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新潟市内で開催中の映画祭「第2回新潟国際アニメーション映画祭」で3月16日、人気アニメ「ガンダム」シリーズの劇場版「機動戦士ガンダム 逆襲のシャア」(富野由悠季総監督)が上映された。富野監督、メカニックデザイナーの出渕裕さんがトークショーに登場し、1988年に公開された同作を振り返った。
出渕さんは「逆襲のシャア」について「シャアを再発見、再構築した作品だった。クワトロ・バジーナって人は、富野さんにとって失敗作なんですよ。アムロたちと一緒にしていた方が、話が膨らむかもしれないと、クワトロをいい人にしちゃった。反発する方もいるかもしれないけど、あいつ、サイコパスなんです。独善的で、共感力がなくて、ウソばかりついている。最後のアムロと対峙(たいじ)しているのもウソを言っているかもしれない」と分析。
富野監督は「その指摘は正しいですね。ラストシーンのシャアとアムロのせりふを作っている時、なんか気持ち悪いな、本当はこう作りたくないんだけれど……と時間切れだからしょうがなく作った」とうなずいた。
出渕さんは「ニュータイプは、ファーストガンダムでキレイにまとまっていて、余韻がある。余韻を説明しなかった。富野さんは『逆シャア』で生っぽい人間をやりたくて、サイコフレームにしても、最後のオカルト展開で理屈を付けているけど、方便で見せているだけ」と持論を展開すると、富野監督は「まさに方便です。そうしないと劇がつながらないというプレッシャーがあったと自覚しています。サイコフレームのカットを描いた時も困った。本当はこういう出し方をしたくないんだよね、という気持ちがあった」と明かした。
出渕さんは「ニュータイプもサイコフレームもどうでもいいんですよ。描きたかった生の人間。特に女性の生っぽさが素晴らしい」と指摘し、富野監督は「当然です。映画の演出家として一番考えたのは、アニメで少しはまともな女性を出すこと。これは本当に意識しました。ハイトーンで可愛い声だったら、女性だと思っているお前らの趣味が悪すぎるんじゃないか!と言っている」と話した。
出渕さんは、シャアとナナイがナイトガウンを着て会話をするシーンを絶賛すると、富野監督は「演出家の作為がありますね。それが見えすぎていると、映画としてまとまっていないかもしれない。そういう意味で、あのシーンはあんまり好きではないですね。ちょっとやりすぎていて、嫌悪感がある。もう少し上手にやる必要がある」と振り返った。
出渕さんが「コンテ、編集がいいんですよ。キャラクターがしゃべっている途中で、次にせりふがあるだろうな……というところで、頭を残して切る。あれで、不思議なリズムが出る」と話すと、富野監督は「(富野監督の)編集が下手と言っている、庵野(秀明)というヤツがいた! でも、本当にびっくりしたのは、見直して、頭の3、4分の編集がうまいな!とびっくりした。長編映画を作っていく面白さというのは、リズム感で物語を語れるという部分があります。そういう意味では、それなりに頑張ってるんじゃないのかな、という気がするので、そこは見てください」と笑顔で語った。
出渕さんの分析、解説を受けて、富野監督は「全て正しいです。否定することがない。コンテを切っている時の違和感を全部思い出させてくれた。そういう意味では、正直びっくりしてます」と喜んでいた。
同映画祭は、長編アニメのコンペティション部門を設けたアジア最大級の祭典を目指し、新潟から世界にアニメという文化を発信していくのが狙い。第1回が2023年3月17日~22日に新潟市内で開催された。第2回は、3月20日まで開催される。