7月25日(木)にオンラインセミナー 「課題先進国モルディブ:小島嶼国の未来の行方」を開催

セミナーで使用されたスライドより(C)髙城元生
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セミナーで使用されたスライドより(C)髙城元生

プレスリリース詳細 https://kyodonewsprwire.jp/release/202409066005

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海面上昇適応と地域格差是正のためのインフラ整備がもたらす課題

2024年9月10日

公益財団法人日本グローバル・インフラストラクチャー研究財団

【画像:https://kyodonewsprwire.jp/img/202409066005-O2-Goy96hLO

 公益財団法人日本グローバル・インフラストラクチャー研究財団(所在地:東京都港区、理事長:中山幹康、略称:日本GIF)は、2024年7月25日(木)午後2時から、Zoomを利用したオンライン形式にて、独立行政法人国際協力機構(JICA)モルディブ支所長の髙城元生氏を講師に、「課題先進国モルディブ:小島嶼国の未来の行方」と題し、セミナーを開催しました。

開催趣旨

 インド洋に位置するモルディブ共和国(以下モルディブ)は、小さな島が散らばる美しいリゾートであると同時に、小島嶼国のフロントランナーとして注目すべき国の一つです。近年、モルディブは大規模な観光開発を進め、国民の所得は急激に向上しました。漁業を中心としたこれまでの産業構造が変化し、特に首都マレを中心とする地域では、人々の生活様式や価値観も変わりつつあります。

 一方、モルディブはサンゴ礁の砂礫で国土が形成されている環礁国であり、平均海抜が約1.5mと低いため、気候変動による海面上昇の影響を最も早く受けると考えられています。政府による海岸防護事業や、緑の気候基金(GCF)を活用した協力事業などのほか、埋め立てによる人工島の造成、島の拡張などの開発事業も進んでいます。これらの事業費による財政圧迫の懸念や、対外債務国である中国・インドとの関係、埋め立てによる開発が環境に及ぼす影響などの課題を抱えるモルディブは、これからどこに向かうのでしょうか。

 今回のセミナーでは、JICAモルディブ支所長の髙城元生氏を講師にお迎えし、モルディブの現状について、現地から最新情報をお伝えいただきました。

講演要旨

1.モルディブの概要

・インドに近い場所に位置し、26の環礁に沿って1,192の島で構成

・人口51万5千人(38万人がモルディブ人、4人に1人は外国人)

・首都のマレに41%の人口が居住、住民島の半数以上は人口1,000人未満の小さな島

・宗教はイスラム教、主要産業は観光業、名目GDPでは高中所得国に相当

2.モルディブの地域格差

・上水道の整備率:マレ首都圏は97%、他は15%

 下水道の整備率:マレ首都圏は100%、他は26%といずれも格差あり

・多次元貧困指数(MPI:健康や生活水準などの要素を加味した多次元貧困指数):

 マレは貧困率13%、他は87%と格差あり

3.政府による取り組み(地域格差解消に向けて)

・国全体での上下水道整備や空港へのアクセス向上を目指している

・2000年代まで5~6だった空港数を現状の18から37まで増やす予定

・インフラ整備には公共部門投資予算(略称「PSIP予算」)を割り当て

4.財政への影響

・インフラ整備事業は国の財政的な負担となり、政府の財政収支は常に赤字

・財政赤字を埋め合せるため、公的債務残高が近年増加している

・対外債務が41%、主要債権者は、中国、インド、湾岸諸国の機関が中心

5.環境への影響

・インフラ整備事業の環境への影響も懸念される

・人為的改変(港建設による海岸侵食、埋め立てによるリーフ消失等)の影響発生事例あり

・埋立事業による海水温度上昇はサンゴ礁の死滅率を高める(白化現象)

6.JICAの協力事例「気候変動に強靭で安全な島づくりプロジェクト」

・ICZM(統合沿岸域管理)計画に沿った海岸保全/防護対策により自然海浜やサンゴ礁の持つ自然の防護機能が維持され、持続性のある形で海岸侵食を軽減

・養浜(砂)など自然素材の活用により、海浜・サンゴ礁域に対する環境負荷を抑制

テトラポットなど人工的な構造物に比べ財政的負担も抑えられる

7.まとめ〜今後の行方

・観光:今後も経済の主軸。来年予定される国際空港のターミナル拡張により訪問観光客数200万人超えの見通し

・財政:財政は厳しいが、観光客増による外貨収入に期待

・環境:開発に伴い、自然資源(サンゴ礁や海)の環境負荷は高まる。環境保全に対する啓発、教育が重要(例;小学校での環境教育、リゾートでの環境保全活動等)

・対外関係:債務国のインド、中国に偏らず小国ゆえのバランスを意識

・課題:高齢化問題(20人に1人が65歳以上)、所得水準向上に伴う廃棄物問題等

・潜在性:島が点在しているという弱点をカバーするIT活用(遠隔医療、リモート教育等)

 講演後の質疑応答では、首都マレへの人口集中の懸念、JICAが実施している養浜事業の進捗、離島での環境教育、廃棄処理問題等について活発な質問が飛び交いました。

セミナー終了後のアンケートによると、「財政・環境への影響」や、「モルディブの地域格差や政府の取り組み」のパートへの関心が高かったことがわかりました。この他にも参加者からは多くの質問や意見が寄せられ、モルディブの未来の行方への高い関心が見て取れました。

セミナー概要

主  催: 公益財団法人日本グローバル・インフラストラクチャー研究財団(日本GIF)

日  時: 2024年7月25日(木)14:00~15:30

名  称: オンラインセミナー「課題先進国モルディブ:小島嶼国の未来の行方」

開催形式: Zoomを利用したオンライン形式(ウェビナー)

講演者: 独立行政法人国際協力機構(JICA)モルディブ支所長 髙城 元生

司会者: 坂本 晶子(日本GIF事務局長)

参加費: 無料

動 画: https://gif.or.jp/seminar_youtube/maldives-3/

講師略歴

髙城 元生(たき もとお)

【画像:https://kyodonewsprwire.jp/img/202409066005-O3-oZe7kT12

独立行政法人国際協力機構(JICA)モルディブ支所長

2022年5月より現職。海外勤務はインドネシア事務所(2001〜2005年)及びパキスタン事務所(2013〜2017年)駐在に続き3度目。JICA本部では主に技術協力事業の案件形成・実施監理・事後評価業務に従事。この他、国際協力銀行(JBIC)出向や九州大学出向(特任教授)も経験。1996年ロンドン大学(SOAS)大学院修了(経済学修士)。国際開発学会、日本評価学会所属(評価士)

モルディブ関連では朝日新聞デジタル版に取材記事が掲載

『ハネムーンで人気のモルディブってどんな国?親中派政権誕生の実態は』(2023年11月9日掲載)

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