この「大映ドラマの系譜 解説」ページは「大映ドラマの系譜」の解説記事を掲載しています。
「スチュワーデス物語」「ヤヌスの鏡」など日本のテレビドラマ史において、ひときわ異彩を放ち、視聴者を熱狂させた「大映ドラマ」。大胆なストーリー展開に、キャスト陣のエモーショナルな演技は、今なお色あせない魅力を放っている。ここでは毎回1作品にスポットを当て、その作品の特徴や当時の社会背景なども探りつつ魅力をひもといていく。今回は1984~1985年に放送された山下真司さん主演の「スクール☆ウォーズ~泣き虫先生の7年戦争~」(TBS)について取り上げる。
「スクール☆ウォーズ」は、1984~1985年に放送され、山下さん演じる元日本代表のラグビー部監督、滝沢賢治が、数多くのトラブルに巻き込まれながらも熱血指導で弱小ラグビー部を導き、日本一を勝ち取るまでの軌跡を描いた学園ドラマ。京都市立伏見工業高校ラグビー部とその監督で元ラグビー日本代表の山口良治さんの実話をつづった馬場信浩さんのノンフィクション「落ちこぼれ軍団の奇跡」を基に、フィクションとして制作された。
ちなみに1990年には同じく山下さんの主演で続編が作られたほか、2004年には、山口さんの著書「生きる力を伝えたい 泣き虫先生の熱血教育論」を原作に、照英さんの主演で映画版「スクール・ウォーズ HERO」が公開されている。
◇カルチャーの流れを作った1984年
「スクール☆ウォーズ」の放送がスタートした1984年は、いわゆる“商業五輪”の流れを作ったロサンゼルス五輪が行われたほか、衛星放送のスタート、アップルが初代マッキントッシュを発売するなど、現在まで続くさまざまなカルチャーの流れのきっかけとなった年だった。
そんな1984年に放送された同作。努力と根性と涙という“スポ根”ものならではのエッセンスと、ドラマチックな展開が持ち味の大映ドラマの組み合わせは絶妙で、まさに大映ドラマの集大成といえる名作となった。学園ドラマという側面から、子供をはじめとした、より幅広い視聴者層の取り込みに成功した作品だったともいえるだろう。麻倉未稀さんが歌う主題歌「ヒーロー」もまた歴史に残る名曲となった。ラグビー系の映像の定番BGMとして今もたびたび使われており、麻倉さんの代表曲にもなっている。
◇学園ドラマならではの魅力
学園ドラマならではのポイントとして、数多くの若手俳優たちの奮闘ぶりが挙げられるが、本作でも誰もが知る大御所たちがみずみずしい演技を披露している。元不良のラグビー部キャプテン・大木大助役の松村雄基さん、賢治を挑発する不良の水原亮役の小沢仁志さん、森田光男(宮田恭男さん)のガールフレンドの富田圭子役の伊藤かずえさん、初代マネジャー、山崎加代役の岩崎良美さんなど、今も息長く活躍している俳優たちが多数出演していた。
一方、脇を固める個性的な登場人物は80年代のテレビドラマおなじみのキャスト陣が務めた。下川辰平さん、名古屋章さん、坂上二郎さん、梅宮辰夫さんと、今は亡き名優たちがさまざまなポジションで盛り上げた。なお、和田アキ子さんも梅宮さんと夫婦役で共演しており、1990年の続編でも役どころは異なるものの夫婦役で出演している。また、賢治の妻・節子を演じた岡田奈々さんのキュートな仕草に心を奪われた人も多かったのでは。
◇昭和ならではの“名シーン”
本作を語る上でやはり外せないのは、高野浩和さんが演じた“イソップ”こと奥寺浩の存在だろう。痩せた体格のため、イソップ寓話の「アリとキリギリス」から“イソップ”とあだ名されたが、優しい性格とラグビー愛あふれる前向きな姿勢で視聴者の支持を集めた。しかし脳腫瘍に冒されており、物語の中盤で短い人生を終える……。イソップはライジング・サンのマークと新しいユニホームのデザインを考案するが、形見ともいえるユニホームは終盤にクリーニング店の火事で焼けてしまい、全国優勝は昔のユニホームで…というその後の展開も切なさを残した。
相模一高に大敗した後、喝を入れられた光男が涙ながらに「悔しいです!」と叫ぶと賢治が「俺は今からお前たちを殴る!」と部員たちをぶん殴っていく作品屈指の名シーン。ザブングル加藤さんのモノマネでも知られ、「今だったら絶対できない」と折に触れて出演者が語っている。余談だが、当時小学生だった記者も確かに感動はしたものの、あまりの理不尽さに「運動部はやめとこ…」と思ったものだった。【ドラマ取材班・T】