劇団EXILE・青柳翔:HIRO初プロデュース映画「たたら侍」で主演 「正義と正義が交錯してできた物語」

映画「たたら侍」に主演した青柳翔さん
1 / 15
映画「たたら侍」に主演した青柳翔さん

 「劇団EXILE」の青柳翔さんが主演を務めた映画「たたら侍」(錦織良成監督)が公開中だ。映画は、EXILE・HIROさん映画初プロデュースを手がけたオリジナル時代劇で、出雲の山奥にあるたたら村に伝わる秘伝の製鉄技術「たたら吹き」を継承することを宿命づけられた青年、伍介が挫折や葛藤をしながら真の侍へと成長していく姿を描く。「EXILE」のAKIRAさん、「三代目J Soul Brothers」の小林直己さん、田畑智子さん、「E-girls」の石井杏奈さん、豊原功補さん、津川雅彦さんらが出演。主人公の青年・伍介を演じる青柳さんに話を聞いた。

ウナギノボリ

 ◇伍介の取った行動から強さを感じてほしい

 改めて自身が演じた伍介のキャラクターについて、青柳さんは「自分の守りたい、守るべき人たちがいて、そのために行動を起こすのですが、挫折して失敗し、弱い部分というかもろい部分もある。でも、そこから一歩立ち上がることができる強さを持った人」と表現し、「自分の取った行動でたくさんの人が傷ついたりもしますが、そこで最後、復讐(ふくしゅう)心にとらわれずに取った行動というのは、やっぱり伍介の強さなのかなも思う」と分析する。

 そういった伍介の強さから、「映画ならでは伝えられるメッセージがそこに一つあるんじゃないかなと思っています」と言い、「(技術を継承する)村下(むらげ)になっても周りの人を助けられないんじゃないか。だからいったん村を出て強くなって村を守りたい、という伍介の思いは、いわゆる正義ですが、村人たちの『神聖なる者が銃に使ってはいけない』『一子相伝を守らなきゃいけない』っていうのも正義。正義と正義が交錯してできた物語なのかなと思います」と作品の魅力を語る。

 伍介が「たたら吹き」を取り仕切る村下の息子という設定のため、青柳さん自身もたたら吹きを体験し、「村下や補佐する方たちが土を固めて炉を作って火をおこし、その中に砂鉄を入れて本当に三日三晩やっている(作業の)中で撮影スケジュールを組んで撮影をさせてもらいました」と言い、「村下さんたちもいい玉鋼を作りたいですし、僕らもいい映画を作りたい。タイミングなど難しい場面もありましたが、みんなで協力し合っていい映像が撮れたと思います」と手応えを語る。

 実体験を踏まえ、「2~3回、見学と体験させてもらって勉強して作品に臨ませてもらったので、ぜひたくさんの方に見ていただいて、(たたら吹きを)知ってもらえるきっかけの映画になればいい」と青柳さんは話す。

 ◇歩くシーンが伍介の心情作りのポイントに

 時代劇として時代考証をしつつも、現代的な要素も感じられる今作だが、青柳さんは「言葉もわりと現代的でしたし、(伍介はもともと)武士ではなく侍になりたい村人」ということを念頭に置き、「所作や言葉などより、クライマックスに持っていくまでの伍介の気持ちの流れがすごく重要だと思いました」と時代劇であることを意識しすぎないようにしたことを明かす。

 続けて、「お客さんもそうだと思うんですけど、僕も含めて誰もその当時のことを本当に知っている人はいない。書物でしか分からないし、それが本当かどうかも分からないから難しかったんですが、やりがいはありました」と充実感をにじませる。

 伍介の心情を表現するのには「歩くシーン」が効果的だったと言い、「何か伍介が行動を起こして、村を出て夢や希望を持って歩いて行くシーンとか、それに挫折して打ちひしがれながら歩くシーン、葛藤しながら歩く、迷いながら村に帰るなどの歩くシーンも描写されているので、すごく助けられました」と明かす。

 さらに青柳さんはデニムのような生地の服など衣装も役作りに役立ったと言い、「昔この生地が本当にあったらしく、手作りで汚しとかも入れてくださっていたので、助けられたなと思います」と感謝する。

 ◇昔の自分を笑えるようになっていきたい

 多くの共演者がいる中、小林さんやAKIRAさんの印象について、「直己さんやAKIRAさんはいつもご一緒させてもらっていますし、いつも温かく背中を押してくれる」と青柳さんは切り出し、「作品に対しての相談も、『ここ僕のせりふなくしてもいいですか?』とか、そういった話をしやすかったです」と振り返る。

 たたら村を訪れる商人・惣兵衛役の笹野高史さんや、伍介が侍になる手助けをする商人・与平役の津川さんらベテラン陣には、その存在感に圧倒されたと言い、「そこに立つだけで存在感を発揮している大先輩なので本当にすごい」と敬意を表する。

 映画の見どころとして、「本当に美しい景色にこだわって撮らせてもらった映画で、そこも見どころの一つですし、伍介の強さにも注目してほしい」と言い、“強さ”については、「伍介もそうですけど、失敗したことを素直に認めて自分の糧にできる人は強いのかなと思います」と持論を語る。

 そんな青柳さんが今チャレンジしてみたい役は「ヒューマン系の作品の悪い役」だという。その理由を、「何度か悪い役はあったのですが、救われる部分みたいなものがどこかにあって。もっと振り切った役もやってみたい」と説明する。

 今作では何度も失敗し葛藤しながらも伍介は成長していくが、青柳さん自身の今後の理想像を聞くと、「あくまでも理想ですけど……」と前置きした上で、「10年後とか、20年後に、『あのときはよかった』ではなく、今の30代の言葉とか芝居を見て自分で笑っていられるような、恥ずかしくて見ていられないぐらいの成長ができたらいいなと思っています」と強いまなざしで語った。

 <プロフィル>

 1985年4月12日生まれ、北海道出身。2009年に舞台「あたっくNo.1」で俳優デビュー後、劇団EXILEに加入。12年公開の映画「今日、恋をはじめます」で第22回日本映画批評家大賞新人男優賞を受賞。主な出演作品に、「東京難民」(14年)、「極道大戦争」(15年)、「HiGH&LOW THE MOVIE」(16年)などがある。

 (取材・文・撮影:遠藤政樹)

写真を見る全 15 枚

映画 最新記事