解説:「機動戦士ガンダム 水星の魔女」は何が新しかったのか? “ガンダムらしさ”も

「機動戦士ガンダム 水星の魔女」のガンダム・エアリアル(改修型)の立像
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「機動戦士ガンダム 水星の魔女」のガンダム・エアリアル(改修型)の立像

 人気アニメ「ガンダム」シリーズの新作テレビアニメ「機動戦士ガンダム 水星の魔女」の最終回となる第24話が7月2日、MBS・TBS系の日曜午後5時のアニメ枠“日5”で放送される。同作は、企画当初から若い世代に向けた“新しいガンダム”を作ろうとした。アニメが放送される毎週日曜は同作に関連するワードがSNSをにぎわせるなど大きな反響を呼んでおり、関係者によると、プラモデル(ガンプラ)をはじめとした関連商品も好調で、若い世代の新規ファンを獲得しているという。「水星の魔女」は、何が新しかったのだろうか?

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 ◇ガンダムを知らない世代へ

 シリーズ第1作「機動戦士ガンダム(ファーストガンダム)」がスタートしたのは1979年で、40年以上前だ。“21世紀のファーストガンダム”とも呼ばれ、新規ファンを開拓した「機動戦士ガンダムSEED」がスタートしたのも20年以上前の2002年までさかのぼる。テレビアニメシリーズが放送されるのは、2015年10月に第1期がスタートした「機動戦士ガンダム 鉄血のオルフェンズ」以来、約7年ぶりだった。人気シリーズではあるが、歴史が長いこともあって、初心者には敷居が高く感じるかもしれない。

 「水星の魔女」の第7話「シャル・ウィ・ガンダム?」で、ミオリネ・レンブランは「私たちの世代は、ガンダムなんて知らないし」と言い放つ。ミオリネの言葉は、「ガンダム」シリーズを知らない若い層の思いを代弁しているようにも聞こえた。

 アニメを手がけるバンダイナムコフィルムワークスの岡本拓也プロデューサーは「10代の人たちからお話を聞くタイミングがあって、その時『ガンダムは、僕らのものじゃない。僕らに向けたものではない』という言葉があったんです。その言葉が刺さったんです」と話していた。

 40年以上の歴史があるのだから「何から見ていいのか分からない」「難しい作品らしい」と敬遠されることもあるかもしれない。「水星の魔女」は「10代の身近にある環境から作品をスタートするのがいいのでは?という話の中から、学園を舞台にするということになりました」と舞台設定を考えた。

 ◇舞台は学園 女性主人公

 「水星の魔女」の“新しさ”の一つが、学園を舞台にしたところだ。学園から物語がスタートする「ガンダム」はあったが、「水星の魔女」はこれまでとは違った。「水星の魔女」では戦争も描いているが、学園を中心としたストーリーにすることで、「これまでの『ガンダム』のような地球対宇宙、国家対国家の戦争は、若い人にとって実感が湧きづらいのでは?と考えていました。重い、人が死ぬから見ないという人もいらっしゃいます。今の10代にとって入りやすく、身近に感じていただくことを意識しています」と間口を広げようとした。

 もう一つの“新しさ”がテレビアニメシリーズとしては初めて女性を主人公としたところだ。“新しさ”はあるが「女性主人公だからこうしよう!などと作為的なものを入れていることはないですね」という。「水星の魔女」は「多様性が当たり前になっている世界」が舞台となっている。女性だから、男性だからということは、強調されていない。

 「ガンダム」シリーズを手掛けるバンダイナムコフィルムワークスの小形尚弘エグゼクティブプロデューサーは「これまでの『ガンダム』シリーズ作品も若い女性に見ていただいていましたが、『水星の魔女』は若い女性の活躍を前面に描いていることもあり、より多くの方に応援していただいていると感じています」と話しており、多様性を自然に描くことで、新規ファンを獲得できたところもあるようだ。

 ◇富野監督から受け継がれるもの

 忘れてはならないのが、「水星の魔女」だけが“新しいガンダム”ではないということだ。シリーズの生みの親である富野由悠季監督が、ロボットアニメの常識を覆してきた歴史がある。

 小形プロデューサーは、同シリーズについて「時代に合わせてとってつけたようにダイバーシティーな作品になったわけではありません。富野監督は女性の活躍も描いてきましたし、これまで当たり前のようにやってきたことなんです。『ガンダム』とは何か?という定義は難しいところもあるのですが、これまでも、それぞれの時代にさまざまな世代がチャレンジしながら、作品を作ってきました。若い世代の新しいチャレンジを包容するくらい広い定義なんです。それが『ガンダム』シリーズの強みだと思っています」とも話していた。

 「水星の魔女」は「ガンダム」シリーズの強みも内包しており、“ガンダムらしさ”を感じるところもある。多様性が自然に受け入れられている世界ではあるが、戦争がなくなったわけではない。宇宙居住者のスペーシアン、地球居住者のアーシアンは、経済格差が広がっており、分断、衝突しており、戦争の残酷さも描いている。

 小形プロデューサーが「新しい方にどうやったら入っていただけるかということを考えつつ、これまでの『ガンダム』のよかった要素を織り込み、『ガンダム』として丁寧に作っています。キャラクターのドラマをきちんと描き、表現することで、共感性が高まっています。若い人に、自分たちの『ガンダム』であると思っていただきたかった。そこが明確になっています。監督、脚本らスタッフの手腕が大きいと感じています」が話すように、“新しさ”はあるが「ガンダム」であることはブレていない。

 「水星の魔女」は、「ガンダム」シリーズを次の世代につなげる大きな役割を果たしているようだ。“新しいガンダム”の結末はいかに!? 最終回の展開が注目される。

 「水星の魔女」のキャッチコピーは「その魔女は、ガンダムを駆る。」で、多くの企業が宇宙に進出し、巨大な経済圏を構築した時代のA.S.(アド・ステラ)122が舞台となる。モビルスーツ産業最大手・ベネリットグループが運営するアスティカシア高等専門学園に、辺境の地・水星から主人公の少女スレッタ・マーキュリーが編入してくる。Season(シーズン)1が“日5”で2022年10月~2023年1月に放送された。Season2が4月にスタートし、7月2日の放送で最終回を迎える。

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