんが実際に当時の作画崩壊といわれるあの顔を描かれてデザインを模索されていて、それを受けて悩みつつも最終的にはすてきなデザインになったかなと思います」と語った。

 RX-78-02ガンダムが大地に立つシーンが話題になると、森田さんは「まず今回の作業工程として、3Dを紙に落とし込んで、その中から原画を選んで、安彦さんに全部チェックしていただき、その修正が入ったものに、さらに(キャラクターデザイン・総作画監督の)田村(篤)さんが修正や補足を入れてくださいました。僕らがそれを取り入れていくという形で進めました」と説明。安彦監督はCGの動きが柔らかいことに驚いたといい「手描きのアニメーターでも、金田伊功だってこんなデフォルメしないぞ!と驚きました(笑い)」と絶賛した。
 

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