ワンピース
第1178話 歴史と未来を守れ ロビンとギャバン出撃
9月13日(日)放送分
人気アニメ「魔法少女まどか☆マギカ」の新作劇場版アニメ「劇場版 魔法少女まどか☆マギカ〈ワルプルギスの廻天〉」が8月28日に公開された。新作劇場版アニメは、2013年10月公開の「劇場版 魔法少女まどか☆マギカ [新編]叛逆の物語」以来、約13年ぶり。「まどか☆マギカ」はそれまでの魔法少女アニメの常識を覆したとも言われている。特に、可愛いマスコットのような見た目に反して残酷な地球外生命体・キュゥべえの存在は、視聴者に衝撃を与えた。キュゥべえ役の声優の加藤英美里さんは、いかにして「まどか☆マギカ」、キュゥべえに向き合ってきたのだろうか。
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「まどか☆マギカ」は、過酷な運命を背負う魔法少女らの姿を描いたオリジナルアニメで、テレビアニメが2011年に放送された。新房昭之さんが監督を務め、シャフトが制作。蒼樹うめさんがキャラクター原案、虚淵玄(うろぶち・げん)さんが脚本、梶浦由記さんが音楽を担当するなど豪華スタッフが集結した。新作「ワルプルギスの廻天」は、総監督の新房さん、脚本の虚淵さんら豪華スタッフが再集結した。
「これまでにも『まどか☆マギカ』に関連するさまざまな展開で、キュゥべえを演じる機会はありましたが、やはり劇場版として正統な続編となると、全く異なる緊張感がありました。物語として改めてキュゥべえに向き合い演じるとなると、気合の入り方が違ってきます。今回の作中でキュゥべえがどのような動きを見せるのかという点も、非常に気になるところでした。演じる側としても相当なエネルギーを注入しなければ成立しない、大変な役柄だと再認識しました」
キュゥべえは、少女の願いを一つだけかなえてくれる魔法の使者。可愛らしいキャラクターではあるが、魔法少女が絶望して魔女になる際のエネルギーを回収するシステムを担っている。テレビアニメが放送されると、キュゥべえは大人気キャラクターになった。
「キュゥべえは、作品の枠を飛び出してファンの方々の間で独自の成長を遂げている感覚があります。キャラクター自体の設定や性質が変わるわけではないのですが、作品を待ってくださっている期間中、ファンの皆さんが作品や登場人物について深く考察し、それぞれの解釈を拡大させていらっしゃいます。そうした多様な解釈から生じるプレッシャーがありました。ファンの皆さんの深い理解に対して、自分の解釈がしっかりと追いつけているだろうかという不安もありました。しかし、実際に演じるのは私自身です。そこは自信を持ち、一度自分の中でキュゥべえをフラットな状態にリセットしたうえで、気合を入れて収録に臨みました」
エネルギーを回収するというキュゥべえの目的は一貫している。残酷に見えるところもあるが、悪意はない。ブレないキャラクターでもある。
「基本的に演じる上でのスタンスは変えていないつもりです。ただ、魔法少女や人間という存在に対する見方や捉え方に関しては、キュゥべえの中でも変化が生じているのではないか、と私自身はそう解釈しています。テレビシリーズのキュゥべえは、人間や魔法少女をおおむね想定通り、思い通りに動かせる対象として扱っていました。しかし、鹿目まどかが概念となり、暁美ほむらが悪魔となるような事態は、キュゥべえにとっても完全に想定外の出来事だったはずです。人間という存在が、キュゥべえにとってより注意深く観察すべき対象に変化したのだと思います。テレビシリーズのときとは異なるアプローチで人間を観察しているのではないか、というのが私の解釈です。今回の『ワルプルギスの廻天』においても、キュゥべえにとっては予測し得ない底知れぬ存在や、イレギュラーな現象が巻き起こっています。そうした底知れない状況に対峙しているという心理状態を意識して、収録に臨みました」
キュゥべえは、いかなるイレギュラーに対しても淡々と対応しているようにも見える。
「テレビシリーズでまどかが概念化した際も、キュゥべえとしては当然、想定外の事態に驚愕していたはずです。ただ、キュゥべえには設定上、感情が存在しません。そのため、取り乱すような分かりやすい感情表現をするのではなく、言葉の選び方やニュアンスを通じて、隠しきれない驚きを提示しています。目の前で起きた現象を即座に解釈し、咀嚼しながら観察を続けています。人間のように直接的な言葉で驚きを表明するのではなく、全てを『なるほどね』と受け止め、自分の中で明確な答えやロジックが導き出されるまでは、表面上は動揺を見せずに行動を選択しているのだと考えています。いわば、淡々と確認作業や検証を繰り返しているわけです。自分の中で納得のいく答え合わせをして、何が起きているのかを客観的に理解しようと努めている存在なのだと捉えています」
キュゥべえはいつでも冷静で冷徹だ。魔法少女の絶望が描かれる中、キュゥべえが言葉を発すると空気が変わるようにも感じる。
「私自身は感情を一切動かさないよう徹底しています。魔法少女たちの視点で物語を捉えることはせず、常にキュゥべえとして『心の波風が一切立たない凪(なぎ)のような状態』で物事を捉える感覚です。劇中の出来事に対して感情移入を一切遮断しているため、ある種、純粋な情報としてしか物語を捉えていない節すらあります。そのため、作品を楽しまれている皆様よりも、私の方が物語の全体像を理解できていないところもあるかもしれません(笑)」
加藤さんは、魔法少女に感情移入せずに、キュゥべえの視点から「まどか☆マギカ」に向き合っている。
「役者としては感情移入をして演じる方が楽なのですが、キュゥべえとして感情を遮断しようとすると、物語の展開を咀嚼しきれないんです。だからこそ、皆様と一緒に収録できたことは非常に貴重でした。共演者の皆様のお芝居を現場で拝見することで、このキャラクターはこの場面で感情が強く出ているんだ……と客観的に見ることで、作品への理解を深めることができました。キュゥべえという役の立場としても、現場で周囲の芝居を直接体感できたことは大変助かりました」
キュゥべえに感情はないが、機械のようにしゃべるわけではない。バランスが絶妙だ。
「キュゥべえは劇中で状況の説明役を担うことが多いため、基本的には客観的な観察者としての目線を崩しません。感情自体は存在しないものの『人間であればこういう場面でこうした発声をするだろう』『驚いたときにはこのような表現をとるだろう』という、人間らしい会話のロジック自体は理解しているのだと捉えています。演じる際の感覚としては、感情を乗せるのではなく『音符を打ち込んでいくような感覚』に近いかもしれません。完全に機械的なわけではないんです。相手を特定の方向へ誘導したいというキュゥべえの思惑があるセリフは、意図的に分かりやすくしたり、節々で計算された表現を組み込む工夫を凝らしています。テレビシリーズの初期の収録では、まだキュゥべえの正体を知らされずに演じていました。例えば『早く願い事を決めるんだ!』という叫びもありましたし、そうした初期の表現があったからこそ、単なる無機質なロボットにとどまらない、キュゥべえなりの言葉の表現幅が生まれたのだと思っています」
「わけがわからないよ」。キュゥべえを象徴する名ゼリフだ。功利主義を貫くキュゥべえは、宇宙存続という目的のために、少女個人の苦痛を無視しようとする。人間の倫理観や感情的な対話も通じない。キュゥべえには数々の名ゼリフがある。
「ファンの方々の間で大きく話題になるセリフとは少し違うのかもしれませんが、私の中で最も強く記憶に残っているのは、テレビシリーズでキュゥべえがさやかに対して『これが本来の痛みだよ』と彼女のソウルジェムを踏みつけるシーンです。魔法少女の真実を直視させるあのシーンは、演じていて手応えがあり、正直に申し上げると、少し楽しかったという感覚すらありました。魔法少女たちにとっては極めて残酷な真実を突きつける場面で、収録では魔法少女のキャストから魂を削るような悲痛な演技が聞こえてくるんです。その悲痛な声を聞けば聞くほど『なぜそこまで悲しむんだい?』『わけがわからないよ』という思考になり、演技にエンジンがかかっていくようでした。冷徹なキュゥべえの精神と自分の演技が完璧にリンクした瞬間でもあり、今でも強く印象に残っています」
キュゥべえが冷徹であればあるほど、視聴者は魔法少女に感情移入する。
「キュゥべえほど徹底して冷徹なスタンスを貫ける役柄というのはめったにありません。徹底して冷徹に見えることで、キュゥべえに対して憎しみや怖さを抱いてもらえると感じていました。私が少しでも魔法少女に寄った感情を持って演じてしまっていたら、キュゥべえが中途半端に可愛らしく見えてしまいます。作品の持つ緊張感を損なわないためにも『君たちは何を言っているんだい?』『聞かれなかったから答えなかっただけだよ』というスタンスを崩さないようにしました」
新作「ワルプルギスの廻天」でもキュゥべえは基本的にブレない。
「スタッフの方からも『キュゥべえはキュゥべえだからね』というお話がありました。私自身としても、根本的に変わっていないと思います。ただ、キュゥべえ自身が把握できていない事象が数多く発生しています。また、新キャラクターと会話を交わすシーンがあるので、『どのような関係性にあるのか』『どのような目的や距離感を持って接しているのか』については確認しました。もっとも、キュゥべえは誰に対しても基本的にフラットであり、特定の誰かを特別扱いすることはありません。特別だったのは、まどかだけで、それ以外の存在に対しては一貫して同じスタンスを保っています。お互いに利害関係が一致すれば行動を共にし、不一致が生じれば離れる。常に合理的な基準のみで動いているのは変わりません」
加藤さんはさまざまな作品に出演している人気声優だが、「キュゥべえ役の」と紹介されることも多い。加藤さんにとって「まどか☆マギカ」、キュゥべえはどんな存在になっているのだろうか。
「私の声優人生の大きなターニングポイントとなった存在です。その後、別の作品に出演した際も『キュゥべえがよぎる』と言っていただけることもありました。ほかの作品の出演発表でも『キュゥべえの声優』と紹介される機会も多く、それだけ大きな影響力を持った作品、役に巡り合えたことには感謝しかありません。アニメ史に深く刻まれる作品の一部になれたことは、声優として最高の誇りです」
自身のターニングポイントとなった「まどか☆マギカ」で、「ワルプルギスの廻天」でもブレずにキュゥべえを“凪”のように演じ切る加藤さん。新たな波乱が待ち受けるであろう新作で、その冷静沈着な演技がどのような衝撃をもたらすのだろうか。(阿仁間満/MANTANWEB)
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