機動戦士ガンダムSEED FREEDOM:福田己津央監督から“ラクス”田中理恵へ ミーア誕生秘話も 手紙全文

「機動戦士ガンダムSEED FREEDOM」の舞台あいさつに登場した(左)から福田己津央監督、下野紘さん、田中理恵さん、保志総一朗さん
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「機動戦士ガンダムSEED FREEDOM」の舞台あいさつに登場した(左)から福田己津央監督、下野紘さん、田中理恵さん、保志総一朗さん

 人気アニメ「機動戦士ガンダムSEED」シリーズの完全新作劇場版「機動戦士ガンダムSEED FREEDOM」に登場するラクス・クラインの生誕記念舞台あいさつが2月4日、新宿ピカデリー(東京都新宿区)で開催され、キラ・ヤマト役の保志総一朗さん、ラクス役の田中理恵さん、オルフェ・ラム・タオ役の下野紘さんが登場した。2月5日のラクスの誕生日を記念した舞台あいさつで、サプライズで福田己津央監督が、田中さん、ラクスについてつづった手紙が読まれた。

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 福田監督の手紙は長文で「両澤は本当に目を掛けていた」「あなたのおかげで、ラクスは魅力的で記憶に残る存在になりました」などとつづられていた。「両澤」とは、福田監督の妻であり、テレビシリーズのシリーズ構成、脚本を手掛けた両澤千晶さんのことで、2016年に亡くなった。「SEED FREEDOM」では後藤リウさん、福田監督と共に脚本としてクレジットされている。

 「SEEDが終わった後、またDESTINYでラクスをやるという段階で、両澤はミーアというキャラを作りました。理恵ちゃんに合わせた役を作りたかったようです。まあ理恵ちゃんは二役ということで大変だったと思いますけど、結果は良かった。特にミーアの最後のミーアの日記のモノローグは今も記憶に残ってます」とミーア・キャンベルの誕生秘話も明かされた。

 田中さんは「感動しすぎて……涙腺が崩壊してしまいました」と感涙。サプライズで福田監督が登壇し、田中さんに花束を渡し、ピンクのハロなどがあしらわれた誕生日ケーキもプレゼントされた。

 「機動戦士ガンダムSEED」は2002年10月~2003年9月、続編「機動戦士ガンダムSEED DESTINY」は2004年10月~2005年10月に放送された。これまでの「ガンダム」シリーズのファンに加え、多くの女性層を獲得し、“21世紀のファーストガンダム”とも呼ばれている。ガンプラ(プラモデル)も好調で、小学生を中心に“第二次ガンプラブーム”を巻き起こすなど大きなムーブメントとなった。

 「SEED FREEDOM」は「SEED DESTINY」の続編で、福田己津央監督らテレビアニメのスタッフが再集結した。劇場版は、2006年に制作が発表されたものの、その後は長らく続報が途絶えていた。発表から約18年の時を経て、公開されたことも話題になっている。1月26日に公開され、9日間で興行収入が18億円を突破するなどヒットしている。

 ◇福田己津央監督の手紙全文

 田中理恵様へ

 ラクス・クライン誕生日おめでとう。そして理恵ちゃん。ガンダムSEED放映から20年以上ラクス・クラインを演じてくれて、ありがとう。理恵ちゃんの声と芝居がキャラクターに深みと感情の豊かさを与えてくれて、ラクスがファンの人たちにとっても特別なキャラクターになったと思います。特に今回のFREEDOMは良かった。

 そして透き通るような歌声は、今回は披露することはできなかったですが、ラクスというキャラクターの思いを伝えてくれる素晴らしいものでした。理恵ちゃんの熱意と才能によって、ラクスが生き生きと画面の中で動き、ファンの共感を呼び起こしてくれました。

 20年前を覚えていますか? ラクスとしての初めてのアフレコ。どちらかといえば、メインキャストの中では後発で参加する形でしたが、それでも現場に早く溶け込もうと、必死に頑張っている理恵ちゃんの姿が今も思い出されます。あの当時はキャストのほとんどが声優事務所所属で、理恵ちゃんは普通の芸能事務所? でしたっけ? 少しアフレコの所作とか、皆との関わりが若干微妙だったことは覚えています。

 そのことは特に両澤が気にしていました。やはりSEEDのメインキャストの一人ですから。そしてこれから物語の上で大きな役割を果たさなければいけない人で。両澤はあなたにとても期待をかけていました。だからあれこれと世話を焼いて、結構うるさい姑になっていたと思います。

 理恵ちゃんは何役でオーディションを受けたか覚えていますか? 一番最初のオーディションに実はラクスはいないんです。理恵ちゃんはフレイでオーディションを受けていました。結果は桑島さんになりましたが、理恵ちゃんも候補として残っていたのです。

 そこで両澤が、ラクスに理恵ちゃんを推してきました。両澤はラクスを演じられる人は、フレイができる人だけって、恐ろしいことを言ってました。ラクスもフレイも表裏両極端な芝居を要求されることが多かったということですね。歌も聞いて、レコード会社からも凄く上手いかただと太鼓判をいただきましたので、ラクスとしてのオーディションはしなかったのです。覚えてますかね?

 両澤は本当に目をかけていたと思います。ガンダムという注目されるタイトルで、そしてまだ20代だった理恵ちゃんのプレッシャーは相当だと言っていました。ましてヒロインとして他にカガリとフレイがいる。その中で存在感を出していかなくてはならないのですから。よく1年やり切って、成長してくれたと思いました。

 SEEDが終わった後、またデスティニーでラクスをやるという段階で、両澤はミーアというキャラを作りました。理恵ちゃんに合わせた役を作りたかったようです。まあ理恵ちゃんは2役という事で大変だったと思いますけど、結果は良かった。特にミーアの最後の「ミーア」の日記のモノローグは今も記憶に残ってます。

 あの時は両澤も、大変なスランプでした。実は狙った形で物語が進んでいなかった。デュランダルと対峙できるほどにカガリが仕上がってなかった。そしてラクスにはデュランダルを討つべき、明確な理由がない。

 困り果てた時、ミーアを起爆剤に出来ると両澤は思ったようです。ミーアの死が、ラクスの怒りと使命感を呼び起こすという最終局面につながったわけですから、ミーアがデスティニーのラストを作り、この映画の発端とラクスの成長の物語を作ったと言えるわけです。

 本当にこの20年は出会いと別れの連続でした。私たちは数々の人と出会い、共に笑顔を分かち合いました。友人、仲間、恋人、夫婦、家族、私たちの人生に彩りを添え意味を与えてくれる存在。しかし、出会いは別れとも結びついています。私たちは愛しい人を失い涙しました。その痛みは心に深く刻まれ、喪失感を与え、大切なものの尊さを思い出させてくれました。出会いと別れは私たちの人生の旅路の一部であり、その重みが私たちを成長させてくれました。

 これからも新しい出会いと別れは訪れるでしょうが、それは私たちの命の豊かな一部であり、その中で新たな感動と成長を見つけていくでしょう。泣き、笑い、出会いと別れ。たとえガンダムSEEDが終わったとしても、私たちの物語はこれからも進んでいきます。ガンダムSEEDの中でラクスはあなたのおかげで魅力的で記憶に残る存在になりました。
その貢献に心から感謝します。

今後の活躍も楽しみにしております。ありがとうございました。

追伸、そういえば下野くん。
オルフェも誕生日おめでとう。…一応ね。

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