この「シャドウワーク インタビュー」ページは「シャドウワーク」のインタビュー記事を掲載しています。
俳優の多部未華子さんが主演を務めるWOWOWのドラマ「連続ドラマW シャドウワーク」が11月23日にスタートする。ある女性の不審死を追う刑事・北川薫を演じる桜井ユキさんと、“相棒”としてタッグを組む後輩刑事・荒木悠真を演じる人気グローバルボーイズグループ「JO1」の川西拓実さんに、作品の印象や役作り、互いの印象などを聞いた。
ドラマは江戸川乱歩賞作家の佐野広実さんによる同名小説が原作。夫からのDV(ドメスティック・バイオレンス)に苦しむ女性たちがたどり着いたシェアハウスを舞台に、彼女たちの“究極のシスターフッド”を描くヒューマン・ミステリーだ。
◇「やるからにはリアリティーを持って」
--DVという重いテーマを扱っています。最初に脚本を読んだ時の率直な感想と、どのような覚悟で作品に臨もうと思ったか聞かせてください。
桜井さん 最初にプロットを読んで原作も拝読し、率直に「やってみたい」と思いました。その反面、実際に被害に遭われた方がいて、今も出口が見えていない未解決の問題でもあるのでプレッシャーも感じました。しっかり体現できるのかという不安から迷いもありましたが、やるからにはリアリティーを持って臨みたいという思いで決めました。
川西さん 原作を読み始めたら「本当に面白い!」と夢中になり、気づいたら読み終えていました。人間の良さもダメなところも伝わってきて、こんな骨太な作品に自分が入ってもいいのかと感じたほどです。(テーマとして)実際に悩まれている方もいらっしゃるので、“責任”というものはすごく感じました。僕自身、これまでDVについて深く知る機会がなかったからこそ、こうしたテーマを避けがちかもしれない層にこそ届けたいという思いがあります。
--お二人とも刑事役ですが、キャラクターをどのように捉え、どう解釈して作り上げていったのでしょうか。
桜井さん 薫は物言いが強く、ハキハキと意見を言うタイプですが、それはあくまでも彼女の“虚勢”なんです。監督とも話したのですが、いわゆる“強い女性”という人物像にはしたくありませんでした。プライベートでは夫との関係に悩み、常に心が“揺れている”。普段はバランスを取ろうと考えるのですが、今回はあえてそのまま表現しようと試みました。
--心に揺らぎを抱えながらも強い女性として振る舞うというのは、共感できますか?
桜井さん そういうシチュエーションは意外にあるなと思うし、私自身も「自分はこう見られたいけどその強さは自分の中にない」という場合、心にぽっかり穴が開いたままの自分みたいな感覚は思い当たる部分もあって。その定まっていない部分が薫の人間臭さであり、魅力だと感じました。薫の人間性に共感できる部分とできない部分は半々くらいなのですが、できない部分を突き放してしまうと役が成立しないので、そこは寄り添うというか、“共生する”という事を大切にしました。
--そんな薫の後輩刑事役を演じた川西さんはいかがでしょうか。
川西さん 荒木は若者代表、男性代表のような、視聴者の皆さんに最も近い客観的な視点を持つキャラクターだと捉えています。テーマ的に少し距離を置いてしまう方々にも、荒木の視点を通して届けられたらという意識がありました。
--今回が初めての社会人役となりましたが、何か意識したポイントはありますか。
川西さん 刑事役でもあったので、髪型にはこだわりました。普段は割とズボラなタイプですけど、撮影中に何度も整えに行くなどして、少しでも大人っぽく見えるように頑張りました(笑)。
◇ 初共演で感じた“ギャップ”と“リスペクト”
--今作が初共演となりましたが、会う前と後でお互いの印象は変わりましたか?
桜井さん 共演前はJO1のパフォーマーとしての活躍を拝見していたので、普段もアーティスティックな方なのかなと想像していました。でも実際は全く違って(笑)。暑い日に撮影が始まったのですが、「日傘は大丈夫です!男は焼いてなんぼです!」と日傘もささずにいる姿を見て、とても自然体だなと感じました。JO1の時と役者の時で切り替えはあるのでしょうが、いいギャップのある方だなと思いました。
--川西さんはそのあたりの切り替えは意識されているのでしょうか?
川西さん 特に意識はしていないのですけど、いろんな顔があるなというのは自分の中でも感じています。そうはいっても別に作っているわけでもなくて、自然とそうなっているような感覚ですね。
--では、川西さんは桜井さんの印象はどうでしたか。
川西さん お会いする前はクールなイメージがあったので「怖いのかな」って(笑)。お会いしたら全然違いました。現場では気さくに話してくださいますし、スタッフさんへの気配りもすごくて。それでいて実は照れ屋さんなのかな、と感じる瞬間もありました。
桜井さん それは自分でも気づかない一面かも。
--そう感じた具体的なエピソード何かあったのでしょうか。
川西さん う~ん……もう直感です。
桜井さん そっかあ。じゃあ桜井ユキは照れ屋と書いておいてください(笑)。
--お互いに意外な一面を垣間見たと。
桜井さん そうですね。バディーとして共演シーンが多いので、初日に「楽しく撮影していけそう」と安心できました。
--撮影現場で、お互いの「ここがすごい」と刺激を受けた点があれば教えてください。
桜井さん 芝居に入る時の役との境目がすごくナチュラルというかシームレスで、最初の芝居のラリーの時に感動しました。雑談をしていたかと思うと、そのテンションのままスッと荒木という役に入っていく。私が演じる薫は考え込んだり逡巡したりしてから言語化するのでセリフに間が多いのですが、その間を的確に感じ取ってくれる心地よさがあって。素晴らしいなと思いながら、一緒に芝居をさせていただきました。
川西さん 「これが俳優・桜井ユキか」と圧倒されました。特に印象的だったのが、僕が間違えて桜井さんの動きを先にやってしまったことがあったのですが、普通なら一度止まってしまうような場面なのに、桜井さんは瞬時に演技を変えて状況に対応されて。自分はできないし、何だかとても悔しかったです。本当にすごいなと思いました。
◇人生の決断 相談と直感
--今作の登場人物の多くが、それぞれ決断を迫られている描写が印象的です。お二人は人生で何かを決断する時、誰かに相談しますか? それとも一人で決めますか?
桜井さん 相談します。相談する相手は決まっていて、友人ですね。いろいろな人に話すと余計に迷ってしまうので。相談する時も、そこで結論を出すというよりは、あくまでフラットに「どう思う?」と意見を聞いて、それを持ち帰って参考にしながら最終的に決めるというプロセスです。
川西さん 全くしないです。僕は何かを決める際は「自分しか信じてない」というスタンスなので。特に音楽制作のように正解がない物事に対しては、自分の直感を信じるようにしています。
--今までしてきた決断の中で印象深いものをあげるとしたら……?
桜井さん 今の仕事を続けるかどうかの分岐があったのですが、そのたびに悩んできました。ただ全く後悔はしていません。あの時の決断はこれで良かったのだなって思います。
川西さん 僕はやっぱりJO1のオーディションを受けるときかな。それまでは会社員として働いていたので、辞めてオーディションを受ける時の決断は人生で大きな決断の一つですね。
--最後に本作の見どころと、視聴者へのメッセージをお願いします。
桜井さん DVというテーマに少し構えてしまうかもしれませんが、その先にある人間模様というか。人との関わりやつながりを描いています。誰かに助けを求めることの大切さ、そして自分の人生を自分で決断することの重みなど、見てくださる方が多くの“気づき”を得られる作品になっていると思います。ぜひ、その物語の深さを感じていただきたいです。
川西さん 僕が演じる荒木は緊張感が続く中での少し“緩和”できる存在であり、視聴者の皆さんに一番近い目線を持つキャラクターです。物語には、人生の勉強になるようなことがたくさん詰まっていて、今の時代に見るべき作品だと思います。本当に絶対見た方がいいです!
「連続ドラマW シャドウワーク」は全5話で、WOWOWプライム・WOWOWオンデマンドで毎週日曜午後10時に放送・配信。第1話はWOWOWの公式YouTubeチャンネルで無料配信中。(取材・文・撮影:遠藤政樹)