解説:「ONE PIECE FILM RED」 アンコール上映もなぜ“異例”のヒット ファンの心をくすぐる仕掛け

10月28日に開催された「ONE PIECE FILM RED」のアンコール上映を記念した舞台あいさつの様子
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10月28日に開催された「ONE PIECE FILM RED」のアンコール上映を記念した舞台あいさつの様子

 尾田栄一郎さんの人気マンガ「ONE PIECE(ワンピース)」の劇場版アニメ「ONE PIECE FILM RED」(谷口悟朗監督)。2022年8月6日から今年1月29日まで177日間にわたってロングラン上映され、興行収入が約197億円、観客動員数が約1427万人を記録するなど大ヒットした。10月20日からアンコール上映が実施され、興行収入が約3億円を記録し、合わせて200億円を突破したことも話題になっている。既に「Amazon Prime Video」でも配信されているにもかかわらず、アンコール上映にファンが押し寄せている。なぜ、同作は多くの人を魅了したのか? その魅力を解説する。

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 ◇“四皇”赤髪海賊団が活躍 シャンクス登場のいきさつ

 「ONE PIECE FILM RED」は、主人公ルフィの旧知で、同作のオリジナルキャラクターで世界的歌姫のウタをめぐる物語。ウタが、大海賊・四皇のシャンクスの娘という衝撃の事実が明らかとなる。ウタは、名塚佳織さんが声優を務め、歌手のAdoさんが歌唱パートを担当した。

 「ONE PIECE」の劇場版シリーズの最高となる興行収入を記録するほどの大ヒットで、配給の東映の2022年の年間興行収入が過去最高の約325億6366万円を記録したことも話題になった。ウタの人気も高まり、映画という作品の枠を飛び出し、キャラクターとしてリアルの音楽番組やイベントに出演。「第73回NHK紅白歌合戦」にも紅組歌手として出場した。マンガ、アニメのキャラクターが紅白歌合戦に歌手として出場するのは初めてのことだった。

 多くのファンの心をつかんだのが、シャンクス率いる赤髪海賊団の活躍だ。赤髪海賊団は海軍から「幹部たちも個々に名を挙げ、高い懸賞金アベレージを誇り、最もバランスのいい『鉄壁の海賊団』」と評される“最強格”の一団だが、これまで原作では活躍する描写が多くはなかった。

 「ONE PIECE FILM RED」では、赤髪海賊団の本格的な戦闘が初めて描かれた。また「フィガーランド家」という映画公開時に連載でも未登場だったワードが飛び出したことなど、ファンの心をくすぐる仕掛けも用意されていた。入場者プレゼントの小冊子では、赤髪海賊団のさまざまな情報も明らかとなり、多くのファンが劇場に足を運ぶきっかけとなった。

 谷口監督はMANTANWEBのインタビューで、シャンクスが登場することは「尾田さんの提案」だったと明かしていた。シャンクスは「ONE PIECE」の重要なキャラクターということもあり、谷口監督は「最初は出したらまずいだろうと思ったんです」という。

 「でも、シャンクスを絡めた方が絶対にいい。いいんだけど勝手に出しちゃうわけにもいかないから、なんとなく影がちらつくくらいの落としどころなのかな?と尾田さんに相談したら『出していいですよ』という話になったんです。助かりました」

 今作は、原作者の尾田さんが総合プロデューサーを務めた。原作者が深く関わることで、魅力的な作品になったことは間違いないだろう。

 ◇Ado×豪華アーティストの相乗効果

 Adoさんが歌を担当したウタのライブパートも魅力だ。これまでも「ONE PIECE」の劇場版シリーズには、主題歌に人気アーティストが起用されてきたが、今作は世界的歌姫ウタが中心のストーリーということもあり、音楽にはかなりの力が入っている。劇中楽曲は、主題歌「新時代」を含め全7曲が制作された。

 楽曲を手掛けたのは、音楽プロデューサーの中田ヤスタカさん、澤野弘之さん、ロックバンド「Mrs. GREEN APPLE(ミセスグリーンアップル)」、音楽ユニット「FAKE TYPE.」、シンガー・ソングライターの折坂悠太さん、Vaundyさんといった豪華アーティスト。

 さまざまな音楽性のアーティストが集結し、Adoさんはインタビューで「この方にもお願いするんだ! 歌姫という肩書でこういうジャンルの楽曲も歌うんだ!」と驚いたことを明かしていた。

 Adoさんと豪華アーティストの相乗効果はすさまじく、「新時代」「私は最強」「逆光」の3曲が公開前に先行配信されると、瞬く間に各音楽チャートをにぎわした。映画だけでなく、楽曲もヒットした。

 開催中のアンコール上映では、応援上映も行っている。ライブ会場にいるような「臨場感」「一体感」を楽しめる応援上映と、今作の相性の良さは抜群だ。多くのファンが、劇場ならではのウタのライブの“熱”を感じ、足を運んでいるようだ。

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