安室奈美恵さんとのコラボ曲「REVOLUTION」が、10年ぶりにオリコン週間ランキングでトップ10入りを果たしたほか、ドラマ「オトナ女子」(フジテレビ系)の挿入歌「何度でも」や、スマートフォンの「Galaxy S6/S6 edge」のCM曲「THE LIGHT」が話題を呼んでいるCrystal Kayさん。2012年6月リリースの「VIVID」以来、約3年半ぶりとなるアルバム「Shine」をリリースしたCrystal Kayさんにアルバムのことや3年半の間の出来事について聞いた。
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――「Shine」は3年半ぶりのアルバム。前作「VIVID」から今作までの間には、事務所の移籍もありました。
現在所属している(EXILEなどが所属する)LDHは、今もっとも勢いのある事務所で、今まで以上に大きなステージがのぞめる場所だし、いるだけで刺激されまくっています。
――新天地と呼べる事務所で受けている刺激が、アルバムには詰め込まれているわけですね。
それもそうだし、ニューヨークに住んだこともアルバムを作る上では大きかったです。2013年から住んで、今年の1月に帰国したので2年くらいですが、やっぱり大変でした。一番実感したのは、自分にはアピール力がぜんぜんないということ。日本では結構ガツガツいっているほうだと思っていたのですが、向こうの人のガツガツさにはまったく太刀打ちできなくて……。
――ニューヨークでは、具体的にどういう活動を?
おもに向こうのマーケットに向けての曲を作っていました。あとはダンスレッスンを受けたりとか……。向こうでデビューできるかどうかは未知数だったけど、とにかくチャレンジしたかったんです。それで何かの形になればいいなと思っていたのですが、短い期間だったので、それはすごく難しくて。やはり向こうでは、名もないシンガーの一人でしたから、どういうふうにやればいいのか、このままでいいのか、ぶつかりながらいろいろ考える日々でした。
無名というデビュー前のような立ち位置に戻れたのは新鮮でしたけれど、向こうにも無名は腐るほどいるので、その中で「キミは何がスペシャルなの?」と、常に問われている感覚で。向こうの音楽関係者も、ガツガツ来てくれたほうが、こいつは面白いって思う。それで、アピール力という部分で、挫折も味わったわけです。
――ニューヨークに行って海外の音楽シーンに触れ、再び日本に戻って来た。その上で、自分が歌うべき音楽は見つかりましたか。
ずっと洋楽を聴いて育ったから、洋楽のサウンドがカッコいいと思っていたし、洋楽っぽいサウンドで歌いたいという気持ちが、デビュー当時はすごく強かったんです。今でもサウンドのクオリティーに関しては、妥協したくないと思っています。でも、何だろうな、それ以上に日本でこれまで積み上げてきたもの……私にしかできない、私にしか歌えないJ‐POPが、確かにあるんだということは、向こうに行って気づくことができました。洋楽に引け目を感じる必要はまったくなくて、J‐POPというものにもっと誇りを持っていいんだと、むしろ自信が湧きました。
こんなに長く一人で暮らしたことはなかったので、孤独を感じたこともあれば、壁にぶつかったこともあって。客観的になれたというか、自分自身を見つめる時間がたくさんあった。そんな中で、ステップアップしたいけれど、どうしたらいいか分からないというジレンマにも陥ったし。そういう気持ちは、25歳くらいから30歳くらいまでの間に、誰でも一度は通るんだろうってすごく思って。
それで9月に安室奈美恵さんとのコラボ曲「REVOLUTION」を歌ったときは、前向きな歌詞がすごく自分に刺さったんです。そのとき、次に出すアルバムは、聴いてくれるみんなのことを支える作品にしようって思いました。以前はどちらかというと、サウンド面にこだわりを持っていましたが、今回はメッセージとか伝えるということにフォーカスして制作しました。
――タイトルの「Shine」にはどういう気持ちを込めましたか。
同世代の女性で、私と同じようなところを通って、同じような気持ちを感じている人がたくさんいる。そういう人たちに向けて「輝け!」って、いってあげる気持ちを込めました。そういう人たちの「輝き」でもあるし、「輝け!」という応援でもあって。
自信がないときは、誰かのちょっとした言葉で自分のよさに気づけたり、この人もこういうことを感じているんだと知って、一人じゃないんだと思ったら、よし頑張ろうって思えたりしますよね。このアルバムをきっかけにして、その人しか持っていない輝きを放っていってほしいなと思いました。あと、自分自身に言い聞かせているのも半分はありますね(笑い)。
――アルバムは、いろんなビートと曲調があり、歌声も七色のように多彩な表情を聴かせています。ボーカリストとして、一皮むけた感があるアルバムですね。
ありがとうございます。実は、最近ちょっとだけ、自分の声のことが分かってきたような気がするんです。17年目で何をいっているんだと思うかもしれないですが(笑い)。あと、自分のために歌うのではなく、誰かのために歌うんだというように自然と気持ちが切り替わったのも大きかったと思います。
ニューヨークで一人暮らしをして、実際に孤独を感じたりしたことで、より実感が伴うようになったというか。伝えたいという気持ちに、リアリティーが加わったのだと思います。
――アルバムでは、R&Bデュエットの名曲「Very Special」を、三代目J Soul Brothersの今市隆二さんとカバーしていますね。
今市さんは、すごく丁寧に歌ってくれている感じで、歌を届けることにとても一生懸命な方だなと思いました。実はスケジュールの都合で、一緒にスタジオに入ることはかなわなくて。私が先に録(と)って、あとで今市さんに歌を入れていただいたのですが、完成したものを聴いたときは、意外と日本の歌謡曲っぽくなったなと思いました。日本語で歌っているのが違和感なくて、それによって逆に分かりやすくなったと思います。
――あと、ドラマ挿入歌になった「何度でも」は、ザ・Crystal Kayと呼べるような曲だと思いました。
そう思ってもらえたらうれしいです。でも、まさか自分が作詞作曲した曲が、シングルになるとは思ってなくて(笑い)。
曲作りは鼻歌で作ったり、最近ギターを始めたのでギターを弾いて作ったりするんです。「何度でも」は、ギターでコードから作っていったんです。作るのは早かったんですが、ドラマ側からの要望が多くて、それに一つ一つ応えていくのに時間がかかってしまって。仕上げるまでが大変でした。
――映画「シーズンズ 2万年の地球旅行」の日本版テーマソング「Everlasting」も、ご自身で作曲されていますね。
これは、大自然と動物の何万年もの物語というイメージで作りました。大いなる愛とか、包み込むような大きな愛の曲です。人類が生まれたのも、生物の出合いや奇跡の繰り返しがあったからこそだと思うし、そういう深さや偉大さを意識しました。
あと、マイケル・ジャクソンの感じを出したいとも少し思っていましたね。彼の曲って、そういう雰囲気のものが多くて、動物や自然が出てくるMVもけっこうあるんです。今振り返ると、曲の最初の方の緊張感は、マイケルの歌が根底にあるかもしれないです。
――来年2月にはツアーがありますが、3年ぶりということで、どんなお気持ちですか。
以前から「ツアーをやってほしい」という声をたくさんいただいていたので、やっとそれにお応えできるということで、私自身すごく楽しみです。この3年間は、イベントに出たときなどは、ずっと「VIVID」の曲をやっていましたから、新曲をパフォーマンスできるのが、とにかくうれしいですね。アルバムを聴いて、ぜひライブにも遊びに来てください!
<プロフィル>
1999年7月にシングル「Eternal Memories」でデビュー。2002年には、アルバム「ALL YOURS」が、オリコン週間ランキングの1位を獲得。13年3月からニューヨークに拠点を移して活動。14年11月からマネジメントをLDHに移籍し、15年6月にリリースしたドラマ「ワイルド・ヒーローズ」の主題歌「君がいたから」からCrystal Kayの第2章をスタートさせた。2016年2月には「Crystal Kay LIVE TOUR 2016 “Shine”」として2月12日に大阪・UMEDA CLUB QUATTRO、2月19日に愛知・Electric Lady Land、2月26日に東京・赤坂BLITZでライブを開催予定。
(取材・文・撮影/榑林史章)