解説：「鬼滅の刃」刀鍛冶の里編の激戦　半天狗、“喜怒哀楽”鬼、憎珀天、玉壺　声優陣の熱い戦い

　吾峠呼世晴（ごとうげ・こよはる）さんのマンガが原作のアニメ「鬼滅の刃」のテレビアニメ「刀鍛冶の里編」。今年4～6月に放送され、圧倒的な映像で表現された鬼殺隊と上弦の鬼との激戦、声優陣の熱演が大きな話題を呼んだ。そのクオリティーの高さから、毎話ツイッターでは「神作画」「体感5分」といったファンの称賛のコメントが並び、関連ワードがトレンドを席巻した。ファンの感動を呼んだ激闘を解説する。

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　◇半天狗が4体に分裂　キャストも話題に　「演技のぶつけ合い」も

　「鬼滅の刃」は、家族を鬼に殺された竈門炭治郎が、鬼に変異した妹・禰豆子を人間に戻すために旅立つ……というストーリー。原作は、2016～20年に「週刊少年ジャンプ」（集英社）で連載された。テレビアニメ「刀鍛冶の里編」は、鬼殺隊の武器である日輪刀を手がける刀鍛冶たちが住む刀鍛冶の里を舞台に、鬼との戦いが描かれた。炭治郎、妹の禰豆子のほか、炭治郎と同期の鬼殺隊士・不死川玄弥（しなずがわ・げんや）、霞柱・時透無一郎（ときとう・むいちろう）、恋柱・甘露寺蜜璃（かんろじ・みつり）がメインキャラクターとして登場した。

　刀鍛冶の里には、上弦の肆・半天狗（はんてんぐ）、上弦の伍・玉壺（ぎょっこ）という2体の上弦の鬼が襲来。序盤は、炭治郎たちと半天狗の4体の分裂体との戦いが繰り広げられた。放送前に声優の古川登志夫さんが半天狗を演じることが発表されていたが、4体の分裂体は梅原裕一郎さん、石川界人さん、武内駿輔さん、斉藤壮馬さんという若手の人気声優が演じ、ファンを驚かせた。

　分裂体の猛攻に苦戦を強いられる中、玄弥は何度倒されようとも立ち上がり、禰豆子は強烈な蹴りと血鬼術の爆血（ばっけつ）で応戦。炭治郎が禰豆子の血によって燃えて赤くなった爆血刀で、ヒノカミ神楽 日暈（にちうん）の龍 頭舞い（かぶりまい）を放ち、次々と鬼たちの首を斬る迫力の戦闘シーンも描かれ、「作画がすごすぎる」「ufotableの極上の神作画」とアニメを制作するufotableを絶賛する声が多く上がった。

　放送時のインタビューで、炭治郎役の花江夏樹さんは「ちょっと強くなったところが見せられるようなお芝居のプランを要所要所で入れられるかなと思って演じました」と語っており、炭治郎の説得力のある“成長”を表現しようとした。これまでは自分より上の世代の先輩声優が鬼を演じることが多かったが、分裂体は同世代の声優陣が演じていることもあり、これまでとは違った心境で収録に臨んだ。「今回は『自分が引っ張っていくぞ』ぐらいの気持ちで、演技のぶつけ合いみたいなのがあったかなと思いました」と、収録でも声優同士の熱い戦いが繰り広げられていたようだ。

　◇絶体絶命の危機に甘露寺蜜璃参上　格好いい！可愛い！強い！恋の呼吸

　半天狗の4体の分裂体を追い詰めたかと思いきや、新たに登場したのが、分裂体4体が合体した憎珀天（ぞうはくてん）。山寺宏一さんが憎珀天を演じた。半天狗の本体を古川さん、分裂体を梅原さん、石川さん、武内さん、斉藤さんが演じたこともあり、憎珀天が登場するやいなやSNSではキャストを巡るさまざまな予想が繰り広げられた。山寺さんを予想する人は少なく、キャストが明かされて驚いたファンも多かったようだ。

　憎珀天は、喜怒哀楽の4体の鬼の力を使う木の竜を放ち、炭治郎、禰豆子、玄弥を追い詰め、絶体絶命の危機に陥った時、恋柱・甘露寺蜜璃が駆け付け、華麗な登場シーンが話題になった。

　憎珀天の木の竜による怒涛の攻撃をさばいていく甘露寺だったが、あと一歩のところで強力な攻撃を受け、気を失ってしまう。憎珀天のとどめの攻撃が迫る瞬間、炭治郎たちに助けられた甘露寺は“本気”を出し、リボンのようにしなる日輪刀を操り、縦横無尽に迫りくる木の竜を一網打尽にした。甘露寺は、新体操の選手を思わせるアクロバティックな動きを見せ、「格好いい」「可愛い」「強い！」とファンを魅了した。

　◇霞の呼吸の息をのむ美しさ　無一郎VS玉壺の悪口合戦！

　霞柱・時透無一郎は、上弦の伍・玉壺と戦いを繰り広げた。玉壺は、体が壺（つぼ）とつながり、何本もの手が生えた異形の鬼で、自身が襲った刀鍛冶を使って“作品”を作るような残虐な振る舞いで無一郎を激怒させる。玉壺役の鳥海浩輔さんの怪演も話題になった。

　無一郎は、過去の記憶をなくしていたが、玉壺との戦い、炭治郎とのやり取りの中で記憶を取り戻し、“覚醒”。無一郎が放つ霞の呼吸はどの型も美しく、中でも第9話で描かれた漆ノ型 朧（おぼろ）は「思わず息をのむ美しさ」「格好いい」と話題になった。ufotableは、これまでも鬼殺隊の隊士の“呼吸”を圧倒的な映像で表現してきたが、無一郎を包む白いもや、剣を振るった際に美しく青く光る残像などで、霞の呼吸を幻想的に表現した。

　無一郎役の河西健吾さんの演技も霞の呼吸の魅力をより際立たせた。河西さんは霞の呼吸を表現する上で「あえて息を入れない」ことを意識したと語っており、戦闘中の刀を振る際の息、ジャンプして着地する際の息をほとんど入れていなかったという。

　玉壺と無一郎の戦いでは、互いに罵り合う“悪口合戦”もファンの注目を集めた。無一郎は、玉壺の自慢の壺や言動などを徹底的に批判し、抜群の“煽り”スキルを発揮。玉壺を大いにイラ立たせた。河西さんは、鳥海さんとの収録を「楽しかった」と語っており、玉壺をイライラさせるための表現を模索していたという。

　多くのファンの心を震わせた「刀鍛冶の里編」の激戦。新作テレビアニメ「柱稽古編」が制作されることも話題になっている。今後、声優陣、スタッフがどんな熱い戦いを見せてくれるのか、期待せずにはいられない。