薬屋のひとりごと
第49話 蝗
10月2日(金)放送分
創作集団「CLAMP(クランプ)」の人気マンガ「魔法騎士レイアース」の新作テレビアニメが、テレビ朝日のアニメ枠“IMAnimation W”で10月7日から毎週水曜午後11時45分に放送される。原作は、少女マンガ誌「なかよし」(講談社刊)で1993~96年に連載された伝説の異世界冒険マンガ。1997年発売のOVA(オリジナル・ビデオ・アニメ)「レイアース」以来、約29年ぶりの新作アニメで、テレビアニメシリーズが放送されるのは1994~95年に放送された前作以来、約31年ぶり。新作アニメはキャストが一新され、声優の佐倉綾音さん、大久保瑠美さん、高橋李依さんが、突然異世界に招喚され、伝説の魔法騎士(マジックナイト)となる獅堂光、龍咲海、鳳凰寺風をそれぞれ演じる。令和の時代に伝説を受け継ぎ、新たな魔法騎士を演じる3人に収録の裏側、作品に懸ける思いを聞いた。
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佐倉さん 瑠美さんとはとても久々にご一緒するんです。私は10代の時に出演したアニメで瑠美さんと一緒に1年間レギュラーをやっていて、それ以降はがっつりご一緒することが減ってしまったので、10代から30代になった私を瑠美さんがどう見ているのかなと気になっていました。特に瑠美さんが「レイアース」のファンだということも知っていたからこそ、光役が佐倉綾音であることをどう受け止めているかなと。そこはもうシビアで構わないし、とても気を遣ってくださる気もしたので、真っすぐぶつかってもらえるといいなという思いもあり、いろいろな緊張感を瑠美さんには感じていました。
大久保さん (笑)。
佐倉さん 高橋さんは、ちょこちょこしかご一緒したことがなくて。真面目で真っすぐで熱心な方だというイメージはあったので、その風ちゃんらしさみたいなものをオーディションで発揮されたのかな、高橋さんが演じる風ちゃんはどういう感じなのかなと楽しみにしていました。あと、お二人は同じ事務所で私だけ違うので、上手に仲間に入れたらなと思っていました(笑)。
大久保さん 私は「はー! 解釈一致!」って思いました。
佐倉さん そうなんですね!
高橋さん (拍手)
大久保さん あと、キャストを見た時に、自分に求められているものが見えた気はしました。自分が制作側でこのメンツを見たら「あ、こういうものが作りたいのかな」というのが見えてくるような、そんなキャスティングだなと私は思いました。あやねる(佐倉さん)は、いろいろなところで活躍している姿を見ていましたし、もちろん役者として信頼していたのでどんな光を見せてくれるのか楽しみだなと。光の動きによって海の心情もだいぶ変わってくるので。李依ちゃんはよくご一緒させてもらっていて、風ちゃん役に意外性があるというか。今までの李依ちゃんが演じてきた真面目で純粋な女性のキャラクターからまた一歩違うものを見せてもらえるのかなと。それが出せる役者さんだということもありますし。ただ、自分が一番やっぱり心配でした。作品を好きだからこそ、自分では客観視ができないので。だからアフレコが始まるまでは「ごめん、間違いだった」と言われる日が来るんじゃないかと、めちゃめちゃ怖かったです。
高橋さん 私は受かったという連絡をいただいた時に、一番最初に気になったのが共演するのが誰か?だったんです。もちろん「レイアース」に関われてすごくうれしいし、光栄ですし、そもそも風ちゃんの役のオーディションを受けてみてほしいと言ってもらえたことが、自分のキャリアの中でもすごくびっくりなことだったので。風ちゃん役が決まった時、「風ちゃんになりたい」より「誰と風ちゃんをやりたいか」と、そっちのほうが大きかったのかと自覚して、お二人の名前を聞いた時に「じゃあ一緒に戦える!」とすごく思ったんですよね。こんな大きなプレッシャーがあったら本当なら負けてしまう。でも、自分のできることを精いっぱいやろう、前を向こうと思える方々と一緒にいられるんだな、私もお二方の隣で前を向きたいとすごく思えるんです。一人では多分ダメだったと思うのですが、先輩方と一緒ということもありますし。綾音さんは同い年でお話ししやすいですし。
佐倉さん ありがとうございます。
高橋さん 瑠美さんは同じ事務所で、お二人ともに尊敬とお話のしやすさがあり、すごく頼もしくて。共演者の名前を聞いて、ちゃんと自分の居場所を確認した感じがありました。
高橋さん みんなそれぞれキャラクターの“色”を身にまとってやっていたなというのが印象的だなと思います。
佐倉さん 1話の収録の時にものすごく緊張していて。かつてないプレッシャーの中で臨むことになったので、何かテンションを上げたいなと思って、1話の時に真っ赤な服を着ていったんですよね。そしたらお二人も「あ、いいんだ」となってくれて。
大久保さん 最初、衣装の色に関しては、私と李依ちゃんは多分ほんのり日和(ひよ)っていたんです(笑)。
高橋さん はい(笑)。
大久保さん 李依ちゃんもそうだと思うんですけど、私も家にめちゃくちゃ青の服をいっぱい用意していて。ただ、元々CLAMP先生の作品、「レイアース」が好きと公言していたのもあって、空回りするのが怖くて、と思っていたんです。私の中であやねるって、すごく緊張するイメージがあまりなくて、いつもどっしり構えているようなイメージだったのですが、そのあやねるがすごく緊張している、気負っているものがあると1話で感じた時に、「ああ、それでも真っ赤な服を着てきてくれたんだな」と。この現場は光に引っ張っていってもらうんだなと1話の時に改めて思いました。元々「レイアース」が大好きということもあって、アフレコを最終話まで走りきる上で、なるべく楽しい、嫌な気持ちになる人がいない現場にしたいなと思っていて、李依ちゃんと一緒に、前を走ってくれるあやねるを支えられるようになりたいなと。元々、海がそういうキャラでもありますし、それをこの現場での立ち位置にしていこうという気持ちが1話の時にしっかり固まりました。
佐倉さん それで、2話からはお二人もキャラクターカラーを身にまとってきてくれて。私は1話で一人だけ真っ赤で恥ずかしいな、気合入りすぎちゃったかなと思っていたので、2話は少し控えめの服を着ていったら、お二人がガッツリの色の服を着ていたので、「あ、いいんだ」と(笑)。
佐倉さん オーディションの時に、「平成版のレイアースを意識しても意識しなくても構いません」という、こちらに委ねる感じの資料をいただいたんです。絵の面では、スタッフの皆さんが正解に向かって既に走り出しているんだと思ったのですが、そこに声を乗せることに対しても、みんながいろいろな可能性を考えて、探っていることが分かりました。どうしても私は声の個性が強いほうだとよく言われるので、前作に寄せることだけを考えると、その期待や可能性を超えていけないと思いました。平成版も知っているし、私にとっての光は(椎名)へきるさんなのですが、令和に新しく打ち立てる「レイアース」という面では、直球で勝負したいという思いがありました。
佐倉さん オーディションの時は原作のシーンがしっかり抜粋されていて、そこに自分で原作の絵を貼り付け、光の表情と動きが分かるような資料を作って受けたのですが、ワンシーンだけオーディションなのに何度もリテイクしたシーンがあったんです。その時点で、一緒に音響監督の阿部(秀平)さんと監督が「私たちの中で何が違うんだろうな」と一緒に考えてくれて。そこで、「私は今、原作の絵を強く踏襲して演じているんですけど、もっとそこから膨らませた表情にしたほうがいいですか?」と聞いた時に「それで一回やってみてください」とのことで、かなり膨らませた形でやったら「それでいただきます」と言われ、合格をいただくことになって。「きっと、超えようとしているんだ」というスタッフさんの意識も伝わってきたので、大きな勇気になったことを覚えています。
大久保さん 3人の中で海が一番身長が高くて、面倒見のいいお姉さんポジションということもあって、オーディションの時は見た目に引きずられて大人っぽい声質の方向のお芝居をしていたんです。すると、「お母さんっぽい」と言われてしまって、忘れないで欲しいのは14歳ということだと。彼女たちは同い年の14歳の女の子だから、気持ちの面では海がちょっと大人っぽくてもいいけど、お母さんにまではならないでほしいと言われました。あと、私は原作を3冊ずつ持っているんですけど……
大久保さん 初版と、2番目に出た新装版の黄色い表紙のものと、最近出たバージョンと3冊持っているんですけど、めちゃくちゃ読んでいるせいもあって、原作を見なくても「この表情はこうだったな」というのが頭に浮かぶので、それに引っ張られて、きつく言うシーンを演じた時に「あまり嫌な子にしたくない」ともオーディションで言われました。ただ、難しいのは、そこを柔らかくしすぎると、今度は海というキャラクターの個性の一つがなくなってしまうし、先の展開で最初がものすごくきついからこそ冒険を経て変わってくるところがある。そこから、1話の収録では「お母さんにしない」を念頭に置きつつ、3人が初対面ということもあって、がっつりきつめに表現していいというディレクションをいただきました。初対面で不信感が強い時だから、疑問に思った時はきつくてもいいけど、そこから切り替えて自己紹介する時は、ちょっとツンとした美人というイメージを大事にして。海はクールっぽく見えて表情が豊かなタイプなので、あまり大人にならないようにということは考えましたね。
高橋さん 風ちゃんに関して、オーディションでいただいたディレクションとしては、おっとりしていて不思議に、という部分はベースにありつつ、人とずれた感じを出してみてほしいと。私が最初にやったテイクから、アプローチとして「ちょっとずらして」「もっとずらすとどうなる?」という方向で、どの辺りの塩梅まで存在できるかという部分を聞いていただきました。ただ、マイペースゆえのずれ具合でもあるので、一度大きなずれ具合を聞いてもらった上で、実際のアフレコでは「ここのシーンだけもうちょっとずらそう」という部分調整でもいいのかなと感じて。なので、常にずれているというよりは、基本彼女の中で理論が立っている会話として捉えつつ、瞬間の采配を任せていただいているのかなと感じています。
佐倉さん 異世界ワードが結構出てくるので「平成版の時はこう言ってたっけ?」という確認もありましたね。
大久保さん 一番最初はザガート問題だったよね。
佐倉さん 「ザ」と「ガ」のどちらにアクセントを置くか……。
大久保さん どっちも間違いではないけど、平成版とあえて違うことをする必要ってあるのかなと。自分が見ていて思うんですけど、「平成版の時はこう言ってたのに言い方が違うんだな」と感じると、ある意味ノイズになってしまう。そこに気持ちが持っていかれちゃうと、視聴者としてはもったいないなと思うので、それは平成版と合わせたザガードでいいんじゃないですかね、ということをみんなで話していました。
佐倉さん 意味のある変化と意味のない変化を見極めて、意味のない変化はなるべく排除していこうという形で、音響面は気をつけていたというか。あと、原作のセリフをなるべく変えないというのが今回の脚本のテーマだったので、みんな原作を片手に「ここはちょっと言い回しが違いますが、何か意味がありますか?」「いや、これはやっぱり原作通りに戻そう」という調整をしていました。
高橋さん そうですね。皆さんに聞いたら何でも返ってくるし、一緒に考えてもくれる。みんなが全部当事者ごとというか、他人事にしないのは、すごくいいチームだなと感じていました。
佐倉さん 確かに「ここは自分のシーンじゃないんですけど」みたいなことも多くて。
大久保さん そうそう!
高橋さん ありましたね!
大久保さん つかんだというのとは違うんですけど、海に関しては6話がいわゆるお当番回になるんです。平成版のアニメにもそのシーンはありましたが、原作と全く同じではなかったんです。今回は、原作とほぼ同じように描かれていて、何回も原作で読んできたシーンを自分が海役として演じるという。ファンの私と海を演じてる私、それを俯瞰(ふかん)で見ている3人目の私がいるような不思議体験、奇跡体験みたいな感覚が強かったです。あの話数を経なければ、海というキャラクターの完成までいけないという意味では、大きな意味のある話数だったなと感じています。あと、基本的に海を演じる中で、平成版の吉田(小南美)さんの芝居はあまり意識しないようにはしていたんですけど、光と風の呼び方と魔法のかけ声という二つはなるべく揃えたいという思いがあったんです。ただ、魔法のかけ声に関しては、前の言い方と同じにしていたら、完成した絵と表情が合わなくて録(と)り直しをしたんです。それをきっかけに平成版とはまた違うものを作っていくんだという意識が強くなりました。
佐倉さん 確かに、「炎の矢!」を言った瞬間に「あ、魔法騎士になったんだ」という分かりやすい手応えがありました。アフレコの中で一歩踏み出した感覚があるシーンだったなと思います。そして、アニメジャパンでお客さんの前に立った時に、やっと「あ、獅堂光の声をやってるんだ」という実感が湧いたというか。
佐倉さん アフレコは既にかなり進んでいて、光として生きているという感覚はあるけれど、自分が光役を担当することになったという自覚はあまりなくて。アニメジャパンで「もう覚悟を決めるしかないんだ」と。ただアフレコで光として生きていればいいわけではなく、獅堂光の声を演じている自分を背負わなきゃいけないんだと、ようやく自覚と覚悟が生まれたのがアニメジャパンだったなと思いました。登場前にステージの袖にいたのですが、PVが流れてクレジットが出た時のお客さんのざわめきをすごく覚えていて。それがどういうざわめきだったのか、私たちには分からなくて。皆さん、いろいろな思いがあったと思うんです。納得なのか疑問なのか、いろいろな感情がないまぜになった「おお……」という声だったんじゃないかなと個人的には分析していて、これをしっかり納得に変えていかないといけないんだなと思い、その後のアフレコもかなり熱が入りました。
高橋さん 私は、風ちゃんが風ちゃんと“対面する”シーンが描かれる5話が好きです。私がオーディションを受けるにあたって「レイアース」を読み始めて最初に好きになったシーンでした。後から入った自分ではあるけど、私が好きになった「レイアース」がここから始まっているので、自分が好きになったシーンを自分で演じたことによって、私もやっと自分の表現を大事にできるようになったかなという、覚悟が決まった感覚が生まれました。この大好きなシーンたちを、責任を持ってやり遂げたいという気持ちでした。
高橋さん 私がこの作品の中で逆に新しいと感じているのは、言葉の選び方です。CLAMP先生の紡ぐ作品は、こんなにも言葉が美しいんだと。小難しい言い回しではなくて、自分のタイミングで心の中に取り入れられるような速度感で渡してくれるところがとてもすてきだなと思っています。毎クールたくさんのアニメがオンエアされる中、たくさんの方に愛されてる「レイアース」がここにあることがなんてすてきなことなんだろうと。「レイアース」を知らなかったとしても、これから知る人生を選んでみてほしい。そう思える作品だと思います。
大久保さん 「信じる心が力になる」ということは、単純と言えば単純ですし、ものすごく当たり前ですが、意外と自分を信じきれない人や、愛する人を信じきれない人もいるでしょうし、信じるものが何なのか分からない瞬間や、自分の信じているものが崩れる瞬間もあると思うんですよね。光たちは14歳なので、これからの人生のほうが当然長い。何を信じて生きていくかがまだ見えていない、そんな彼女たちだからこそ魔法騎士として必要だったと思います。「レイアース」は、「信じる心」というワードが大きな根幹にあると考えています。作品を見た人たちにとって、「自分は何を信じるのか」「自分は大事な時に自分を信じられるのか」と見つめ直すきっかけの一つになってくれる。私は、オーディションの時に「信じる心が力になるなら、私は絶対海役に決まる」「気持ちだけなら誰にも負けない」と思っていました。もちろん、それを全員が思っていて全員が海役に受かるなら、そんなうれしいことはないんですけど、でもやっぱり一番心の強い人が受かるのなら、私はこの声優業界で一番海役をやりたいという心が強かったんだと自覚があります。「カードキャプターさくら」の「絶対大丈夫だよ」もそうなのですが、言葉の一つ一つを自分の応援ワードにしながら見てくれるとうれしいなと思っています。
佐倉さん 「レイアース」は、少女マンガという土台の中で一筋縄ではいかない裏切りであったり、ポジティブなだけじゃない展開であったり、人間としての在り方を当時新鮮に打ち出していた作品だったと思います。それに影響を受けた作品が今世の中に溢れていて、もしかしたらこれからアニメをきっかけに「レイアース」に触れようとしている方たちにとっては、見覚えのあるシーン、見覚えのある展開かもしれないのですが、この作品の根底に流れているのは愛の話。特に光は、愛情という概念にものすごく自信を持って生きている子で、それは彼女の家庭環境やそれまでの過ごし方が多分に影響していると思うのですが、この世界の中で根拠なく信じていいものは愛だけだということを、自分の人生をもってこの作品で表現してくれている。「レイアース」は今の時代にこそ必要だと感じました。本質について描き出したこの作品を今の人たちにも見てほしいなと思います。
声優陣が愛と覚悟を持って挑んだ令和の「魔法騎士レイアース」。熱い思いを、信じる心の強さを感じられるはずだ。(しろいぬ/MANTANWEB)
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