中尾隆聖:「アンパンマン」インタビュー(1) ばいきんまん演じて36年 ただの悪役ではない魅力

「それいけ!アンパンマン」でばいきんまんを演じる中尾隆聖さん
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「それいけ!アンパンマン」でばいきんまんを演じる中尾隆聖さん

 やなせたかしさんの人気絵本が原作のアニメ「それいけ!アンパンマン」の劇場版最新作「それいけ!アンパンマン ばいきんまんとえほんのルルン」が6月28日に公開される。キャッチコピーは「ばいきんまんが愛と勇気の戦士に!?」で、アンパンマンとばいきんまんが力を合わせて大活躍するというこれまでにないアニメになる。テレビアニメがスタートした1988年から約36年にわたってばいきんまんを演じ続けている声優の中尾隆聖さんは「初めてのことですよ」と驚いている。中尾さんに、ばいきんまんへの思い、劇場版最新作について聞いた。

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 ◇どこか憎めないばいきんまん

 劇場版最新作では、ある日、一冊の絵本を見つけたばいきんまんが、絵本から「愛と勇気の戦士ばいきんまん、助けにきて!!」と声が聞こえ、絵本の中に吸い込まれてしまう。砂漠の先に広がる大きな森で出会ったのは、森の妖精・ルルンで、怖がりで勇気が出せないルルンは、森で大暴れする“すいとるゾウ”をやっつけてほしいとばいきんまんにお願いする。最初は嫌がりながらも、諦めずに立ち向かうばいきんまんの姿にルルンは勇気が湧いてくる。しかし、すいとるゾウの強さに大苦戦し、絶体絶命のピンチの中、ばいきんまんはルルンに「アンパンマンを呼んでこい!」と伝える。上戸彩さんがルルン、岡村隆史さんがすいとるゾウをそれぞれ演じる。

 「びっくりですよね。テレビは36年、劇場版は35作目ですが、ばいきんまんが愛と勇気の戦士に!? そんな!?と思いました。子供たちが見て、大丈夫かな?と少し心配になりましたが、すごく面白いです。これまでの劇場版は、最初からアンパンマンが大活躍して、ばいきんまんは途中から出てきていたずらをすることが多かったのですが、今回は最初からばいきんまんが活躍しています。不思議ですよね。初めてのことですよ」

 ばいきんまんは悪役ではあるが、憎めない。ばいきんまんにも正義がある。

 「やなせ先生は『アンパンマンがいるからばいきんまんがいて、ばいきんまんがいるからアンパンマンがいる』とおっしゃっていましたが、陰と陽のように、お互いになくてはならない存在なんです。パンの中にも菌がいて、それがなくなれば成り立ちません。でも、悪役ではあるんです。悪役だけど、どこか憎めないし哀愁があるばいきんまんでありたいとずっと思っています。子供たちはアンパンマンが好きだけど、『バイバイキ~ン』『ハヒフヘホ~~!』とまねしてくれますよね。それがうれしいんですよ」

 ◇演技に変化も

 “名優”である中尾さんだからこそ、どこか憎めないばいきんまんを表現できるのだろう。

 「低年齢の子供が見ている番組ですし、どんな悪い言葉を使っても毛嫌いされないようにすることに一番気を付けています。嫌われてもいいのですが……と難しいところなんです。先生は『ばいきんまんは僕がやりたかったんだよ』とおっしゃっていて、そのことがずっと心に残っていますし、やっぱり大切にしなくてはいけません。ただの悪役ではないことは意識しています」

 約36年にわたって演じ続ける中で変化もあった。

 「最初の頃の声を聞くと、随分違いますよね。もっと声を潰していました。段々慣れてきて自分に近くなっているかもしれません。最初は喉を酷使していました。コロッと変わったわけではなく、少しずつ変わっていたんですね」

 インタビュー(2)に続く

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