機動戦士ガンダムSEED FREEDOM:福田己津央監督に聞くMS裏話 ゲルググ、ギャン、ズゴック登場の理由 「ドラグナー」への思い

「機動戦士ガンダムSEED FREEDOM」の一場面(c)創通・サンライズ
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「機動戦士ガンダムSEED FREEDOM」の一場面(c)創通・サンライズ

 人気アニメ「機動戦士ガンダムSEED」シリーズの完全新作「機動戦士ガンダムSEED FREEDOM」が1月26日に公開された。「SEED FREEDOM」には、ライジングフリーダムガンダム、イモータルジャスティスガンダムなど新MS(モビルスーツ)が登場。ゲルググメナース、ギャンシュトローム、ズゴックなど懐かしのMSがモチーフの新機体も話題になっている。福田己津央監督に「SEED FREEDOM」のMSの裏話を聞いた。

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 ◇ギャンは元々イザークの機体

 「機動戦士ガンダムSEED」は、遺伝子を調整し、生まれながらにして優れた身体能力や頭脳を持つ人類(コーディネイター)と自然のままに生まれた人類(ナチュラル)の戦いを描いたアニメ。2002年10月~2003年9月に放送され、続編「機動戦士ガンダムSEED DESTINY」が2004年10月~2005年10月に放送された。

 「SEED FREEDOM」はテレビシリーズに続き、大河原邦男さん、山根公利さんらがメカニックデザインを担当した。ライジングフリーダムガンダム、イモータルジャスティスガンダムはその名の通り、フリーダムガンダム、ジャスティスガンダムの系譜にある新MSだ。

 「ライジングフリーダムとジャステス、ほぼほぼ共通のパーツで作られています。制式採用なので、後で数をそろえられるように、パーツを共有した方がいい。大きなリクエストはないです。プラモデルを作る側、(アニメ用の)モデルを作る側で、それぞれが独自の解釈をして、立体映え、画面映えするかを考えています」

 テレビシリーズには、ザクウォーリア、グフイグナイテッド、ドムトルーパーなど「機動戦士ガンダム」のMSの名を冠した機体も登場した。「SEED FREEDOM」にもゲルググメナース、ギャンシュトローム、ズゴックが新登場した。

 「ドムまでやったんだから、次はゲルググ、ギャン……までいきました。アッガイもやろうとしたけど、『ガンダムビルド』シリーズでやっていますからね。ズゴックに変更しました。基本は、大河原さんに全部お任せしています。武装についてはいくつか注文しました。ギャンは最初、ランスを持っていたのですが、盾とランスを持ったら、ビームを撃てないのでやめました。ギャンシュトロームは、グフイグナイテッドを流用したところもあって、元々はイザークの機体です。だからあの色なんです。アグネスは自分寄りにするために、目元に赤を入れています。ヒルダ機には付いていません」

 ◇SEEDっぽさとは?

 福田監督はこれまで「スタッフと技術の新旧の融合。アナログの良さも生かしつつ、時代に合わせた新しい『ガンダムSEED』を目指しております」とコメントしたことがあった。MS戦もアナログと3DCGを駆使することで新たな表現を目指した。

 「とりあえずビームは高速で動かしてください、ミサイルは画面に残るようなスピードで飛んでませんと言っていました。新たなスタッフが『SEED』をすごく研究してくれています。でも、『SEEDってこうですよね?』と言われると、僕と(メカニカルアニメーションディレクターの)重田(智)さんが、え!?そうだっけ?となることがありました。君たちのその技は後半まで待って、最初は違うから……。最初にMSが発進して変形するところで、すごいスピードで動いていたんです。それは『SEED』っぽくない。リアリティーを大事にしてほしくて、トリッキーな動きをなるべく外そうとしました」

 「機動戦士ガンダムSEED」シリーズといえば、派手な動きの印象もあるが、そういうわけではないらしい。

 「『SEED』っぽいと言われるのは大体、後半戦のことですよ。スタート当初の『SEED』のMSの動きは、リアル系を意識しています。重いリアル系の動きからスタートして、どんどんスピードが上がることで、パワーが上がり、強くなっていることを表現する演出でした。テレビシリーズで2年かけてやったことを、今回は2時間の映画の中で、表現しようとしました。最初はリアルな動きで作っています」

 ◇戦艦へのこだわり

 「SEED FREEDOM」は「愛」「資格と価値」が大きなテーマになっている。福田監督は、映像表現に関しては「自分的なテーマとして一番こだわったのは戦艦を格好よく見せたいという一点です」と話す。

 「『ガンダム』のモビルスーツの戦闘は、ある程度の型がある。作品ごとに見せ方があるし、そこに携わっているスタッフの作法もあるのですが、大体どの作品も戦艦が重視されていない。そこを格好よく見せようとした。僕は船が好きなんですよ。絶対にちゃんとやろうと思ったのは、戦艦が飛翔するところです」

 新造戦艦としてミレニアムが登場する。

 「これまでの戦艦は大体、前方や真ん中に翼がある。ただ、絶対に後ろに付けてほしいとお願いしました。上から見るとデルタになる。非常にオーソドックスなのですが、これが戦艦や戦闘機を一番格好よく見せるシルエットだと思っています。単純な文法だし、今までと変わらないから、みんなやりたがらない。あえてやってくださいっていうお願いをしました」

 ◇「ドラグナー」への強い思い

 テレビシリーズは「機動戦士ガンダム」をはじめとした宇宙世紀作品へのリスペクト、オマージュが込められていた。「SEED FREEDOM」も同様にリスペクトを感じるところがある。

 「映画をご覧なって全てのネタが分かったら大したもんですよ。『ドラグナー』っぽいところもありました。最終回と同じようなカット割りもあります。僕が演出したのですが。大張(正己)さんもいますしね」

 「ドラグナー」とは1987~88年に放送された「機甲戦記ドラグナー」のことだ。「機甲戦記ドラグナー」は、大河原さんがメカデザインを手掛け、福田監督が演出、大張さんがオープニングアニメやメカ作監を担当した。福田監督は、同作を手掛けた神田武幸監督を師と仰いでいる。「SEED FREEDOM」には「機甲戦記ドラグナー」のキャバリアーのようなメカも登場する。

 「こういうことを言うと怒られるかもしれないのですが、決して当たった作品ではないんですよ。ただ、スタッフみんなで何とかよくしようと頑張った作品なので、思いは強いです。いつかもっとメジャーになってほしいと思うタイトルの一つです。よくできた作品なんですけど、演出などでそれを生かせなかったところもあります。僕もその時は全くのペーペーでしたしね。毎日、与えられた仕事をこなすだけでして、そういう意味ではじくじたる思いもあります」

 「SEED FREEDOM」はMS、戦艦などの表現にこだわり抜いた。福田監督が完成報告会見で「皆さんなら20回ほど楽しめると思います」とも話していた通り、何度も見たくなる。見る度に発見があるはずだ。

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