鈴木亮平:映画「予告犯」で関西弁のカンサイ役 「原作を読んだときこの役は自分だと思った」

映画「予告編」での演技について語った鈴木亮平さん
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映画「予告編」での演技について語った鈴木亮平さん

 筒井哲也さんのマンガを実写化した俳優の生田斗真さんの主演映画「予告犯」(中村義洋監督)が全国で公開中だ。法律では罰せられない人間たちの罪を暴き、制裁の予告動画を投稿しては実行していく、新聞紙を頭にかぶった謎の予告犯・シンブンシと、事件を追う警視庁のエリート捜査官と攻防を中心に、ネット犯罪の恐怖などを描く。シンブンシを生田さんが演じるほか、戸田恵梨香さんや、濱田岳さん、荒川良々さんらが脇を固める。“カンサイ”こと葛西智彦を演じる鈴木亮平さんに、役との奇妙な縁や撮影の裏話を聞いた。

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 ◇原作を読みカンサイ役を確信

 鈴木さんが演じるカンサイは、シンブンシの中で一番体格がよく、関西弁で話す気さくで面倒見がいい好漢という役どころ。映画化の話が出る前から原作を知っていたという鈴木さんは、「このお話をいただく前ですが、原作を初めて読んだとき、この役は自分だと思った」と明かす。「外見もそうだし、関西弁をしゃべることもそうだけれど、むしろ自分しかいないのではというぐらい、ぴったりだと思った」といい、「これを映画化するのだったら、自分以上にできる人はいないだろうと」と感じたと、当時の心境を振り返る。

 カンサイ役を演じることになり、不思議な縁を感じたと話す鈴木さん。監督が用意した人物設定を基に役作りを行い、「基本的に優しく包容力や思いやりがあって、すごくメンバーのことが好きな人間」をイメージし、「外見で強面だったりガテン系なところは十分クリアしているので、演技ではなるべくそういうところを出すように意識した」と説明する。そして、「陰と陽でいうとゲイツの斗真くんとノビタという濱田くんが演じた2人が陰の役なので、僕と(メタボ役の)荒川さんはちょっと明るい感じ」と分析し、「少し5歳ぐらい自分を若返らせて、そういう感じを出していこうと思った」と演技プランを明かす。

 鈴木さんといえば映画「HK/変態仮面」(2013年)やドラマ「天皇の料理番」(TBS系)など、役になり切るストイックな役作りが話題だ。「感覚ですが、この役はこれが必要だと思ったらやるし、この役は何もしないほうがいいと思ったら、何もしない」と切り出し、「カンサイみたいな役は何もしないほうがいいと思った」という。「僕自身が関西人なので、今の鈴木亮平ではなくて昔の関西にいた頃のちょっとやんちゃでテンションが高かった鈴木亮平を8割ぐらい呼び起こしてきた感じ」と笑顔を見せる。

 ◇現代に起こり得る物語と向き合う

 今作はネット犯罪を軸に物語が進行していくが、物語の内容を「実際に犯罪がネット上であったり、動画が公開されていたりするので、なくはないというか大いにあり得ると思う」と鈴木さんは切り出す。そういった描写において「コメントがリアル」といい、「原作のときから思っていたのですが、(賛否の)両方の意見がしっかり描かれているから、本当に(ネットに)書き込まれるのではというような内容」だと鈴木さんは実感し、「一方の意見だけじゃないというのがすごくリアルで、『予告犯』のうまいところだと思う」と感心する。

 さらに、「称賛だけではなく、『ちょっと待て、こいつらだめだろう』『通報しろ』みたいなところも流れている。実際のネット上の動画サイトもそうで、すごくそこが面白い」と続け、「リアリティーを高めている」と分析する。ちなみに、実際に映画のような事態が起きたとしたら、「感情的に共感できる部分はありますけど、賛成とはいかない」ときっぱり。ただし、シンブンシたちの考え方に対しては、「すごく分かるし、分からないと演じられない」と役者として共感しているといい、「彼らが自分たちのためではなくて、誰かほかの人のためにやっていることで共感を得られるし、正義とはなんだろうと考えてしまう」と核心を突く。

 鈴木さんは、カンサイらが友情を深めていく“タコ部屋”のシーンが気に入っているという。「撮っている間はスタッフもキャストも手応えを感じていたと思う」と自信をのぞかせる。切なさと楽しさが同居したようなシーンを撮る際、生田さん、濱田さん、荒川さんらとは特に相談せず、「相談しないところがよかったんだと思う。そういうことは相談したりしてしまうと、空気感というものが壊れちゃうこともある」と語る。「お互いが何をやらなきゃいけないのかを共有していると分かった時点で、普段バカ話をしている、なるべくそのままのテンションで芝居につなげていくところが気持ちよかった」と充実感をにじませる。

 ◇役者と監督の違いを語る

 初めてはまったポップカルチャーが「映画だと思う」と鈴木さんはいい、「その前から映画館には行っていたのですが、映画館に小学2年生で『ホーム・アローン2』を見に行ったのはよく覚えている」と思い出を語る。「フィクションの世界が好きだったのでは」と自身を振り返り、「演じる側の方が楽しい」とほほ笑む。「監督と役者は?」と話を振ると、「別ものなんです」と神妙な表情を浮かべる。

 その理由を「僕はその世界に入って、その世界にいることを感じているのが好きだけど、監督はそれを客観的に作り上げる仕事」と物語世界へのアプローチに違いがあると語り、自身は「どちらかというと、いろんな感情などを主観的に経験したい」と語る。将来的に映画監督への挑戦の可能性は、「将来は分からないですけど……」と考え込むも、「演じていると(その役が)“本物”と信じ込むのが仕事だから、そっちの方が楽しい」と言い切る。

 ◇見たことがない生田斗真が見られる

 完成した映画を「映画の面白い要素が全部詰まっていて、“ザ・エンターテインメント”だと思う」と評し、「ドキドキ、ハラハラ、ワクワクさせておいて、途中からエモーショナルになり、笑って泣けて、そして悲しくて、最後にどんでん返しがあり、ハッと驚くという、映画としてとても好みの作品」と絶賛する。原作との違いを「(戸田さん演じる)吉野の内面が描かれているところ」と説明し、「ゲイツの対比として描かれているところが好き」と力を込める。鈴木さん自身、対照的に描かれるゲイツと吉野では、「僕は吉野タイプ」といい、「挫折を挫折と思わないタイプで、ピンチのときの方が燃える」と自己分析する。

 今作は生田さんが主演を務めるが、「僕はこの作品の生田斗真がすごい好き」と鈴木さん。「プライベートでしか見せないような彼の優しい表情や、もちろんカッコいい斗真くんもいる」と強調。「プライベートでしか見たことがなかったような彼の表情を劇場で見られるというのにグッと(心を)つかまれた」と深くうなずき、「見どころの一つだと思うので、ぜひ楽しみにしてほしいし、女性の方にも見に来てほしい」とメッセージを送る。

 自身の役の見どころについては、あまりイメージがないといわれる「関西弁では」と話しつつ、「僕の“母国語”なので、。関西弁の方が自由に芝居ができる面もある。僕の関西弁を聞きに来てください!」とアピールした。映画は6日から全国で公開中。

 <プロフィル>

 1983年3月29日生まれ、兵庫県出身。東京外国語大学卒業後、2006年にドラマ「レガッタ~君といた永遠~」(テレビ朝日系)で俳優デビュー。07年公開の「椿三十郎」で映画初主演を果たす。以降、数多くのドラマや映画に出演し、映画「HK/変態仮面」(13年)で映画単独初出演。NHK連続テレビ小説「花子とアン」の主人公花子の夫役で注目を集める。主な出演映画に「ガッチャマン」(13年)、「TOKYO TRIBE」(14年)、「風に立つライオン」(15年)など。6月は出演作として今作のほか「海街diary」が公開され、10月には主演映画「俺物語!!」の公開を控える。

 (インタビュー・文・撮影:遠藤政樹)

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