解説:「黒牢城」キャスティング&撮影秘話をPが明かす 「VIVANT」「8番出口」の河内大和、歌舞伎女形の坂東新悟ら個性派集結

映画「黒牢城」の場面カット(C)米澤穂信/KADOKAWA (C)2026映画「黒牢城」製作委員会
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映画「黒牢城」の場面カット(C)米澤穂信/KADOKAWA (C)2026映画「黒牢城」製作委員会

 米澤穂信さんの傑作ミステリーを、本木雅弘さん主演で映画化した「黒牢城」(黒沢清監督)が6月19日に公開され、ヒット中だ。初週末興行ランキングで邦画1位の好スタートを切り、6月21日までの累計動員は19万6400人、興収2億7400万円、週末興行ランキング邦画1位、動員2位の快挙となった(興行通信社調べ)。有岡城という閉ざされた巨大な密室で、城主である荒木村重と籠城しているのは胸に野心や疑念を秘めた一癖も二癖もあるキャラクターたち。実力派であり、個性豊かな面々がそろった理由について、制作プロデューサーを務めた石田聡子さんは「『黒沢清監督による初の時代劇』への期待値の高さということに尽きると思います」と話した。石田さんがキャスティングや撮影秘話を明かした。

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 ◇関わった全員が黒沢清監督のビジョンに「ワクワク」 「全員の個性が際立っていた」

 「黒牢城」(英題:THE SAMURAI AND THE PRISONER)の原作(角川文庫/KADOKAWA)は2021年に刊行され、第166回直木賞と第12回山田風太郎賞のダブル受賞など数々の賞に輝いた人気作。戦国時代の有岡城が舞台。君主・荒木村重(本木さん)は暴虐な織田信長のやり方に反発し、籠城作戦を決行するが、怪事件が次々と起こる。容疑者は密室と化した城内に居る家臣や身内の誰か……。誰もが疑心暗鬼になっていく中で、村重は牢屋に囚われた危険な天才軍師・黒田官兵衛(菅田将暉さん)と共に事件の解決に挑む……という戦国系心理ミステリーだ。黒沢監督にとってキャリア初の時代劇となり、5月に仏カンヌで開催される第79回カンヌ国際映画祭のカンヌ・プレミア部門に正式出品された。

 キャストには、本木さん、菅田さん、吉高由里子さん、青木崇高さん、人気グループ「Snow Man」の宮舘涼太さん、柄本佑さん、オダギリジョーさんら日本の映画界を代表する豪華な顔ぶれに加え、ユースケ・サンタマリアさん、吉原光夫さん、坂東龍汰さん、荒川良々さん、渋川清彦さん、渡辺いっけいさん、さらに歌舞伎俳優の坂東彌十郎さんの長男で女形の坂東新悟さんや、シェークスピア劇など舞台中心の活動からTBS系日曜劇場「VIVANT」(2023年)でドラマ初出演を果たし、2025年公開の映画「8番出口」の歩く男役の強烈な存在感でブレークした河内大和さんら、ジャンルを超えて個性派が集結した。

 石田さんはその理由について、「私自身も黒沢監督が本企画にご賛同いただいた時には、心が躍りましたが、この作品に関わった全キャスト・全スタッフ、どんな作品が生まれるのかワクワクしながら、企画にご参加いただいたように感じています」と関わった全員が黒沢監督のビジョンに突き動かされていた様子を明かした。

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 撮影現場については、「季節を追うごとに変わっていく城内の空気を全員で作っていく現場でした。映画は四季の四つのブロックにわかれていて、一つの季節にしか登場しない、あるいはワンシーンしか出てこないキャラクターもいますが、それぞれのたたずまいや、座り方・立ち方・発声一つをとっても、皆さん唯一無二の役を作り上げてくださったように感じています。軍議や夜襲のシーンなど大人数が登場する場面では、ともすると大勢の中の一人、ということになりかねないのですが、本当に素晴らしい個性と実力を持った俳優さんたちに集結していただいたことで、さらなる奥行きと説得力のあるシーンが生まれました。全員の個性が際立っていたのが印象的です」と語る。

 ◇河内大和は「自身の真っすぐさとマッチした」役 妖艶で何を考えているか分からない信長役は

 密室の心理戦を手に汗握るものにしたのは俳優陣の熱演も大きな要因になっている。

 村重に仕える家臣の一人、人一倍責任感が強い伊丹一郎左衛門役の河内さんに関しては、「曲者ぞろいの家臣たちの中でも、少し色の違う生真面目さと実直な一郎左を真摯(しんし)に演じていただきました。河内さんご自身の真っすぐさと、とてもマッチングした役になったように感じます。キャスティングさせていただいたのはセンセーショナルな登場となった『8番出口』で注目される前でしたが、もともと本木さんに憧れていらした、ということで、本木さんとの共演をとても喜んでいらした姿が印象的です」と河内さんの素養と役柄が見事な化学反応を起こしたと振り返る。

 わずかワンシーンの登場で強烈な恐怖を植え付けた織田信長役の坂東新悟さんの起用については、「ワンシーンだけの登場ながら、強烈な印象を残す信長役、ということで黒沢監督といろいろと検討した結果、普段は歌舞伎で女形を演じていらっしゃる坂東新悟さんにお願いしました。妖艶で何を考えているか分からない人物、恐怖を一瞬にして植え付け、それが村重にとってどうしても抜けない棘(とげ)となって刺さっている、という不気味さを存分に醸し出していただきました。声の出し方や歩き方なども歌舞伎の時とは全く違うように演じてくださっていたので、歌舞伎ファンの方々にも非常に新鮮に映るのではないかと思います!」とその異色で圧倒的な存在感を語る。

 村重の若き家臣・北河原与作を演じた坂東龍汰さんについて、石田さんは「本人は普段はとてもにこやかで穏やかなのですが、今回は笑顔を封印して、家臣軍団の中でも珍しく殿(村重)に食って掛かる血気盛んな若者を演じていただきました。黒沢組は2度目ですが、黒沢監督からの信頼も厚く、安心・安定の与作でした。現場で『ダブルリョウタ』と盛り上がっていた宮舘涼太さん演じる助三郎とのもみ合いにも注目です」と若き才能のぶつかり合いを語った。

 同じく村重に仕える坊主頭の豪傑な僧兵・瓦林能登入道役の吉原さんが放つすごみについては、「長年、『レ・ミゼラブル』のジャン・バルジャン役をはじめ、ミュージカルや舞台でご活躍されている吉原さんですが、たたずまいだけでも圧倒的な迫力と存在感のある能登入道を演じていただきました。途中で石垣を駆け上り、まるで大きな舞台の上から下にいる人たちに語りかけるようなシーンがあるのですが、マイクいらずの良く通る太い声はとにかく圧巻で、ものすごく説得力がありました」とその演技を絶賛する。

 ◇細部にまでこだわり抜いた面白い遊びがたくさん潜んでいる

 豪華キャストだけでなく、黒沢監督のもとに日本映画界の至宝ともいえるスタッフ陣が集結し、こだわりが結集した。石田さんは、観客に向けて「とにかく黒沢監督のこだわりが詰まっている作品です。時代劇ならではの立ったり座ったりという縦の動き、ふすまが開いているのか閉まっているのかで見え方の変わる日本家屋の奥行き、まるで白黒映画のような光のコントラスト、美術や衣装、ロケ地選び、自由自在に動き回るカメラに、木の影一つをとっても、細部にまでこだわり抜いた面白い遊びがたくさん潜んでいます。ぜひ、そんな一つ一つの隠れたこだわりを発見しつつ、映画をご覧になる皆さんも有岡城の住人の一人になったつもりで、どっぷりとこの世界に浸ってほしいです!」と映画をさらに楽しむための注目ポイントを熱く語った。

 京都の撮影所が誇る職人技と最前線のテクニックが融合された「黒牢城」。時代劇の枠組みを超越し、緻密な計算と圧倒的な熱量で制作された黒沢組の極上の心理戦を映画館で堪能したい。(細田尚子/MANTAN)

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