高さ約18メートルの動く実物大ガンダムを設置する横浜・山下ふ頭のGUNDAM FACTORY YOKOHAMA(GFY)が3月31日をもって営業を終了した。GFYは、2020年12月19日にオープンし、2022年3月に終了予定だったが、継続を望む声も多く、公開期間が2度延長され、約3年3カ月で約175万人が来場した。最終日に開催されたイベント「GUNDAM FACTORY YOKOHAMA GRAND FINALE ~To the New Stage~」で、“ガンダムの生みの親”の富野由悠季監督が「子供たちが本当に喜んでくれて、こういうものを自分たちも追いかけるぞ!という顔を見せてもらった。そういう会場を設けてくれたことは、本当にうれしいと思います」と語っていたことが印象的だった。動く実物大ガンダムを通じて、ものづくりを学んだ子供も多かったようだ。
ウナギノボリ
解説:新たな“最高峰”を目指したガンプラ 45周年のこだわりとは
実物大ガンダムを動かすプロジェクトは、2014年に「ガンダム GLOBAL CHALLENGE」として始動した。ガンダムが人類とスペースノイドの戦いをくぐり抜け、機体は失われたと言われていたが、山下ふ頭近郊でパーツが大量に発見され、エンジニアたちが研究、分析、再構築した……という設定。
実現可能性、安全性、デザインなどを考慮して、研究者、エンジニアなどが検証、設計した。腕や脚が可動し、歩行しているかのような動き、両腕を上げるポーズ、腰をわずかにかがめ、少し上を向く発進ポーズ、名シーンのラストシューティングをイメージして右腕を上げるポーズなどが可能。
GFYでは、小中学生を対象に、動く実物大ガンダムの仕組みを学ぶ教育プログラム(社会科見学)を積極的に実施していた。2022年に横浜市内の小学生の社会科見学の様子を取材した際、動く実物大ガンダムの重量は約25トンで「小学生862人分」と例えるなど子供にも分かりやすく説明しつつ、専門性の高い構造、プログラムなどについても解説していた。
参加者が「すごい!」と目を輝かせたり、「いっぱい書きたいことがある」と笑顔でリポートを見せてくれたのが印象的だった。社会科見学の参加をきっかけに、ロボットや機械工学技術に興味を持った子供も多いはずだ。
同施設と動く実物大ガンダムは、解体され、今後の展開などは未定。最終日に開催されたイベントで、テクニカルディレクターの石井啓範さんは「機会があれば、人が乗るモビルスーツを作ってみたい」とも話していた。動く実物大ガンダムの復活、さらなる進化にも期待が高まる。
富野監督は「絵空事でしかものを考えてこなかった人間が、具体的に社会にこういうものを作ってもらうことによって、何が起こるかを教えてもらった。本当に勉強させてもらいました。そういう意味では少し大人になったという実感を持たせてもらったというのが、年寄りの感想です。本当にこういう機会をいただきましてありがたく思います。これだけのことができるんだよ、と見せてもらったという意味では、本当にうれしく思っています」と“富野節”で感謝していた。
動く実物大ガンダムに衝撃を受けた子供たちが、“本物のガンダム”を作る未来だってあるかもしれない。
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